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第一章 舞い降りた天使
妹(冬弥)
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両親が旅行に出かけて2日目の朝。
チャイムの音で目が覚め、玄関に降りてドアを開けるも目の前に人は居らず、当たりを見回したところ、足元にこの小さな赤ちゃんが包まれてカゴに入れられ置き去りにされていたのだ。
暫くこんな事は無かったのだが、うちはこの辺では結構有名なお寺だからか、ごくたまにこういう事が起こる…
うちの両親は昔から子供が好きで、寺の跡取りだった父は自宅を改装し最近まで保育所も経営していた。
なのに全く子宝に恵まれなかったらしく、見捨てられた子供を進んで引き取り育ててきたのだ。
そんな保育所も両親の年齢を理由につい先日閉園した為、二人は久しぶりの旅行へと出かけて行ったのだ。
昔は賑やかだったこのお寺も、今は俺ら兄妹だけだし昼間は誰もいないため静まり返っている。
雪がチラつくくらい寒い外から赤ちゃんを抱き上げ家に入ろうとした時、1枚の紙切れがひらりと落ちた。
それを拾い上げ、中を確認するとそこには【よろしくお願いします】ただそう一言だけ書かれていたのだ。
「よろしくお願いしますねぇ…お前も捨てられたのか…」
スヤスヤと寝ていた赤ちゃんは外気に触れたせいか、パチッと目を開けみるみるうちに大きな声で鳴き始めた。
「おぉよしよし…悲しいよなぁ…」
紙切れをズボンのポケットに突っ込んであやしながら家の中に入り、取り敢えず布団に寝かせこれからどうするか考える…
頼みの両親はいないし弟の空は学校。
抱っこした感じ首は座ってるけど、まだ生まれて半年経たないくらいか…
とは言えさすがに自分一人ではどうする事も出来ず、一先ず両親に連絡して指示を仰いだ。
ついこの前まで保育所だった自宅の一室に入ると、哺乳瓶やらオムツやら肌着やらががまだ綺麗に保管されていて、言われた通り必要なものを準備して2階に上がり、物置からベビーベットを出して自室で組みたてた。
時刻はそろそろ昼時…
やっとの事赤ちゃんを迎え入れる準備は整ったところで、お腹が空いたのか泣き出したから今度はミルクを作りに1階に降りようとした時、奥の部屋の扉が開いて妹の桜が顔を出した。
「…なにやってんの?」
「んぁ?ミルク作りに行く」
「は?…なんで赤ちゃんの声するの?兄ちゃんっ…まさか…」
「えっ!?違うからっ!俺の子じゃないからっ!」
「じゃなに?誰の子?」
「あぁ…これ…」
例の紙をポケットから出して差し出すと、桜はそれをじぃっと眺め俺に突き返してきた。
「置き去り…?」
「…ん、まぁ…そんなとこ」
「ふぅん。男の子?女の子?」
「あ…えっと…多分女?」
「見たい…」
「お、おう」
こいつは五年前ここに連れてこられた女の子で名前は桜。
色白で細くて俺からしたら可愛い妹なわけだけど、もちろん血の繋がりはない。
連れてこられてから半年後に母親は蒸発…
父親は元から知らないとのこと。
桜は、いつか迎えに来てくれると思っていた母親に裏切られたのだ。
来年は受験なのに色んなストレスから学校にも行けず、こうして自室に引き篭ってる。
出来ることならどうにかしてやらないといけないんだろうけど、ゲーム以外のことに興味がなく、友達ももちろんいない。
そんな桜が赤ちゃんに興味を示すとは思ってもいなかったが、保育所の手伝いは良くしていたから、ここはちょっと桜に任せてみるか…
「ほぉらお姉ちゃんだよ~」
「…可愛い」
「うん、可愛いよな」
「こんな可愛いのに…いらないって言われたんだね…」
「色んな事情があったんだろ…」
「何それ…ムカつく…っ」
「そうだよなぁ…そんな事この子には関係なんもんな。あ、俺ミルク作ってくるからちょっと見ててくれる?」
「うん」
自分と重ねてるのか複雑な顔してたから、もしかしたら桜にはちょっと荷が重いかな。
そう思いながら急いで煮沸を済ませた哺乳瓶に、真新しい粉ミルクの袋を開けてお湯を注ぎ、人肌程度に冷まして2階に戻った。
そしてそっとドアを開けて様子を伺うと、手際よくオムツを取替える桜の姿にちょっと安心した。
「桜、オムツ替えてくれたの?」
「うん…ミルクもあげていい?」
「おう。俺、夜仕事だから空帰ってきたら後二人で 頼むな」
「…それは無理」
「うーん…そっか。じゃあしょうがない、春人呼ぶか」
「うん」
「あ、ところでどっちだった?」
「正解、女の子」
「おっ、そうかぁ。よろしくな!ベビちゃん♡」
そんな訳で俺は仕事に行く為、春人を呼び出したのだが、もちろんあいつ一人じゃ心配なので、もう一人助っ人を呼び出しておいたのだ。
チャイムの音で目が覚め、玄関に降りてドアを開けるも目の前に人は居らず、当たりを見回したところ、足元にこの小さな赤ちゃんが包まれてカゴに入れられ置き去りにされていたのだ。
暫くこんな事は無かったのだが、うちはこの辺では結構有名なお寺だからか、ごくたまにこういう事が起こる…
うちの両親は昔から子供が好きで、寺の跡取りだった父は自宅を改装し最近まで保育所も経営していた。
なのに全く子宝に恵まれなかったらしく、見捨てられた子供を進んで引き取り育ててきたのだ。
そんな保育所も両親の年齢を理由につい先日閉園した為、二人は久しぶりの旅行へと出かけて行ったのだ。
昔は賑やかだったこのお寺も、今は俺ら兄妹だけだし昼間は誰もいないため静まり返っている。
雪がチラつくくらい寒い外から赤ちゃんを抱き上げ家に入ろうとした時、1枚の紙切れがひらりと落ちた。
それを拾い上げ、中を確認するとそこには【よろしくお願いします】ただそう一言だけ書かれていたのだ。
「よろしくお願いしますねぇ…お前も捨てられたのか…」
スヤスヤと寝ていた赤ちゃんは外気に触れたせいか、パチッと目を開けみるみるうちに大きな声で鳴き始めた。
「おぉよしよし…悲しいよなぁ…」
紙切れをズボンのポケットに突っ込んであやしながら家の中に入り、取り敢えず布団に寝かせこれからどうするか考える…
頼みの両親はいないし弟の空は学校。
抱っこした感じ首は座ってるけど、まだ生まれて半年経たないくらいか…
とは言えさすがに自分一人ではどうする事も出来ず、一先ず両親に連絡して指示を仰いだ。
ついこの前まで保育所だった自宅の一室に入ると、哺乳瓶やらオムツやら肌着やらががまだ綺麗に保管されていて、言われた通り必要なものを準備して2階に上がり、物置からベビーベットを出して自室で組みたてた。
時刻はそろそろ昼時…
やっとの事赤ちゃんを迎え入れる準備は整ったところで、お腹が空いたのか泣き出したから今度はミルクを作りに1階に降りようとした時、奥の部屋の扉が開いて妹の桜が顔を出した。
「…なにやってんの?」
「んぁ?ミルク作りに行く」
「は?…なんで赤ちゃんの声するの?兄ちゃんっ…まさか…」
「えっ!?違うからっ!俺の子じゃないからっ!」
「じゃなに?誰の子?」
「あぁ…これ…」
例の紙をポケットから出して差し出すと、桜はそれをじぃっと眺め俺に突き返してきた。
「置き去り…?」
「…ん、まぁ…そんなとこ」
「ふぅん。男の子?女の子?」
「あ…えっと…多分女?」
「見たい…」
「お、おう」
こいつは五年前ここに連れてこられた女の子で名前は桜。
色白で細くて俺からしたら可愛い妹なわけだけど、もちろん血の繋がりはない。
連れてこられてから半年後に母親は蒸発…
父親は元から知らないとのこと。
桜は、いつか迎えに来てくれると思っていた母親に裏切られたのだ。
来年は受験なのに色んなストレスから学校にも行けず、こうして自室に引き篭ってる。
出来ることならどうにかしてやらないといけないんだろうけど、ゲーム以外のことに興味がなく、友達ももちろんいない。
そんな桜が赤ちゃんに興味を示すとは思ってもいなかったが、保育所の手伝いは良くしていたから、ここはちょっと桜に任せてみるか…
「ほぉらお姉ちゃんだよ~」
「…可愛い」
「うん、可愛いよな」
「こんな可愛いのに…いらないって言われたんだね…」
「色んな事情があったんだろ…」
「何それ…ムカつく…っ」
「そうだよなぁ…そんな事この子には関係なんもんな。あ、俺ミルク作ってくるからちょっと見ててくれる?」
「うん」
自分と重ねてるのか複雑な顔してたから、もしかしたら桜にはちょっと荷が重いかな。
そう思いながら急いで煮沸を済ませた哺乳瓶に、真新しい粉ミルクの袋を開けてお湯を注ぎ、人肌程度に冷まして2階に戻った。
そしてそっとドアを開けて様子を伺うと、手際よくオムツを取替える桜の姿にちょっと安心した。
「桜、オムツ替えてくれたの?」
「うん…ミルクもあげていい?」
「おう。俺、夜仕事だから空帰ってきたら後二人で 頼むな」
「…それは無理」
「うーん…そっか。じゃあしょうがない、春人呼ぶか」
「うん」
「あ、ところでどっちだった?」
「正解、女の子」
「おっ、そうかぁ。よろしくな!ベビちゃん♡」
そんな訳で俺は仕事に行く為、春人を呼び出したのだが、もちろんあいつ一人じゃ心配なので、もう一人助っ人を呼び出しておいたのだ。
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