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第一章 舞い降りた天使
小さき者
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お寺の入口にはいつもの如く黒猫がちょこんと座り出迎えてくれているが、どうやらコイツは俺にあまり興味がないらしい。
足元にすり寄ってくるでもなくツンとそっぽを向き、俺が通り過ぎて行くのをただ見送っている。
やっとお寺の奥の住居に着くと、チャイムを押すでもなくガラガラっと引き戸を開けて自宅かのように普通に靴を脱いで上がっていく。
そしていつものようにあいつの名前を呼んだ。
「冬弥ぁ!来たんだけどぉ!」
家の奥に届くようにわざとデカい声で叫ぶと、2階から冬弥がそろりそろりと降りてきて喋り出そうとした俺の口を慌てて塞いだのだ。
「ねぇ、用事って…っ、…んっ!?」
「しぃーっ!!声デカいっ…」
「…っんだよっ」
「今やっと落ち着いたの…っ」
俺らしか居ないであろう静まり返る家の中で、内緒話をするようなボリュームで話す冬弥に疑問を抱きながらも、とりあえず上がれと言われ靴を脱ぎ冬弥の後に続き2階に上がると、冬弥は扉の前で一呼吸置いた。
そして改めて人差し指を口元に当てられ静寂を促がされると、状況は全く理解できないが一先ず条件を飲み込み中に入った。
するとそこには見慣れない小さなベットと、その中には…
なんと小さな赤ん坊が眠っていたのだ。
「えっ…?これ…っ」
「だからしぃだって…っ」
「いや…だってどうしたんだよっ…あっ!お前もしかして…」
「ばぁか…ちげぇよ。いくら俺でもそんな覚えはねぇよ…アレだ、年に何度かあるアレ…」
「あ、アレか…え!?てか、おじさんとおばさんは?」
「それが今旅行行ってていねぇんだわ…」
「いつ帰ってくんだよ…」
「1ヶ月後…くらい?」
「一ヶ月ぅっ!?」
「声デカイって…っ」
思わずまたデカい声を出してしまい、慌てて自分の口を自分で塞ぐ。
旅行って普通3泊4日とか長くても一週間程度では?
なんでそんな、1ヶ月も…
「ご、ごめん…それまでどうすんの…?コレ…」
「だからぁ…とりあえず頼むわ!俺これから仕事なんだよぉ」
「えっ!?俺がぁ!?無理に決まってんだろっ!?」
「あっ、も…ばか春人ぉ…っ」
再び、しまったっ…と口を抑えた時にはもう既に遅かった。
大きなお目目がまん丸く開き俺と目が合うと、見る見る内に顔を歪ませソレは爆発した。
「ふっ…ふぇっ、ん…ぎゃあぁー!」
「うわっ、ごめんっ!あぁあ…っ、どしよっ…冬弥ぁぁ」
「もぉ…さっきやっと寝かしつけたのにぃ。ほら、おいでぇ」
冬弥は慣れた手つきでソレを持ち上げ抱き抱えると、ゆらゆらとあやし始めた。
寺の後継とは思えないほど派手な風貌の男の腕の中で、小さな小さな赤ちゃんが泣いてるこの状況に戸惑いながらも、俺はまた一つ冬弥に敵わないものを見つけてしまった。
ただ好きな事してチャラチャラしてるだけの癖に、何でもそつなく器用にこなすコイツがずっと羨ましくて仕方なかったんだ。
「春人…?抱っこしてみる?」
「ぅえっ!?むりむりむりっ…怖い怖いっ」
「大丈夫。もう首座ってるから…は~い春人くんですよ~」
「あっ…ちょっ…」
覚悟も決まらないままに俺の腕の中に収められたその小さな赤ちゃんは、暖かくてふわふわでいい匂いがした…
この時…俺はなんとも言えない幸福感を味わってしまったのだ。
足元にすり寄ってくるでもなくツンとそっぽを向き、俺が通り過ぎて行くのをただ見送っている。
やっとお寺の奥の住居に着くと、チャイムを押すでもなくガラガラっと引き戸を開けて自宅かのように普通に靴を脱いで上がっていく。
そしていつものようにあいつの名前を呼んだ。
「冬弥ぁ!来たんだけどぉ!」
家の奥に届くようにわざとデカい声で叫ぶと、2階から冬弥がそろりそろりと降りてきて喋り出そうとした俺の口を慌てて塞いだのだ。
「ねぇ、用事って…っ、…んっ!?」
「しぃーっ!!声デカいっ…」
「…っんだよっ」
「今やっと落ち着いたの…っ」
俺らしか居ないであろう静まり返る家の中で、内緒話をするようなボリュームで話す冬弥に疑問を抱きながらも、とりあえず上がれと言われ靴を脱ぎ冬弥の後に続き2階に上がると、冬弥は扉の前で一呼吸置いた。
そして改めて人差し指を口元に当てられ静寂を促がされると、状況は全く理解できないが一先ず条件を飲み込み中に入った。
するとそこには見慣れない小さなベットと、その中には…
なんと小さな赤ん坊が眠っていたのだ。
「えっ…?これ…っ」
「だからしぃだって…っ」
「いや…だってどうしたんだよっ…あっ!お前もしかして…」
「ばぁか…ちげぇよ。いくら俺でもそんな覚えはねぇよ…アレだ、年に何度かあるアレ…」
「あ、アレか…え!?てか、おじさんとおばさんは?」
「それが今旅行行ってていねぇんだわ…」
「いつ帰ってくんだよ…」
「1ヶ月後…くらい?」
「一ヶ月ぅっ!?」
「声デカイって…っ」
思わずまたデカい声を出してしまい、慌てて自分の口を自分で塞ぐ。
旅行って普通3泊4日とか長くても一週間程度では?
なんでそんな、1ヶ月も…
「ご、ごめん…それまでどうすんの…?コレ…」
「だからぁ…とりあえず頼むわ!俺これから仕事なんだよぉ」
「えっ!?俺がぁ!?無理に決まってんだろっ!?」
「あっ、も…ばか春人ぉ…っ」
再び、しまったっ…と口を抑えた時にはもう既に遅かった。
大きなお目目がまん丸く開き俺と目が合うと、見る見る内に顔を歪ませソレは爆発した。
「ふっ…ふぇっ、ん…ぎゃあぁー!」
「うわっ、ごめんっ!あぁあ…っ、どしよっ…冬弥ぁぁ」
「もぉ…さっきやっと寝かしつけたのにぃ。ほら、おいでぇ」
冬弥は慣れた手つきでソレを持ち上げ抱き抱えると、ゆらゆらとあやし始めた。
寺の後継とは思えないほど派手な風貌の男の腕の中で、小さな小さな赤ちゃんが泣いてるこの状況に戸惑いながらも、俺はまた一つ冬弥に敵わないものを見つけてしまった。
ただ好きな事してチャラチャラしてるだけの癖に、何でもそつなく器用にこなすコイツがずっと羨ましくて仕方なかったんだ。
「春人…?抱っこしてみる?」
「ぅえっ!?むりむりむりっ…怖い怖いっ」
「大丈夫。もう首座ってるから…は~い春人くんですよ~」
「あっ…ちょっ…」
覚悟も決まらないままに俺の腕の中に収められたその小さな赤ちゃんは、暖かくてふわふわでいい匂いがした…
この時…俺はなんとも言えない幸福感を味わってしまったのだ。
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