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第三章
光の中へ(最終話)
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次の日になっても、その次の日になっても…
三日経っても一週間経っても、咲也は目を覚まさない。
俺の体の傷はだんだん良くなっていって、足も徐々に動かせるようになってきているのに、咲也は全く動いてはくれない。
そんな状況に俺はもう、ちょっとおかしくなっていたのかもしれない。
ご飯なんか全く喉も通らなくなって毎日点滴を受け、それでも毎日毎日咲也が眠る場所に行っては、咲也に話しかけて近況報告をしたり思い出話をしたりしたけど、何を話しても手を握っても肌に触れても咲也は俺に何もしてくれない。
ねぇ、咲也…
これも俺への罰なのかな…
お前には幸せなんて与えられないんだっていう、神様からの試練なの?
だとしたらもう充分だよ…
もう解放して、咲也を俺の元に返してよっ…
それが無理なら…俺を咲也と同じところまで連れてって―――
・・・・・
もうこんな状況が2週間も続くと、看護師さんもいちいち呼びに来たりしなくなって、長い時間咲也のそばにいて咲也の手を握りながら涙に暮れて眠ってしまった俺は、たぶん夢を見たんだ…
「しゅう…柊…起きて」
「…さく…や…咲也なのっ!?」
「柊、待たせてごめんな…」
「よかった…っ、咲也っ…良かった…っ」
「いっぱい泣かせちゃったな…」
そう言って俺を抱きしめてくれた咲也の温もりは確かにあって、これは夢じゃないんだって思えた。
咲也が…咲也が戻ってきてくれたんだ―――
「また一緒にいれるんだよね?」
「…そうだな、随分長い間一人で頑張ったもんな。俺ももうこれ以上お前を一人にはしたくないからさ…」
「咲…也…?」
「大丈夫…ずっと一緒だから…」
「うんっ…」
咲也は俺に笑いかけてそのまま唇を重ねた…
久しぶりの咲也の感触と匂いに身体が反応して、我慢できなくなる。
息が荒くなり、そしてもう一度キスをすると苦しさはスーッと消えていった。
そして急に辺りは騒がしくなり、俺らの周りには先生や看護師さんが沢山来た。
「長谷川さん、長谷川さん!?大丈夫ですか!?」
「俺は大丈夫…咲也が、咲也が目を覚ましたから…っ」
「三上さんっ、三上さん!!先生…っ!」
「…一緒の部屋に移してあげて」
良かった…本当に良かった…
また咲也と一緒にいられるんだ。
「咲也…もう離れたくない…っ」
「俺もだよ…柊…」
先生達の声が段々と遠くなり、俺はやっとあることに気がついた。
そっか…
もう暗闇に飲まれることも、苦しい思いもしなくて済むんだね。
俺らは光を纏いながら抱き合い、いつまでもいつまでも求めあった…
これからは何があっても絶対に離れる事は無いんだね…
「好きだよ…柊…」
「俺も好き…大好き…」
迎えに来てくれて…ありがとう…
やっと、やっと開放されたんだ…
俺はミントバニラの香りに包まれて、咲也と共にみんながいる場所へと旅立った―――
end
三日経っても一週間経っても、咲也は目を覚まさない。
俺の体の傷はだんだん良くなっていって、足も徐々に動かせるようになってきているのに、咲也は全く動いてはくれない。
そんな状況に俺はもう、ちょっとおかしくなっていたのかもしれない。
ご飯なんか全く喉も通らなくなって毎日点滴を受け、それでも毎日毎日咲也が眠る場所に行っては、咲也に話しかけて近況報告をしたり思い出話をしたりしたけど、何を話しても手を握っても肌に触れても咲也は俺に何もしてくれない。
ねぇ、咲也…
これも俺への罰なのかな…
お前には幸せなんて与えられないんだっていう、神様からの試練なの?
だとしたらもう充分だよ…
もう解放して、咲也を俺の元に返してよっ…
それが無理なら…俺を咲也と同じところまで連れてって―――
・・・・・
もうこんな状況が2週間も続くと、看護師さんもいちいち呼びに来たりしなくなって、長い時間咲也のそばにいて咲也の手を握りながら涙に暮れて眠ってしまった俺は、たぶん夢を見たんだ…
「しゅう…柊…起きて」
「…さく…や…咲也なのっ!?」
「柊、待たせてごめんな…」
「よかった…っ、咲也っ…良かった…っ」
「いっぱい泣かせちゃったな…」
そう言って俺を抱きしめてくれた咲也の温もりは確かにあって、これは夢じゃないんだって思えた。
咲也が…咲也が戻ってきてくれたんだ―――
「また一緒にいれるんだよね?」
「…そうだな、随分長い間一人で頑張ったもんな。俺ももうこれ以上お前を一人にはしたくないからさ…」
「咲…也…?」
「大丈夫…ずっと一緒だから…」
「うんっ…」
咲也は俺に笑いかけてそのまま唇を重ねた…
久しぶりの咲也の感触と匂いに身体が反応して、我慢できなくなる。
息が荒くなり、そしてもう一度キスをすると苦しさはスーッと消えていった。
そして急に辺りは騒がしくなり、俺らの周りには先生や看護師さんが沢山来た。
「長谷川さん、長谷川さん!?大丈夫ですか!?」
「俺は大丈夫…咲也が、咲也が目を覚ましたから…っ」
「三上さんっ、三上さん!!先生…っ!」
「…一緒の部屋に移してあげて」
良かった…本当に良かった…
また咲也と一緒にいられるんだ。
「咲也…もう離れたくない…っ」
「俺もだよ…柊…」
先生達の声が段々と遠くなり、俺はやっとあることに気がついた。
そっか…
もう暗闇に飲まれることも、苦しい思いもしなくて済むんだね。
俺らは光を纏いながら抱き合い、いつまでもいつまでも求めあった…
これからは何があっても絶対に離れる事は無いんだね…
「好きだよ…柊…」
「俺も好き…大好き…」
迎えに来てくれて…ありがとう…
やっと、やっと開放されたんだ…
俺はミントバニラの香りに包まれて、咲也と共にみんながいる場所へと旅立った―――
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