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第三章
誕生日
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びちょびちょになった服を脱いで新しい服に着替えてリビングに戻ると、そこには大きなホールケーキが置いてあり、プレートには平仮名で『しゅうくん』とチョコペンで名前が施されていた。
俺の名前の漢字知らないわけじゃないだろうに、なんであえて平仮名なのかは分からないが、その懐かしい風景に荒んだ心が和んでいく。
でもそれと同時に、そこに美羽の名前が無いことに俺の中の罪悪感が湧いて出てくる…
双子だった俺らは勿論誕生日も一緒。
だからケーキには、いつも二人分の名前のプレートが添えられていたから…
美羽は10歳で死んだ。
俺はあれから12年も生きた…
そしてその間に兄ちゃんも逝ってしまった。
どんなに咲也が優しくしてくれても、その事実だけは変えられない。
俺だけが生きてる…俺だけが生かされてるこの現状が俺への罰ならば、俺はその生(つみ)を償わなければならないんだろうか…
「柊、また何か考えてるな?」
「…うん、嬉しいなって。こんな大きなケーキ久しぶりに見たし、名前のプレートも…何か恥ずいけど…嬉しい 」
「そっか、良かった」
俺はまた一つ、『嘘』をついた。
嬉しいのは本当だけど考えてたことは全く別のこと…
一本二本とローソクがケーキに刺さっていく。
わざわざ22本も用意した事にもビックリだが、それが全部刺さるくらいデカいケーキにもビックリだ。
そして10本目のローソクが刺さると、10歳の時にした最後の誕生日を思い出したんだ。
「10歳だった…美羽が死んだの」
「12年前…か…」
「うん…それまでずっと一緒だったから…誕生日も…」
「一緒に祝うか?妹の分も」
「いや、めでたくないし…年取らねぇじゃん…」
「まぁ、それもそうだな…」
せっかく俺に気を使ってくれたのに、この誕生日を俺だけのものにしたくて、咲也には俺だけを祝って欲しくてまた俺は俺の為に我儘を言った。
けど俺なんか咲也にとって、本当は迷惑でしかないんじゃないだろうか…
あのままケーキを取りに行かず、いなくなっても良かったのに。
「美羽が生きてたら…俺よりいい人生送ってだろうな…」
「またそうやって俺なんか…って思ってんだろ。もうやめようぜ?ほら、22本!全部刺さった!」
「抜いたら穴だらけになりそう…」
「うぅ、確かに…まぁいいじゃん!火付けるから電気消して!カーテン閉めて!」
言われるままに部屋の電気を消して、光が漏れないようにカーテンを閉めてケーキの前に座ると、一つ一つローソクに火が灯っていく…
ゆらゆらと揺れるローソクの火に見蕩れてぼぉっとしてると、前にいたはずの咲也が俺の横にいて、嬉しそうに俺の横顔を眺めていた。
「ハッピーバースデー歌う?」
「歌わなくていいよ…///」
「んじゃせーので火消して?」
「うん」
「せーのっ」
ふぅーっと息を吐くとさすがに22本一気には消えてくれなくて、何回も息を吐き続けクラクラしながら、やっとの思いで全ての火を消し終えた。
「22歳の誕生日…おめでとう」
「ありがとう…」
「柊…俺、多分お前が思ってるより重いよ…」
「えっ…」
「兄貴を殺したやつは許せないし、唆したやつも許せないと思ってた。けどさ、お前は別だわ。もしお前が兄貴の事唆したんだとしても、殺してたとしても…俺はお前を嫌いにはなれないし恨んだりもできない。殺すなんて以ての外…柊がいなくなるなら俺も死ぬよ」
「咲也…っ」
「なんなら妹ちゃんにも感謝したいくらい…身代わりになってくれてありがとうってさ…」
「…っ、そんなっ」
「酷いって思った?俺さ、それくらいお前の事しか興味無いの。お前だって死にたくなくて自分の為にそうしたんだろ?好きな物手に入れるために兄貴の事唆したんだろ?じゃあ俺もそうする。俺は俺の好きな奴を守るためなら何でもする…それならお互い様だろ?」
美羽に感謝だなんて…そんなの酷いって一瞬でも思った俺に、そんな事思う資格なんてないのは俺が一番わかってる。
だけど美羽の時も、隆ちゃんの時も、全部俺のせいなのにこんなはずじゃなかったって…こんな事になるなんて思わなかったって俺は俺自信がしてきた事が怖くてたまらなかったんだ。
咲也みたいに強くなれない…
やっぱり俺は―――
俺の名前の漢字知らないわけじゃないだろうに、なんであえて平仮名なのかは分からないが、その懐かしい風景に荒んだ心が和んでいく。
でもそれと同時に、そこに美羽の名前が無いことに俺の中の罪悪感が湧いて出てくる…
双子だった俺らは勿論誕生日も一緒。
だからケーキには、いつも二人分の名前のプレートが添えられていたから…
美羽は10歳で死んだ。
俺はあれから12年も生きた…
そしてその間に兄ちゃんも逝ってしまった。
どんなに咲也が優しくしてくれても、その事実だけは変えられない。
俺だけが生きてる…俺だけが生かされてるこの現状が俺への罰ならば、俺はその生(つみ)を償わなければならないんだろうか…
「柊、また何か考えてるな?」
「…うん、嬉しいなって。こんな大きなケーキ久しぶりに見たし、名前のプレートも…何か恥ずいけど…嬉しい 」
「そっか、良かった」
俺はまた一つ、『嘘』をついた。
嬉しいのは本当だけど考えてたことは全く別のこと…
一本二本とローソクがケーキに刺さっていく。
わざわざ22本も用意した事にもビックリだが、それが全部刺さるくらいデカいケーキにもビックリだ。
そして10本目のローソクが刺さると、10歳の時にした最後の誕生日を思い出したんだ。
「10歳だった…美羽が死んだの」
「12年前…か…」
「うん…それまでずっと一緒だったから…誕生日も…」
「一緒に祝うか?妹の分も」
「いや、めでたくないし…年取らねぇじゃん…」
「まぁ、それもそうだな…」
せっかく俺に気を使ってくれたのに、この誕生日を俺だけのものにしたくて、咲也には俺だけを祝って欲しくてまた俺は俺の為に我儘を言った。
けど俺なんか咲也にとって、本当は迷惑でしかないんじゃないだろうか…
あのままケーキを取りに行かず、いなくなっても良かったのに。
「美羽が生きてたら…俺よりいい人生送ってだろうな…」
「またそうやって俺なんか…って思ってんだろ。もうやめようぜ?ほら、22本!全部刺さった!」
「抜いたら穴だらけになりそう…」
「うぅ、確かに…まぁいいじゃん!火付けるから電気消して!カーテン閉めて!」
言われるままに部屋の電気を消して、光が漏れないようにカーテンを閉めてケーキの前に座ると、一つ一つローソクに火が灯っていく…
ゆらゆらと揺れるローソクの火に見蕩れてぼぉっとしてると、前にいたはずの咲也が俺の横にいて、嬉しそうに俺の横顔を眺めていた。
「ハッピーバースデー歌う?」
「歌わなくていいよ…///」
「んじゃせーので火消して?」
「うん」
「せーのっ」
ふぅーっと息を吐くとさすがに22本一気には消えてくれなくて、何回も息を吐き続けクラクラしながら、やっとの思いで全ての火を消し終えた。
「22歳の誕生日…おめでとう」
「ありがとう…」
「柊…俺、多分お前が思ってるより重いよ…」
「えっ…」
「兄貴を殺したやつは許せないし、唆したやつも許せないと思ってた。けどさ、お前は別だわ。もしお前が兄貴の事唆したんだとしても、殺してたとしても…俺はお前を嫌いにはなれないし恨んだりもできない。殺すなんて以ての外…柊がいなくなるなら俺も死ぬよ」
「咲也…っ」
「なんなら妹ちゃんにも感謝したいくらい…身代わりになってくれてありがとうってさ…」
「…っ、そんなっ」
「酷いって思った?俺さ、それくらいお前の事しか興味無いの。お前だって死にたくなくて自分の為にそうしたんだろ?好きな物手に入れるために兄貴の事唆したんだろ?じゃあ俺もそうする。俺は俺の好きな奴を守るためなら何でもする…それならお互い様だろ?」
美羽に感謝だなんて…そんなの酷いって一瞬でも思った俺に、そんな事思う資格なんてないのは俺が一番わかってる。
だけど美羽の時も、隆ちゃんの時も、全部俺のせいなのにこんなはずじゃなかったって…こんな事になるなんて思わなかったって俺は俺自信がしてきた事が怖くてたまらなかったんだ。
咲也みたいに強くなれない…
やっぱり俺は―――
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