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第三章
そばにいて
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次の日、疲れてぐっすり眠ってしまったのか起きた時にはもうお昼を回っていた。
そして、覚えてなきゃいけないと思っていたせいか、昨日の記憶をしっかりと残こしたまま目が覚めた。
あわよくば忘れてしまえれば、俺だけは苦しまなくて済んだのに…
ほら、また俺は俺の為に楽になろうとする。
俺は大好きな人でさえ苦しめたまま、自分さえ良ければそれでいいと思うような、そういう奴なんだ。
こんな自分が忌々しくて、早く消えてなくなってしまいたいと当たりを見渡すと、いつもいるはずの咲也の姿が見当たらない。
「咲也…」
家中を探せど咲也はいなくて、急に不安が押し寄せてくる。
自から姿を消すならまだしも、いるだろうと思っていた人が自分の前から姿を消した事に耐えられなくて、俺は必死で咲也を探した。
「咲也!!咲也っ!!どこ!?ねぇ咲也ぁっ!!」
気が狂いそうだった…
一人にしないで欲しかった。
でもこれも全部俺のわがままだ。
咲也があの話を聞いて、俺の事を嫌いになったって恨んだって仕方が無い事なのに、それでも俺は咲也に甘えて咲也にそばにいて欲しくて、本当は死ぬなんて怖くて出来なくて咲也に許して欲しいと願うんだ。
海に出る細い道を抜け、裸足のまま走って砂浜に抜けるとそこは真っ青に晴れ渡った綺麗な海が広がってて、この広い浜辺に俺は一人きり…
思い出したように家の方に振り返り咲也の車を確認すると、いつも止まっているはずの車がそこにはなかった。
置いていかれた…
いや、きっと捨てられたんだ。
当たり前だろ…
俺が隆ちゃんを殺したんだから。
口では忘れていいなんて言ってたけど、やっぱり許せなかったんだろ?
だったら抱きしめないで、殺してくれれば良かったのにっ…
波打ち際にペタリと座り込み、波に打たれながら声を押し殺し泣いた。
ひとりじゃ生きていけない、死ぬ事も出来ない。
きっとこれが俺に対する最大の罰だ…
波の音にかき消され車の音にも気が付かなかった俺は、急に聞こえてきた声に慌てて振り返ると、そこにはいつもと何も変わらない咲也が立っていた。
「柊…っ、何やってんだよ…またこんなとこで…」
「だっ…さくや…っ」
「なんで泣いてんだよ…もう忘れろって言ったろ?」
「忘れられる…っ、わけっ…ない…っ」
「だからってまた死ぬとか…ダメだからなっ、俺と生きるって約束したろ?」
「でも…っ、咲也いなかった…っ、捨てられたと思った…っ」
「んなわけないだろ?あんまりにも気持ちよさそうに寝てたからさ?起きないうちに買ってきちゃおうと思ったんだけど、遅くなってごめんな」
「…なに?」
「だいたい分かるだろ…今日なんの日?」
「今日……あ…っ」
そっか…今日、俺の誕生日。
じゃあ咲也は…
「お誕生日おめでとう、柊。車ん中にケーキあるから、早く家戻ろうぜ」
俺の為に?どこまでケーキ買いに行ったの!?
いや、そんなことより何より咲也が帰ってきてくれてよかった…
まだ俺のわがままが許されるなら、ずっと咲也のそばにいたい…
そう思って咲也にしがみついた。
「咲也…っ」
「わっ、お前びちょびちょじゃん…っ」
「謝っても許して貰えないことだって分かってる…っ、だけど俺…っ、咲也が好き…っ、だから離れないで…離れるくらいなら殺して…っ」
「言ったろ?お前は俺と生きるんだって。一生離してやらねぇから…死にたくなっても死なせない。どんなに辛くても…」
「…っ、それが…俺の罰…?」
「そう…お前は生きるの。でも俺がいれば…大丈夫だろ?」
「いなかったら無理だよ…」
「だからいるって言ってんだろ?」
咲也の本心は俺には分からない…
咲也だって俺に『嘘』をついているかもしれないし。
でもただ一つ信じられるのは、俺が…俺自身が咲也の事が好きだって事。
それは『嘘』なんかじゃないから…
それだけを信じて、俺は咲也から離れないようにしがみつきながら家に戻った。
そして、覚えてなきゃいけないと思っていたせいか、昨日の記憶をしっかりと残こしたまま目が覚めた。
あわよくば忘れてしまえれば、俺だけは苦しまなくて済んだのに…
ほら、また俺は俺の為に楽になろうとする。
俺は大好きな人でさえ苦しめたまま、自分さえ良ければそれでいいと思うような、そういう奴なんだ。
こんな自分が忌々しくて、早く消えてなくなってしまいたいと当たりを見渡すと、いつもいるはずの咲也の姿が見当たらない。
「咲也…」
家中を探せど咲也はいなくて、急に不安が押し寄せてくる。
自から姿を消すならまだしも、いるだろうと思っていた人が自分の前から姿を消した事に耐えられなくて、俺は必死で咲也を探した。
「咲也!!咲也っ!!どこ!?ねぇ咲也ぁっ!!」
気が狂いそうだった…
一人にしないで欲しかった。
でもこれも全部俺のわがままだ。
咲也があの話を聞いて、俺の事を嫌いになったって恨んだって仕方が無い事なのに、それでも俺は咲也に甘えて咲也にそばにいて欲しくて、本当は死ぬなんて怖くて出来なくて咲也に許して欲しいと願うんだ。
海に出る細い道を抜け、裸足のまま走って砂浜に抜けるとそこは真っ青に晴れ渡った綺麗な海が広がってて、この広い浜辺に俺は一人きり…
思い出したように家の方に振り返り咲也の車を確認すると、いつも止まっているはずの車がそこにはなかった。
置いていかれた…
いや、きっと捨てられたんだ。
当たり前だろ…
俺が隆ちゃんを殺したんだから。
口では忘れていいなんて言ってたけど、やっぱり許せなかったんだろ?
だったら抱きしめないで、殺してくれれば良かったのにっ…
波打ち際にペタリと座り込み、波に打たれながら声を押し殺し泣いた。
ひとりじゃ生きていけない、死ぬ事も出来ない。
きっとこれが俺に対する最大の罰だ…
波の音にかき消され車の音にも気が付かなかった俺は、急に聞こえてきた声に慌てて振り返ると、そこにはいつもと何も変わらない咲也が立っていた。
「柊…っ、何やってんだよ…またこんなとこで…」
「だっ…さくや…っ」
「なんで泣いてんだよ…もう忘れろって言ったろ?」
「忘れられる…っ、わけっ…ない…っ」
「だからってまた死ぬとか…ダメだからなっ、俺と生きるって約束したろ?」
「でも…っ、咲也いなかった…っ、捨てられたと思った…っ」
「んなわけないだろ?あんまりにも気持ちよさそうに寝てたからさ?起きないうちに買ってきちゃおうと思ったんだけど、遅くなってごめんな」
「…なに?」
「だいたい分かるだろ…今日なんの日?」
「今日……あ…っ」
そっか…今日、俺の誕生日。
じゃあ咲也は…
「お誕生日おめでとう、柊。車ん中にケーキあるから、早く家戻ろうぜ」
俺の為に?どこまでケーキ買いに行ったの!?
いや、そんなことより何より咲也が帰ってきてくれてよかった…
まだ俺のわがままが許されるなら、ずっと咲也のそばにいたい…
そう思って咲也にしがみついた。
「咲也…っ」
「わっ、お前びちょびちょじゃん…っ」
「謝っても許して貰えないことだって分かってる…っ、だけど俺…っ、咲也が好き…っ、だから離れないで…離れるくらいなら殺して…っ」
「言ったろ?お前は俺と生きるんだって。一生離してやらねぇから…死にたくなっても死なせない。どんなに辛くても…」
「…っ、それが…俺の罰…?」
「そう…お前は生きるの。でも俺がいれば…大丈夫だろ?」
「いなかったら無理だよ…」
「だからいるって言ってんだろ?」
咲也の本心は俺には分からない…
咲也だって俺に『嘘』をついているかもしれないし。
でもただ一つ信じられるのは、俺が…俺自身が咲也の事が好きだって事。
それは『嘘』なんかじゃないから…
それだけを信じて、俺は咲也から離れないようにしがみつきながら家に戻った。
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