ミントバニラ

むらさきおいも

文字の大きさ
上 下
37 / 53
第三章

しおりを挟む
船を降りてからもご機嫌な柊は、見るもの全てが初めてみたいな感覚で、俺に話しかけてくる。

虫を見つける度に立ち止まるし、大きな鳥にビックリしてしがみついてくるしで、本当にまるで子供のよう。

まぁ、既に成人済みとはいえ、歳の差で言ったら完全に弟みたいなもんだからな。

そんな、可愛い柊をあやしながら役場に着くと、家を買った際に色々と手配をしてくれた方とご対面。

そして役場の方々に暖かく出迎えられると、俺らは晴れてこの島の住人となった。


「荷物は全部家ん中に運んでおいたから」

「はい、ありがとうございます」

「これ、家の鍵と車のキーね?」

「車?」


柊は俺の顔を覗き込み不思議そうな顔をしているが、俺らの家はフェリーの乗り場からはだいぶ離れていて、車じゃないといけない距離。

島で生活するには車は必須だ。


「場所、わかるか?」

「はい、だいたい分かります」

「ナビも着いとるしな?んじゃ、何かあったらまたここにおいで」

「はい、お世話になります」

「お世話に…なります…っ」


柊が俺の後に続いてしっかり挨拶すると、俺らは車に乗りこみ新しい家となる場所を目指した。


「これ…全部咲也が用意してくれたの…?」

「あぁ、うん。この場所の事は誰にも知られたくなかったからな」

「大変だっただろ…?」

「全然?役場のおっさんもいい人だったし」

「…ありがとう、俺なんかの為に」

「俺なんか、じゃねぇだろ?柊だからだよ。それに、俺が柊と一緒にいたかったからそうしただけだし」

「咲也…っ!」

「ぅおっ…!?しがみつくなっ、危ないっ!運転中っ!」

「だってぇ…触りたくなっちゃった…っ」

「ちょっ…だめっ!今はダメっ////」


柊の誘惑を何とか乗り切って家に着いた俺らは、玄関に置きっぱなしの荷物をスルーして部屋の中へと進み、一番手前の部屋に入ると畳に押し倒され息付く暇もなく、柊に唇を奪われた。


「んっ!?んっ、はぁっ、しゅ…っ」

「咲也…っ、我慢…できない…っ」

「んな事言われたら…っ、俺だって我慢できねぇよ…っ」


西日に照らされ、ほんのりピンクに染まる柊の頬に触れると、柊の手が俺の手に重なるように触れた。


「咲也…好き…っ」

「俺も好きだよ…柊」


柊を抱え込み、俺が上になるように体制を変えると、無我夢中で柊の唇に食らいついた。

柊も俺の舌の動きに合わせて、たどたどしくも必死に絡みついてくる。


「んふ…っ、ん…はぁ…っ」

「も、入れていい…っ?」

「んっ、入れて」


そして欲望のままに肌をぶつけ合い、お互いの愛を確かめ合うと、蕩けた柊の顔を目の前に限界を迎え、柊の中で欲を吐き出した。


「はぁ…っ、はぁっ…柊…っ」

「あっ、んぅ…っ、ごめん…っ、我慢できなくて…」

「新居で初めてした事がえっちとか…まぁ、それもいっか!」

「んぅ…///」


ティッシュも何も無くて、後処理もそこそこに大の字に寝転ぶと、そこはとても静かで…

俺らが話さなければ、虫の鳴き声と波の音しか聞こえない。


「静かだな…」

「うん…誰にも邪魔されたくないな…」

「大丈夫、きっと…」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

好きな人に迷惑をかけないために、店で初体験を終えた

和泉奏
BL
これで、きっと全部うまくいくはずなんだ。そうだろ?

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

ヤクザに囚われて

BL
友達の借金のカタに売られてなんやかんやされちゃうお話です

処理中です...