ミントバニラ

むらさきおいも

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第三章

遠くへ…

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島に行く船は一日に一便のみ。
空港に着くと、朝イチの船で出発するために適当なホテルを探す。

男同士だと断られるラブホも多いけど、こういう時に柊の見た目は役に立ちそうだ。

きっと本人は嫌なんだろうけど…

そして、無事に止められることなく部屋に入ると、俺はベットに腰をかけ当たり前のように煙草に火をつけた。

ふわっと漂うバニラの薫りが俺は好きだけど、柊は本当のところどうなんだろう…

ふっとそんな事が頭をよぎると、柊にとってはあまりいい気はしないんじゃないだろうかと、二口目を吸って何となく煙草の火を消した。


「あれ?もう吸わないの?」

「あ、あぁ…ちょっと吸いたかっただけだから…」

「もしかして…俺に気ぃ、使ってる?」

「え?」

「その…煙草…光ちゃんも吸ってたから…」


俺の隣に遠慮がちに少し距離を取って座る柊は、少し頬を赤らめて俯いてしまった。

気にさせてしまったなら余計に申し訳なくて、ずっと気にするのも嫌だし、思い切って答えてみることにした。


「ちょっとだけ、気になったかな。止めた方が良いかなって…」

「止めなくていい。俺、その匂い好きだから…」


好き…か…。

そう言われてしまうと、それはそれで何だか複雑な気持ちになる。

あいつが吸ってたから好きなのか、単に匂いが好きなのか…

嫉妬のような気持ちでいっぱいになり、やっぱり吸うの止めようかな、何て敵対心を剥き出しにしてる自分に呆れるが、やっぱりそこは確かめておきたくて、柊から目を逸らしたまま呟いた。


「アイツと…同じだから…?」

「えっ?」

「だから好き…なの?」

「えっ、違うっ…咲也が吸うそのタバコの匂いが好きなの…っ。光ちゃんを思い出さないか?って言われたら…思い出さないなんてことは無いけど…でも、もうこの匂いは俺にとって咲也の匂い、俺の好きな咲也の匂いだから…」


少し空いてた二人の距離を、柊が少しずつ詰めてきて俺の顔を覗き込んだ。

少しドキッとして身構えると、柊の唇が静かに俺の唇に触れた。


「んっ…」

「好きだよ…咲也…この匂いも全部…」


耳まで真っ赤に染めて照れる柊が堪らなくて、こちらからもキスをすると、もう我慢が出来なくて柊をベットの上に押し倒した。


「明日早いんでしょ…?」

「そうだな…けど…っ」

「これからずっと一緒じゃん…いつでも出来るよ?」

「…そっか、そうだよな。…っ、がっついてごめんっ。先、シャワー行ってくる」


勢いで押し倒したりして、柊を怖がらせたかもしれない。

そう思ってベットから立ち上がろうとすると、柊の手が俺の手を掴んだ。


「それでもシたいって…思ってくれてる…?」

「えっ?」

「そうだったら…嬉しいな…って///」


俺の手を掴む柊の手の力が強まって俯いてた柊と目が合うと、ドキッと心臓が跳ねて思わずまたベットに腰を下ろした。


「しても…良いってこと…?」

「うん…」

「本当に…?無理してない?」

「してない…咲也が欲しい…」

「柊…っ」
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