ミントバニラ

むらさきおいも

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第二章

柊のトラウマ

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咲也がベランダにタバコを吸いに出てから数分後、あの薫を纏わせ部屋の中をうろつくもんだから、俺はその匂いに誘われて蝶のようにふわふわと、冷蔵庫を開ける咲也の背中にしがみついた。


「ん?どうした?柊…」


咲也とシたい…
なんて話せたとしても言葉にできたか分からないし、わざわざ携帯を取りに行って(シたいです)なんて余計恥ずかしすぎて無理だ。

もうだったら強制的に誘ってしまおうと、咲也からペットボトルを奪い取り寝室へ連れ込むと、俺は咲也をベットに誘導し、寝そべるように要求した。

そして肩指さし口パクで(痛くない…?)と問いかけると咲也は大丈夫…と優しく答えてくれた。

それならばと俺は、咲也の負担にならないようにとそっと上から唇を重ねると、そんな気分になるようにと必至に舌を絡めた。

咲也の服から薫る匂いに充てられながら甘い息を漏らすと、咲也も少し興奮してきたのか俺のモノに手を伸ばしてきた。


「シたかったの?」


直接発せられた咲也の言葉に、顔に熱が溜まっていくのが自分でもわかる。

俺は頷きながら自分で自分の後ろを解し準備を始めると、声が出ない分甘い吐息だけが漏れてなんだかいつもより苦しい。


「柊…?大丈夫?」


俺は大きく頷くとある程度解れた自身の後ろに、咲也の固くなったモノを飲み込ませると、やった事なんかないけど少しづつ動いてみた。

いつも光ちゃんには一方的に突っ込まれて犯されてばかりだったから、自分から何かする事なんかなくて、只々耐えてただけだったから…

怪我してる咲也に対して、俺のせめてもの気遣いだったんだけど、なんだか全然上手くいかない。

それに気がついた咲也は、片手で俺を引き寄せ密着させると、下から突き上げるように腰を動かし始めた。


「柊…っ、怪我…気いつかってくれてんだろ…っ、大丈夫だから、気持ちよくなんな…っ」


勢いよく突き上げてくるソレが俺の中でいいところにあたる度、声にならない息遣いと快感が登り詰めてくる。


「…っ、は…っ、ふ…ッ」

「はぁ…っ、あっ、気持ち…っ?もっとこっち来て…」


俺はなるべく咲也の傷に触れないように体を密着させると、律動は勢いを増し俺の奥へと何度も突き刺さった。

こんなにも激しいのに、全然痛くないし怖くもない…

むしろ気持ちが良くて暖かくて、中だけでももうイってしまいそうな程。


「は…っ、…ッ、――ッ!」

「…っ、イッた…!?俺も…っ、も、イク…ッ!」


奥の奥に咲也の欲が吐き出されると、とてつもない幸福感で満たされる。

乱れた息を整える間もなく咲也の唇を塞ぐと、咲也もそれに応えてくれる…

それが本当に嬉しくて、これが幸せって言うのかなって。

久しぶりに動いてヘトヘトの状態で、咲也の腕の中に収まると、咲也は優しく俺の髪を撫でてくれた。

だけど…


「髪、だいぶ伸びたな?まぁ似合ってるからいいけどさ…」


咲也にとってはきっと何気ない一言だったんだろうけど、は長年俺を縛りつけてた言葉でもあって、慌ててベットを離れると、そこら辺にあったハサミで肩くらいまで伸びてた髪を無造作に切り落としてしまった。


「…っ!?しゅ、ちょ…っ、何してんだよ!やめろ…っ!」

「ふ…っ、ぅ…っ、うぅ…」

「どうしたんだよ…髪長いの…嫌だったの?」


髪が長いのが嫌なわけじゃない…
ただ、髪が長くなきゃダメって…切るなって言われるのが怖かった。

俺を弟じゃない、性の道具として女のような扱いをするようになった光ちゃんのみたいに、もしかしたら咲也も俺に長い髪を強要したりするんじゃないかと思ったら怖くなって…

だからそう言われる前に、そう思われる前に切ってしまいたかったんだ…

でもそれをどうやって伝えたらいい!?

これこれこういう事情でって、文字を打って理解してもらおうなんていう心の余裕はなくて、俺は泣きながら夢中で髪を切り落とした。


「柊っ、髪のことはもう言わないから…っ、だからもうやめて…ね!?」


咲也はハサミを俺からゆっくり奪い取ると、頬に流れた涙を指で拭ってくれた。

俺はずっと咲也を困らせてる?

これじゃ、俺が咲也から自由を奪ってやしないか?

床にバラバラと散らばった髪を自らかき集めると、俺のその手を止めて咲也が抱きしめてくれた。


「ゆっくりでいいから…教えて?柊が苦しいことも、辛いことも全部」


咲也は光ちゃんじゃない。

そんなこと分かってるけど、どうしたって長年のトラウマが拭えないんだ。
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