ミントバニラ

桜ゆき

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第二章

敵か味方か

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意識がなくなってから、どれくらい経ったのだろうか…

目を開けると俺はベットの上で、そこは見慣れた警察の病院。

そして、横にはおっさんが新聞を読みながらお茶を飲んでいた。


「…っ、今何時っ!?」

「目覚めて早々なんだよ…」

「朝…!?いや、どんくらい寝てた!?俺…っ」

「丸一日ってとこか?」

「嘘だろ…っ、俺…帰る…」


丸一日、柊を一人きりにさせてたなんて自分が撃たれたことより、何よりその状況にゾッとして身体を無理やり起こした。

それくらい今の俺にとって柊は大事…
警察としての使命、責任感、そんなものじゃない、単純に柊が心配なんだ。


「長谷川が心配か?」

「…っ、俺を着ける気か」

「信用ならねぇってか?俺はあいつに1ミリも興味ねぇよ」

「ならなんでっ…」

「お前さんが心配なの…俺がずっと面倒見てきたんだ。当たり前だろ?」

「でもおっさんだって警察の犬だろ」

「言い方…まぁでも仕方ねぇよな…守るのは構わねぇが、何度も言うが、これ以上首はは突っ込むな…」


眉間に皺を寄せて困った表情をするおっさんは、昔から俺のよく知る親父のような存在で、そこに嘘はないと信じたい。

だけど、もう今となっては何が嘘で何が真実かも分からくて…

闇の組織、警察組織、仲間、兄弟、どれをとっても分からないことだらけだけど、一つだけ確かなものがある。

それは―――


「もうわかったって。俺はこの件から手を引くし首も突っ込まない。その代わり…もう俺らの事ほっといてくれ…頼む…っ」

「俺は忠告しかできねぇ、組織はまだ長谷川を執拗に探すかもしれないぞ」

「それは…俺が守る…」

「何かあったら言えよ…」

「どの口が言うの!?」

「出来れば関わって欲しくないって言ってんの」

「柊との関わりはもう切れないよ…なんかあったらその時は俺も柊と一緒に死ぬ」

「はぁ…まったく。用心しろよ…」

「余計なお世話だわ…」


おっさんは言いたいことだけ言って、新聞を畳むとお茶を飲み干して部屋から出ていった。

単に俺の無事を確認したかったのか、はたまた頃合を伺って消す準備でもしてたのか、俺には何も分からない。

一先ず柊にメッセージを入れると、直ぐに既読がつき俺はほっとして、病院を出る準備をした。
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