ミントバニラ

むらさきおいも

文字の大きさ
上 下
29 / 53
第二章

敵か味方か

しおりを挟む
意識がなくなってから、どれくらい経ったのだろうか…

目を開けると俺はベットの上で、そこは見慣れた警察の病院。

そして、横にはおっさんが新聞を読みながらお茶を飲んでいた。


「…っ、今何時っ!?」

「目覚めて早々なんだよ…」

「朝…!?いや、どんくらい寝てた!?俺…っ」

「丸一日ってとこか?」

「嘘だろ…っ、俺…帰る…」


丸一日、柊を一人きりにさせてたなんて自分が撃たれたことより、何よりその状況にゾッとして身体を無理やり起こした。

それくらい今の俺にとって柊は大事…
警察としての使命、責任感、そんなものじゃない、単純に柊が心配なんだ。


「長谷川が心配か?」

「…っ、俺を着ける気か」

「信用ならねぇってか?俺はあいつに1ミリも興味ねぇよ」

「ならなんでっ…」

「お前さんが心配なの…俺がずっと面倒見てきたんだ。当たり前だろ?」

「でもおっさんだって警察の犬だろ」

「言い方…まぁでも仕方ねぇよな…守るのは構わねぇが、何度も言うが、これ以上首はは突っ込むな…」


眉間に皺を寄せて困った表情をするおっさんは、昔から俺のよく知る親父のような存在で、そこに嘘はないと信じたい。

だけど、もう今となっては何が嘘で何が真実かも分からくて…

闇の組織、警察組織、仲間、兄弟、どれをとっても分からないことだらけだけど、一つだけ確かなものがある。

それは―――


「もうわかったって。俺はこの件から手を引くし首も突っ込まない。その代わり…もう俺らの事ほっといてくれ…頼む…っ」

「俺は忠告しかできねぇ、組織はまだ長谷川を執拗に探すかもしれないぞ」

「それは…俺が守る…」

「何かあったら言えよ…」

「どの口が言うの!?」

「出来れば関わって欲しくないって言ってんの」

「柊との関わりはもう切れないよ…なんかあったらその時は俺も柊と一緒に死ぬ」

「はぁ…まったく。用心しろよ…」

「余計なお世話だわ…」


おっさんは言いたいことだけ言って、新聞を畳むとお茶を飲み干して部屋から出ていった。

単に俺の無事を確認したかったのか、はたまた頃合を伺って消す準備でもしてたのか、俺には何も分からない。

一先ず柊にメッセージを入れると、直ぐに既読がつき俺はほっとして、病院を出る準備をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友達

冬生まれ
BL
君は僕の友達。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...