24 / 53
第二章
嘘と真実【咲也編】
しおりを挟む
柊の言う通り、俺は計画的に柊に近づいた。
だけどそれは、捜査とか警察としての仕事とは関係なく、兄貴の死の真相を知るために個人的に動いていただけ。
兄貴がつるんでた藤代には、お気に入りの男がいると情報を入手した俺は、まず柊の働く店に通い周辺を調べ始めた。
どれくらいの頻度で店に出ているのか、何時に来て何時に帰るのか、そして彼から情報を聞き出すために何が必要か。
そんな時、いつも店にいる時間に彼がいなくてふと橋の上まで足を伸ばしてみれば、思い詰めた感じで川の流れを眺め、今にもそのまま落ちてしまいそうなくらい身を乗り出している彼がいたから、俺は慌てて彼を止めたんだ。
あの時はまだ、彼に死なれては困るという思いで、必至に自殺を思いとどまるように説得した。
きっとあの執着だってあの時の柊にとっては理解できなかっただろうけど、彼からの思いもよらぬ提案に俺はチャンスとばかりに食いついたんだ。
体の関係を持てば心も許すんじゃないかと思った俺は、好都合とばかりに柊を抱いた。
だけどその身体に付いた生々しい無数の傷跡に心が痛み、みんなと同じような自由が欲しいと言って泣いた柊に、個人的な感情が湧き始めたんだ。
もし、柊を苦しめてるのがあの男なら、兄貴の死に関わってるあいつなら許せないし、俺は本気で柊を助けたいって思った。
密会を重ねる度に愛おしくて、好きで好きで仕方なくなってしまったのは嘘じゃないんだ。
だけど結局、藤代から真実を聞き出すことは叶わなかった…
柊は自分の身代わりになって、俺の兄貴は殺されたと言った。
ならば、殺った本人を柊が知っている可能性も高い。
それだけに柊を一人にしておくことは出来ないし、今まで以上に守ってやらなければ、今度は柊が消される可能性だって無くはない。
俺に関わったせいで、自分の兄を自殺においやった。
そう思ってる柊の近くに、俺はいてもいいものなのか正直分からなくなってる。
助けたはずなのに余計に苦しみもがく柊を見て、俺がやってきたことは間違いだったのか?と自問自答を繰り返す。
薬のおかげで穏やかに眠る柊が次に目覚めた時、俺は柊に何をしてあげたらいいのか、何をするべきなのか。
柊が穏やかに過ごせるようにやるべき事、そばにいても苦しめるだけなら、せめて警察官としてあの組織の大元を今すぐにでもぶっ潰す…
今はそれ以外にないと思った。
俺はすぐにおっさんの元に戻り、現場から何から組織に関する何かを掴めないものかと、必至に捜査した。
現場からは直接組織に関わるものは一切出てこなかったものの、一時的に潜伏していたであろうビルの一室から、柊の携帯らしきものが見つかった。
そして、その携帯のSDカード内の画像フォルダーの中に、あの時の現場の状況が映された動画が残されていたのを見つけてしまったのだ。
きっと柊が二人を尾行しながら撮っていたんだろう…
わずかだが組織の数人の顔は割出せそうだ。
とんでもないものをずっとここに隠し持ってたんだな、柊。
組織に気付かれた柊は、すぐさま携帯を隠したのか画面が乱れ、その後すぐに銃声が響いた。
誰が撃ったかまではこれじゃわかんないけど、音声はハッキリと残されていた。
「隆…二…?おいっ!隆二…っ!?」
「柊は……」
「隆ちゃん…ごめんなさいっ……隆ちゃ…っ」
「柊…無事なら良かった…光太…俺はもう…ダメだ…」
「そんなこと言うなよっ、隆二っ!」
「…っ、はぁ…光太…っ、柊を守れ…」
「わかったっ、わかったから…っ!」
「光太…愛…してる…」
「隆二…?隆二っ!!いやだっ!!やだよっ、逝かないでよっ…隆二ぃ…っ!!」
苦しくて悔しくて涙が止まらなかった…
だけど、兄貴は藤代を本気で愛してたんだな。
そして、藤代の最愛の弟の柊を身を呈して守ったんだ。
だから柊は自分のせいだって、藤代がおかしくなったのも、あの組織から抜けられなくなったのも、全部自分のせいだって思ってるんだ。
今までずっと我慢してきたのか…?柊…っ。
今度こそ、今度こそ救ってみせる。
兄貴、柊は俺が守る。
だけどそれは、捜査とか警察としての仕事とは関係なく、兄貴の死の真相を知るために個人的に動いていただけ。
兄貴がつるんでた藤代には、お気に入りの男がいると情報を入手した俺は、まず柊の働く店に通い周辺を調べ始めた。
どれくらいの頻度で店に出ているのか、何時に来て何時に帰るのか、そして彼から情報を聞き出すために何が必要か。
そんな時、いつも店にいる時間に彼がいなくてふと橋の上まで足を伸ばしてみれば、思い詰めた感じで川の流れを眺め、今にもそのまま落ちてしまいそうなくらい身を乗り出している彼がいたから、俺は慌てて彼を止めたんだ。
あの時はまだ、彼に死なれては困るという思いで、必至に自殺を思いとどまるように説得した。
きっとあの執着だってあの時の柊にとっては理解できなかっただろうけど、彼からの思いもよらぬ提案に俺はチャンスとばかりに食いついたんだ。
体の関係を持てば心も許すんじゃないかと思った俺は、好都合とばかりに柊を抱いた。
だけどその身体に付いた生々しい無数の傷跡に心が痛み、みんなと同じような自由が欲しいと言って泣いた柊に、個人的な感情が湧き始めたんだ。
もし、柊を苦しめてるのがあの男なら、兄貴の死に関わってるあいつなら許せないし、俺は本気で柊を助けたいって思った。
密会を重ねる度に愛おしくて、好きで好きで仕方なくなってしまったのは嘘じゃないんだ。
だけど結局、藤代から真実を聞き出すことは叶わなかった…
柊は自分の身代わりになって、俺の兄貴は殺されたと言った。
ならば、殺った本人を柊が知っている可能性も高い。
それだけに柊を一人にしておくことは出来ないし、今まで以上に守ってやらなければ、今度は柊が消される可能性だって無くはない。
俺に関わったせいで、自分の兄を自殺においやった。
そう思ってる柊の近くに、俺はいてもいいものなのか正直分からなくなってる。
助けたはずなのに余計に苦しみもがく柊を見て、俺がやってきたことは間違いだったのか?と自問自答を繰り返す。
薬のおかげで穏やかに眠る柊が次に目覚めた時、俺は柊に何をしてあげたらいいのか、何をするべきなのか。
柊が穏やかに過ごせるようにやるべき事、そばにいても苦しめるだけなら、せめて警察官としてあの組織の大元を今すぐにでもぶっ潰す…
今はそれ以外にないと思った。
俺はすぐにおっさんの元に戻り、現場から何から組織に関する何かを掴めないものかと、必至に捜査した。
現場からは直接組織に関わるものは一切出てこなかったものの、一時的に潜伏していたであろうビルの一室から、柊の携帯らしきものが見つかった。
そして、その携帯のSDカード内の画像フォルダーの中に、あの時の現場の状況が映された動画が残されていたのを見つけてしまったのだ。
きっと柊が二人を尾行しながら撮っていたんだろう…
わずかだが組織の数人の顔は割出せそうだ。
とんでもないものをずっとここに隠し持ってたんだな、柊。
組織に気付かれた柊は、すぐさま携帯を隠したのか画面が乱れ、その後すぐに銃声が響いた。
誰が撃ったかまではこれじゃわかんないけど、音声はハッキリと残されていた。
「隆…二…?おいっ!隆二…っ!?」
「柊は……」
「隆ちゃん…ごめんなさいっ……隆ちゃ…っ」
「柊…無事なら良かった…光太…俺はもう…ダメだ…」
「そんなこと言うなよっ、隆二っ!」
「…っ、はぁ…光太…っ、柊を守れ…」
「わかったっ、わかったから…っ!」
「光太…愛…してる…」
「隆二…?隆二っ!!いやだっ!!やだよっ、逝かないでよっ…隆二ぃ…っ!!」
苦しくて悔しくて涙が止まらなかった…
だけど、兄貴は藤代を本気で愛してたんだな。
そして、藤代の最愛の弟の柊を身を呈して守ったんだ。
だから柊は自分のせいだって、藤代がおかしくなったのも、あの組織から抜けられなくなったのも、全部自分のせいだって思ってるんだ。
今までずっと我慢してきたのか…?柊…っ。
今度こそ、今度こそ救ってみせる。
兄貴、柊は俺が守る。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる