ミントバニラ

むらさきおいも

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第二章

嘘と真実【柊編】

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咲也は俺が川に飛び込もうとした時それを止めたことがきっかけで、身体の関係を持ったことにより、偶然的にお互い好きになっていった。
と、俺は思っていたが…

もしかしたらそれは、偶然なんかじゃなかったんじゃないかって―――


あの日、警察が部屋に入ってきた時は、意識も朦朧としてて何が起きてるのかどうしてこうなったのか理解できなくて、咲也がその場に居合わせた事さえ疑問に思わなかったんだ。

だけど入院から一日経って、なんであの場に咲也がいたんだろうって改めて考えたら、警察側の人間だからって言う答えしか出てこなかった…

そして、記憶が曖昧ながらもこれだけははっきりと覚えてる。

咲也の死んだ兄貴は隆ちゃんで、咲也は隆ちゃんがなんで死んだのか知りたがってた。

もしかしたら俺らの繋がりを元々知ってて、咲也は警察として俺に近づいたんじゃないだろうか…

もしそうだとしたら、俺が咲也にうつつを抜かしたせいで、警察に光ちゃんの居場所がバレて、それで今回の事も起きてしまったんじゃないかって。

散々、光ちゃんから咲也の事警戒しろって言われてたのに、俺がそれを守らなかったから、光ちゃんは死んだんじゃないかって。

まただ、また俺のせいで…
人が死んだんだ―――


「は…っ、離して…っ」

「あ、ごめん…っ、痛かった?」

「ふぅ…っ、はぁ…っ」

「柊…?どうした!?」

「…っ、咲也…なんで俺に近づいたの…っ」

「えっ…それは…っ」

「俺から…光ちゃんの情報探るため?光ちゃんを…追い詰めるために…っ」

「違うっ、俺はただ、兄貴のことが知りたくて…っ」

「でも警察なんだよな!?」

「…っ、そうだけど…っ、でも俺が藤代の殺人の件を知ったのはもっと後だ」


警察という言葉に咲也は少し息を飲んだ。

出来れば、隠し通したかったということだろうか…

でも今更もう隠すことでもないだろう。

俺に対しての後ろめたさ…
それ以外にないよね…?

多分俺、最初っから騙されたんだ。


「俺を…助けるって言ったのも…?それも捜査のため…?」

「違うよ…っ、柊…聞いて…?最初は本当に兄貴の死の真相が知りたくてお前に近づいた。藤代の一番近くにいるお前なら、なんか知ってんじゃないかって…」

「兄弟…って事も…っ、知ってたのか…」

「知らなかった…知ったのは、俺以外の連中が藤代の殺人を立証した後だ。柊、信じてもらえないかもしれないけど俺、会う度にお前のこと好きになって…本当に助けたいって思ったんだ。柊がもし…兄貴殺しに関わってたとしても…っ、それでも俺はお前を助けたかった…」


咲也は、隆ちゃんの事以外で光ちゃんを調べたりはしてないってこと?

でも、もしそうだとしても、結局は警察が踏み込んできたせいで光ちゃんが死んだんだ。


「俺が…っ、光ちゃんを殺した…」

「なんでそうなるんだよっ、違うだろ!?」

「だって!俺が咲也と関わらなければ光ちゃんは死なずに済んだかもしれないだろ!?」

「…っ、柊」

「隆ちゃんだって、俺が二人を追って着いてったりしなければ…俺の身代わりに殺されることもなかったんだっ」

「なぁ、柊…二人が死んだのは柊のせいなんかじゃない。あともう一つ、柊は俺に助けて欲しいって言った…辛かったんじゃないのか?いくら兄貴だからって…そんな…」


そうだ、助けてくれって言ったのは俺だ…

あの拷問みたいな日々から救って貰えるなら、何でもよかったはずだ。

光ちゃんがいない今、俺を無理やり犯す人も監視する人もいない。

俺は思い通り自由になれたはずなのに…
なのになんでこんなに寂しいの…っ
なんでこんなに苦しいんだよっ…。

考えれば考えるほど頭が割れそうに痛いし、脳みそが掻き回されてるみたいに気持ちが悪い。

誰か助けて…助けてよっ―――


「柊!?柊…っ、聞こえるか!?おいっ」

「はぁ…っ、あ、…はぁ…っ」


咲也の声は聞こえてる…
だけど、目の前はぼやけて苦しくて声も出せない。

どうせなら意識を手放してしまいたいのにそれをも許されなくて、ただただ息を吐き苦しみ悶える。

これが罰なら…二人を殺した罰なら、いっその事もう俺もそっちに連れてってよ…

いつの間にか部屋が慌ただしくなって、俺は布団に寝かされ天井を見上げる。

咲也の顔が泣いてるように見えるのはなんでだろう…


「長谷川さん、聞こえますか?大丈夫ですよ…今、鎮静剤打ちますからね…すぐ落ち着きますよ」

「柊…っ、俺のせいで…ごめんな…っ、ごめんな…」


腕にチクッと針が刺されると、次第に苦しさから解放されていく感じがして意識が薄れていく…

あぁ、やっと眠れる…
このままもう目覚めたくない。

もう、一生眠ってたい―――

そう思ってるのに、もう片方の手は咲也を求めて宙を漂う…


「柊…っ」


その手を咲也にがっちり掴まれると、俺は安心して眠りについた。
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