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第二章
咲也の仕事
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ついに、ついにアイツを見つけた…
なのに、あんな現場を見せられても、柊がボロボロに傷付いてるのを目の当たりにしても、俺はまだ柊を助けてやることさえできない。
自分の不甲斐なさと、あの男に対する怒りだけがふつふつと湧いくる。
それに、殺されるって?
一体どういうことだ?
前に見た無数の傷跡だって、あの男によってやられたものだとしたら、柊は今まで一体どういう生活を送ってきたのだろう…
さっきの暴行だって、恋人だからって行き過ぎてやしないか?
なのに柊は絶対的にアイツを裏切れないなんて、彼らの関係って一体なんなんだろう。
それに柊が言ってた、お前も殺されるって…
やっぱりアイツが…!?
俺はとにかくアイツをどうにかしたくて、報告がてら上司であるおっさんに連絡した。
(おう、三上か)
「見つけた…アイツ。今、日本にいるっ」
(戻ってきてたか…)
「おう、そっちは何かわかったのか!?」
(あぁ、やっぱりお前の読み通りだ。例の組織が関係してる可能性が高い…)
「やっぱりあいつが…」
(いや、お前の兄貴を殺ったのが藤代という確証は無い。でも…思っていた以上に関係は深かったみたいだ)
「関係が…深い…とは…?」
(知らなかったかもしれないが…二人は恋人だったらしい)
「こ、恋人…じゃあなんでっ」
(だから、殺ったのが藤代だとは決まってない)
俺はこの数ヶ月、アイツ…藤代光太の居所を特定するためにずっと柊を張っていた。
だから極力身元を明かさないように、自然に近づいてアイツの居場所を吐かせるために…
だけど思いの外、柊はアイツに従順でなかなかこっちになびいてはくれない。
元々は作戦の内のひとつに過ぎなかったけど、助けて欲しいと泣きながら懇願され、どんどん弱っていく柊を見てて、俺はいつの間にか柊を本気で助けたい思うようになってしまったんだ。
柊だって、もしかしたら兄貴殺しに関わってるかもしれないのに…
「柊は…アイツを、藤代を恋人だって言ってた。兄貴と付き合ってたのに今は柊と…」
(…恋人?何を言ってる?)
「え?だって…違うのか!?」
(藤代と長谷川は苗字は違えど実の兄弟だぞ?弟の方は母親の性を名乗ってる。お前知らないで追ってたのか!?)
柊に近づいたのはアイツが可愛がってる奴だって情報を入手したからで、兄弟だなんて話は聞いてないっ。
じゃあなんだ!?アイツら兄弟で…っ
嘘だろ…そんな…
正直ゾッとした。
だけど苦しむ柊を近くで見てた俺には、その苦しみやどうしたって離れることが出来ない絆みたいなものが、兄弟という言葉で何となく納得がいく気がしたんだ。
柊は、藤代を裏切れない…
それは実の兄だから。
「おっさん、柊は今も苦しんでる。だから俺は柊を助けたい。例え兄貴を殺した相手の弟だとしても…柊にはそんなの関係ない…っ、今度見つけたらとっ捕まえてもいいだろ!?」
(まだ駄目だ。確証がないって言ってるだろ!?それに、長谷川だってどう関わってるのかまだ分からない。勝手に動くな。)
「…っ、でも、こうしてる間にもまた殺人が…」
(それなんだがな、三上。行方不明だった売人のうちの一人が昨日遺体で見つかった。)
「…っ、それで!?」
(もう一人は未だに行方不明だが、それに藤代が関わってる事は間違いなさそうだ。だからこれから礼状を出す)
「じゃあもう乗り込んでも…!?」
(ダメだって言ってるだろ。上から指示が出るまでは動くな)
「でもそれじゃあ…っ」
(とにかく、お前は引き続き長谷川を尾行しろ…いいな!?)
「…っ、わかった」
藤代光太、長谷川柊。
この二人が兄貴の事件に関わってるとわかったのは、ごく最近のこと。
俺は兄貴を殺した犯人を探し出すために、刑事としてずっとこの二人をマークしていた。
俺は兄貴のことが大好きだった…
なのにあの日…
変わり果てた姿で兄貴は帰ってきた。
暫く会っていない間に兄貴に何があったのか、どうしてこんなことになったのか、俺には全く思い当たることは無かった。
胸ポケットには兄貴が昔から愛用してるタバコが入ってて、それは無惨にも銃弾で貫かれ
血まみれになってた。
誰が、何のために兄貴を…っ
何も無いところから、数年かけてやっとここまでたどり着いたんだ。
この二人は絶対に兄貴の事を知ってるはず、だから近付いて吐かせようと思ったんだ。
にしてもこの二人が実の兄弟だなんて…
アイツが兄貴の恋人だったなんて…
一気に情報が交錯して、もう頭がごちゃごちゃで整理がつかない。
柊は光ちゃんは恋人だって言ってた…
何でそんな嘘を?
いや、多分嘘じゃない。
彼らは兄弟であり、恋人なんだ。
だから離れられないのか…?
初めて柊に会ったあの日…
死のうとしてた彼を俺は引き止めた。
最初はもちろん死なれちゃ困るっていうこっちの都合に過ぎなかったけど、柊に会う度にだんだんと本気で感情が動いていって、いつの間にか好きになってしまっていたんだ。
俺は、柊を本気で守りたい…
けど、もし…
柊も兄貴の殺人に関わってるとしたら…?
俺は柊を許せるだろうか―――
なのに、あんな現場を見せられても、柊がボロボロに傷付いてるのを目の当たりにしても、俺はまだ柊を助けてやることさえできない。
自分の不甲斐なさと、あの男に対する怒りだけがふつふつと湧いくる。
それに、殺されるって?
一体どういうことだ?
前に見た無数の傷跡だって、あの男によってやられたものだとしたら、柊は今まで一体どういう生活を送ってきたのだろう…
さっきの暴行だって、恋人だからって行き過ぎてやしないか?
なのに柊は絶対的にアイツを裏切れないなんて、彼らの関係って一体なんなんだろう。
それに柊が言ってた、お前も殺されるって…
やっぱりアイツが…!?
俺はとにかくアイツをどうにかしたくて、報告がてら上司であるおっさんに連絡した。
(おう、三上か)
「見つけた…アイツ。今、日本にいるっ」
(戻ってきてたか…)
「おう、そっちは何かわかったのか!?」
(あぁ、やっぱりお前の読み通りだ。例の組織が関係してる可能性が高い…)
「やっぱりあいつが…」
(いや、お前の兄貴を殺ったのが藤代という確証は無い。でも…思っていた以上に関係は深かったみたいだ)
「関係が…深い…とは…?」
(知らなかったかもしれないが…二人は恋人だったらしい)
「こ、恋人…じゃあなんでっ」
(だから、殺ったのが藤代だとは決まってない)
俺はこの数ヶ月、アイツ…藤代光太の居所を特定するためにずっと柊を張っていた。
だから極力身元を明かさないように、自然に近づいてアイツの居場所を吐かせるために…
だけど思いの外、柊はアイツに従順でなかなかこっちになびいてはくれない。
元々は作戦の内のひとつに過ぎなかったけど、助けて欲しいと泣きながら懇願され、どんどん弱っていく柊を見てて、俺はいつの間にか柊を本気で助けたい思うようになってしまったんだ。
柊だって、もしかしたら兄貴殺しに関わってるかもしれないのに…
「柊は…アイツを、藤代を恋人だって言ってた。兄貴と付き合ってたのに今は柊と…」
(…恋人?何を言ってる?)
「え?だって…違うのか!?」
(藤代と長谷川は苗字は違えど実の兄弟だぞ?弟の方は母親の性を名乗ってる。お前知らないで追ってたのか!?)
柊に近づいたのはアイツが可愛がってる奴だって情報を入手したからで、兄弟だなんて話は聞いてないっ。
じゃあなんだ!?アイツら兄弟で…っ
嘘だろ…そんな…
正直ゾッとした。
だけど苦しむ柊を近くで見てた俺には、その苦しみやどうしたって離れることが出来ない絆みたいなものが、兄弟という言葉で何となく納得がいく気がしたんだ。
柊は、藤代を裏切れない…
それは実の兄だから。
「おっさん、柊は今も苦しんでる。だから俺は柊を助けたい。例え兄貴を殺した相手の弟だとしても…柊にはそんなの関係ない…っ、今度見つけたらとっ捕まえてもいいだろ!?」
(まだ駄目だ。確証がないって言ってるだろ!?それに、長谷川だってどう関わってるのかまだ分からない。勝手に動くな。)
「…っ、でも、こうしてる間にもまた殺人が…」
(それなんだがな、三上。行方不明だった売人のうちの一人が昨日遺体で見つかった。)
「…っ、それで!?」
(もう一人は未だに行方不明だが、それに藤代が関わってる事は間違いなさそうだ。だからこれから礼状を出す)
「じゃあもう乗り込んでも…!?」
(ダメだって言ってるだろ。上から指示が出るまでは動くな)
「でもそれじゃあ…っ」
(とにかく、お前は引き続き長谷川を尾行しろ…いいな!?)
「…っ、わかった」
藤代光太、長谷川柊。
この二人が兄貴の事件に関わってるとわかったのは、ごく最近のこと。
俺は兄貴を殺した犯人を探し出すために、刑事としてずっとこの二人をマークしていた。
俺は兄貴のことが大好きだった…
なのにあの日…
変わり果てた姿で兄貴は帰ってきた。
暫く会っていない間に兄貴に何があったのか、どうしてこんなことになったのか、俺には全く思い当たることは無かった。
胸ポケットには兄貴が昔から愛用してるタバコが入ってて、それは無惨にも銃弾で貫かれ
血まみれになってた。
誰が、何のために兄貴を…っ
何も無いところから、数年かけてやっとここまでたどり着いたんだ。
この二人は絶対に兄貴の事を知ってるはず、だから近付いて吐かせようと思ったんだ。
にしてもこの二人が実の兄弟だなんて…
アイツが兄貴の恋人だったなんて…
一気に情報が交錯して、もう頭がごちゃごちゃで整理がつかない。
柊は光ちゃんは恋人だって言ってた…
何でそんな嘘を?
いや、多分嘘じゃない。
彼らは兄弟であり、恋人なんだ。
だから離れられないのか…?
初めて柊に会ったあの日…
死のうとしてた彼を俺は引き止めた。
最初はもちろん死なれちゃ困るっていうこっちの都合に過ぎなかったけど、柊に会う度にだんだんと本気で感情が動いていって、いつの間にか好きになってしまっていたんだ。
俺は、柊を本気で守りたい…
けど、もし…
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