ミントバニラ

桜ゆき

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第一章

あの日の記憶

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あれ…ここは―――

見覚えのある風景に、若かれし頃の光ちゃん。

そしてその隣には今は亡き光ちゃんの恋人、隆ちゃんがいる…

二人ともこんなところで何して―――


「柊…っ!!お前、なんでここに…っ!?」


そうだ…俺、ここにいちゃいけないんだ!


「光ちゃ…っ、ごめ…っ」


あの頃の俺は、二人がヤバい仕事に手を出してるなんて知らなくて、この日も暇つぶしがてら光ちゃんに黙って後を着けていたら、薬の取引現場に遭遇してしまったんだ。

部外者である俺が、口封じのために銃口を向けられたその時…
俺を庇ってくれたのは、光ちゃんの恋人の隆ちゃんだった。


「隆…二…?おいっ!隆二…っ!?」

「柊は……」

「隆ちゃん…ごめんなさいっ……隆ちゃ…っ」

「柊…無事なら良かった…光太…俺はもう…ダメだ…」

「そんなこと言うなよっ、隆二っ!」

「…っ、はぁ…光太…っ、柊を守れ…」

「わかったっ、わかったから…っ!」

「光太…愛…してる…」

「隆二…?隆二っ!!いやだっ!!やだよっ、逝かないでよっ…隆二ぃ…っ!!」


俺の目の前で、光ちゃんの恋人だった隆ちゃんが殺された。

光ちゃんの手が真っ赤に染まっていって、動かなくなってしまった隆ちゃんを見ながら、俺は何も出来ずにただ立ち尽くしていた。

あの日の光景は今でも脳裏に焼き付いて離れない。

光ちゃんが大好きだった隆ちゃん…

俺のせいで…俺のせいで隆ちゃんが死んで、光ちゃんが壊れたんだ。


そして俺らの世界は一変した。

ただのチンピラではなくなった光ちゃんは、俺を生かしておく代わりに、本格的に組織の人間になった。

もう、裏の社会で生きていくしか無かったんだ。

危ない仕事も俺にはさせない様に、わざと自分を犠牲にして俺を守ってくれてるのを知ってる。

だから俺は光ちゃんを裏切れないし、光ちゃんが俺を求めるなら俺はそれを拒めない。

それにほら、この匂い…

そばにいなくたって感じる程、俺にはもうこの香りが嫌という程染み付いてしまっている。

タバコなんて吸ったことのなかった光ちゃんが、あの日からずっと肌身離さず持ってるこのタバコは、この匂いは…光ちゃんにとって隆ちゃんそのもの。

俺はどうしたって、もうこの呪縛から逃れることは出来ない。

一生光ちゃんのそばに居る…
それが俺の、二人への償いだから―――
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