記憶の欠片

むらさきおいも

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2話 唯斗の記憶

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あ…あれ?ここどこだっけ…
真っ暗だ…
ん?俺…こんな声だったっけ…
ひんやりとした床に座り込みぼんやりとした視界から見えるのは銀色の鉄格子と、その先にいるのは女の…人…?
その人が鍵のようなものを掛けるとガチャッと金属音が響き、俺を無視して去っていく。

えっ、いやだ…置いてかないで!待ってっ…!
叫びたいのに思うように声が出ず絞り出すようにして声を上げた。

「やだぁっ!一人にしないでぇっ!!」

目からポロリと涙が溢れるとさっきまでは感じなかった体の痛みと共に、徐々に記憶が甦っていく…
あぁ…俺…またあの人の気に触るような事をしたのか…
暗く寒い地下牢に独り残され俺は、体を温める物もなくただただ震えながら流れてくる涙を拭い続けた。

そして疲れてうとうとし始めた頃、地下牢に響く無機質な金属音…
ガチャッと施錠の外れる音の後に錆び付いた扉の開く音がするとビクッとしてうっすら開けた目の先に差し伸べられた手…

『大丈夫か…?』

あぁ、俺の…大好きな人……
あっ、待ってまだダメっ…覚めないでっ…

「んぅっ、あ…夢…か…?」

ぼぉっとした意識の中で天井を見上げながら瞼を閉じると一筋の涙が頬を伝った。

「え…?」

自分でも驚いて涙を拭うと、目覚める前に指先が触れたあの感触がふっと蘇る…
俺は確かに誰かの指先に触れていて、あともう少しでその暖かい手を握れる所だった…
その感触を思い出しとハッと気付くと、俺の目からは止めどなく涙が溢れていた。

翌日、夜中に変な夢を見て寝不足だった俺は講義の最中ずーっとウトウトしていた。
そんな中、静かな教室に突如として携帯の音が鳴り響き、居眠りをしていた俺は飛び起きて慌てて携帯の音を止めた。
周りからどよめきが起こりクスクスと笑い声が聞こえてきて、恥ずかしくなってカバンで顔を隠しながら携帯を確認すれば愛斗からのメールに顔がニヤける。

(今日学校が終わったら会えない?)

俺はすぐ様、了解の返事を打ち込むこと終わりのチャイムがなり終わるのを待てずに、そのまま教室を飛び出した。

待ち合わせ場所に着けば、細かい詳細なんか分からなくても愛斗がどこにいるのか何故かすぐにわかった。
向こうも直ぐに俺に気が付き照れくさそうに手を振る。
久々の再会に胸が熱くなってワクワクしてソワソワして、でもすごく安心して…
まだ会って間もないし言葉数も少ないのに愛斗の事は全部わかってる気がする。

この不思議な感覚はなんだろう…
愛斗もそうなのかな?
チラッと愛斗の顔を見れば愛斗もまた、照れくさそうに俺と目を合わせる。

『なんか久々なのにすごい安心する…』
「えっ…俺もっ!俺も同じこと思ってたっ!」
『えっ…ほんと?』
「うんっ!」

通じあってるのが嬉しい。
でもそれ以上に、この胸の奥から湧き出てくる、懐かしだけじゃ言い表せない尊い感覚はなんだろう…
ただ会えて嬉しい…
それだけじゃない気がした。
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