2 / 10
2話 唯斗の記憶
しおりを挟む
あ…あれ?ここどこだっけ…
真っ暗だ…
ん?俺…こんな声だったっけ…
ひんやりとした床に座り込みぼんやりとした視界から見えるのは銀色の鉄格子と、その先にいるのは女の…人…?
その人が鍵のようなものを掛けるとガチャッと金属音が響き、俺を無視して去っていく。
えっ、いやだ…置いてかないで!待ってっ…!
叫びたいのに思うように声が出ず絞り出すようにして声を上げた。
「やだぁっ!一人にしないでぇっ!!」
目からポロリと涙が溢れるとさっきまでは感じなかった体の痛みと共に、徐々に記憶が甦っていく…
あぁ…俺…またあの人の気に触るような事をしたのか…
暗く寒い地下牢に独り残され俺は、体を温める物もなくただただ震えながら流れてくる涙を拭い続けた。
そして疲れてうとうとし始めた頃、地下牢に響く無機質な金属音…
ガチャッと施錠の外れる音の後に錆び付いた扉の開く音がするとビクッとしてうっすら開けた目の先に差し伸べられた手…
『大丈夫か…?』
あぁ、俺の…大好きな人……
あっ、待ってまだダメっ…覚めないでっ…
「んぅっ、あ…夢…か…?」
ぼぉっとした意識の中で天井を見上げながら瞼を閉じると一筋の涙が頬を伝った。
「え…?」
自分でも驚いて涙を拭うと、目覚める前に指先が触れたあの感触がふっと蘇る…
俺は確かに誰かの指先に触れていて、あともう少しでその暖かい手を握れる所だった…
その感触を思い出しとハッと気付くと、俺の目からは止めどなく涙が溢れていた。
翌日、夜中に変な夢を見て寝不足だった俺は講義の最中ずーっとウトウトしていた。
そんな中、静かな教室に突如として携帯の音が鳴り響き、居眠りをしていた俺は飛び起きて慌てて携帯の音を止めた。
周りからどよめきが起こりクスクスと笑い声が聞こえてきて、恥ずかしくなってカバンで顔を隠しながら携帯を確認すれば愛斗からのメールに顔がニヤける。
(今日学校が終わったら会えない?)
俺はすぐ様、了解の返事を打ち込むこと終わりのチャイムがなり終わるのを待てずに、そのまま教室を飛び出した。
待ち合わせ場所に着けば、細かい詳細なんか分からなくても愛斗がどこにいるのか何故かすぐにわかった。
向こうも直ぐに俺に気が付き照れくさそうに手を振る。
久々の再会に胸が熱くなってワクワクしてソワソワして、でもすごく安心して…
まだ会って間もないし言葉数も少ないのに愛斗の事は全部わかってる気がする。
この不思議な感覚はなんだろう…
愛斗もそうなのかな?
チラッと愛斗の顔を見れば愛斗もまた、照れくさそうに俺と目を合わせる。
『なんか久々なのにすごい安心する…』
「えっ…俺もっ!俺も同じこと思ってたっ!」
『えっ…ほんと?』
「うんっ!」
通じあってるのが嬉しい。
でもそれ以上に、この胸の奥から湧き出てくる、懐かしだけじゃ言い表せない尊い感覚はなんだろう…
ただ会えて嬉しい…
それだけじゃない気がした。
真っ暗だ…
ん?俺…こんな声だったっけ…
ひんやりとした床に座り込みぼんやりとした視界から見えるのは銀色の鉄格子と、その先にいるのは女の…人…?
その人が鍵のようなものを掛けるとガチャッと金属音が響き、俺を無視して去っていく。
えっ、いやだ…置いてかないで!待ってっ…!
叫びたいのに思うように声が出ず絞り出すようにして声を上げた。
「やだぁっ!一人にしないでぇっ!!」
目からポロリと涙が溢れるとさっきまでは感じなかった体の痛みと共に、徐々に記憶が甦っていく…
あぁ…俺…またあの人の気に触るような事をしたのか…
暗く寒い地下牢に独り残され俺は、体を温める物もなくただただ震えながら流れてくる涙を拭い続けた。
そして疲れてうとうとし始めた頃、地下牢に響く無機質な金属音…
ガチャッと施錠の外れる音の後に錆び付いた扉の開く音がするとビクッとしてうっすら開けた目の先に差し伸べられた手…
『大丈夫か…?』
あぁ、俺の…大好きな人……
あっ、待ってまだダメっ…覚めないでっ…
「んぅっ、あ…夢…か…?」
ぼぉっとした意識の中で天井を見上げながら瞼を閉じると一筋の涙が頬を伝った。
「え…?」
自分でも驚いて涙を拭うと、目覚める前に指先が触れたあの感触がふっと蘇る…
俺は確かに誰かの指先に触れていて、あともう少しでその暖かい手を握れる所だった…
その感触を思い出しとハッと気付くと、俺の目からは止めどなく涙が溢れていた。
翌日、夜中に変な夢を見て寝不足だった俺は講義の最中ずーっとウトウトしていた。
そんな中、静かな教室に突如として携帯の音が鳴り響き、居眠りをしていた俺は飛び起きて慌てて携帯の音を止めた。
周りからどよめきが起こりクスクスと笑い声が聞こえてきて、恥ずかしくなってカバンで顔を隠しながら携帯を確認すれば愛斗からのメールに顔がニヤける。
(今日学校が終わったら会えない?)
俺はすぐ様、了解の返事を打ち込むこと終わりのチャイムがなり終わるのを待てずに、そのまま教室を飛び出した。
待ち合わせ場所に着けば、細かい詳細なんか分からなくても愛斗がどこにいるのか何故かすぐにわかった。
向こうも直ぐに俺に気が付き照れくさそうに手を振る。
久々の再会に胸が熱くなってワクワクしてソワソワして、でもすごく安心して…
まだ会って間もないし言葉数も少ないのに愛斗の事は全部わかってる気がする。
この不思議な感覚はなんだろう…
愛斗もそうなのかな?
チラッと愛斗の顔を見れば愛斗もまた、照れくさそうに俺と目を合わせる。
『なんか久々なのにすごい安心する…』
「えっ…俺もっ!俺も同じこと思ってたっ!」
『えっ…ほんと?』
「うんっ!」
通じあってるのが嬉しい。
でもそれ以上に、この胸の奥から湧き出てくる、懐かしだけじゃ言い表せない尊い感覚はなんだろう…
ただ会えて嬉しい…
それだけじゃない気がした。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
悲しい月(改訂版)
志生帆 海
BL
王を守る隊長と医官が出会い、恋を芽生えさせていく……創作歴史ファンタジー
王を近くで護る美しい近衛隊長のヨウと、王を診る医官のジョウ。
淡々とした日々の中で出会い、芽生える二人の想い。
そしてヨウから明かされる悲しい過去。それを知ったジョウの心。
こちらは改訂版を連載中の『重なる月』に繋がる物語です。
少しだけとある歴史ドラマの設定をお借りしています。
単独で読んでいただいても大丈夫です。
R18・描写に無理矢理なシーンが一部含まれます。苦手な方は回避して下さい。
とんでもねぇな!
アキノナツ
BL
生まれ変わったら、オレの恋人はめっちゃ年上のおっさんになってた。
超スピードで生まれ変わったオレは、前世の恋人を目の前に今世をどう生きるか…。
あー、とんでもねぇな!
R18にはタイトルの後ろに ※ をつけます。
(1話+その後:1話)
◇『夏芽玉さまのTwitter企画「#現世転生BL」』に参加した作品です。
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
蜘蛛の巣
猫丸
BL
オメガバース作品/R18/全10話(7/23まで毎日20時公開)/真面目α✕不憫受け(Ω)
世木伊吹(Ω)は、孤独な少年時代を過ごし、自衛のためにβのフリをして生きてきた。だが、井雲知朱(α)に運命の番と認定されたことによって、取り繕っていた仮面が剥がれていく。必死に抗うが、逃げようとしても逃げられない忌まわしいΩという性。
混乱に陥る伊吹だったが、井雲や友人から無条件に与えられる優しさによって、張り詰めていた気持ちが緩み、徐々に心を許していく。
やっと自分も相手も受け入れられるようになって起こった伊吹と井雲を襲う悲劇と古い因縁。
伊吹も知らなかった、両親の本当の真実とは?
※ところどころ差別的発言・暴力的行為が出てくるので、そういった描写に不快感を持たれる方はご遠慮ください。
あなたへの初恋は胸に秘めます…だから、これ以上嫌いにならないで欲しいのです──。
櫻坂 真紀
BL
幼い頃は、天使の様に可愛らしかった俺。
でも成長した今の俺に、その面影はない。
そのせいで、初恋の人にあの時の俺だと分かって貰えず……それどころか、彼は他の男を傍に置き……?
あなたへの初恋は、この胸に秘めます。
だから、これ以上嫌いにならないで欲しいのです──。
※このお話はタグにもあるように、攻め以外との行為があります。それが苦手な方はご注意下さい(その回には!を付けてあります)。
※24話で本編完結しました(※が二人のR18回です)。
※番外編として、メインCP以外(金子さんと東さん)の話があり、こちらは13話完結です。R18回には※が付いてます。
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
Ωであることを隠してる先輩を無理やり番にしてしまう、いじめられっ子の話。
あかさたな!
BL
【優秀すぎる年下のαをいじめてしまういじめっ子の隠れΩが、下剋上溺愛されるお話】
▶︎オメガバース世界です。αとΩは番(相性がいいパートナー)になれて、Ωにヒート(発情期のようなもの)があるくらいの知識があれば楽しめます!
フェロモンの匂いで、運命の番がわかるらしい!
Ωなら男でも出産出来る体質ですが、作者の好みにより、そこはあまり触れてません。
Ωであることを隠してしまう・柊湊(ひいらぎ みなと)。
一つ上の上位αの兄に劣等感を感じながら、αと偽って生きている。
優秀なαしか入れない生徒会にも一期生から選抜されるほど、努力でそのハンデを乗り越えていた。
二期生になるころ、自分よりさらに優秀な後輩・山神海斗(やまがみ かいと)が生徒会に入ってきた。
優秀すぎて、一期生ながら、生徒会長に選ばれるほどだった。
嫉妬、劣等感、屈辱感、困惑。
そんなものでいっぱいになってしまって、海斗をカツアゲしていじめてをしまう。
たが、海斗には秘密がバレてしまって、2人っきりになると…。
_________
▶︎毎日更新頑張ります!
気ままに筆を走らせるので、いつもより少し長くなりそうですが、最後まで応援していただけると励みになります(作品時間で一年を書きたい)。
▶︎更新不定期になりました。近況については近況ボード「2022年8月の更新について」にて、確認していただけると幸いです。長らくお待たせしてしまい、申し訳ありません。
めちゃハッピーエンドな年下攻めになる予定です!
▶︎海斗が優秀すぎて作者も上手くいじめれてません。もっといじめられっ子感が欲しかったのに、なんかスパダリ気味です。
▶︎▶︎r18表現が含まれます※◀︎◀︎
お好きなところから◎
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる