僕らが描いた夢の先へ

むらさきおいも

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僕らの未来

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そして数ヶ月後…

俺らは戦うことも無くなったと同時に仕事もなくなった。
だから剣術ばかりで学業をしてこなかった分、今のうちに基礎からやり直しと言わんばかりに毎日勉強漬けだ。
正直体動かす方がいいんだけど。


「もうやりたくなぁい」

「ちょっとは勉強もしなきゃダメだよ?もう戦う必要も無いんだから、体より頭使って?」

「アレク先生厳しいんですけどぉ…」


この中で勉強も出来るって言ったら、きちんと学校を出たアレクくらいで、他のみんなはまるでダメ。


「ふぁ~あ…なんか眠いよ…」

「大丈夫かラフィー?少し休むか?ベット行こう。連れてってやるから」


ラフィーの体調の変化に一番敏感なのはニル。
あの日を境に過保護が増したような気がする。


「平気だよ…眠いだけ…」


ラフィーが目を覚ましたのは、戦いが終わった3日後の事で、目が覚めた後もしばらく熱が引かずに、一週間くらいは寝たり起きたりを繰り返していた。

その間、俺らが代わる代わる看病して異能に詳しい先生に診てもらったりとラフィーに尽くしてきた。

特にニルは何も言わずにずっとラフィーの傍について離れなかったけど、たまに一人で泣いてるのを見て俺も胸が苦しくなった。

あの事は俺ら3人しか知らないし、ニルもまさかラフィーがどうやって自分を復活させたのかなんて知らないはずなんだけど、やっぱり自分のせいでって思ってたに違いないんだ。

そして、一ヶ月が経つ頃にはラフィーも完全に回復して普通に過ごせるようになって、俺らにも普通の日常が戻ってきた。

ただ、ラフィーには少しだけ睡眠障害が残った。
昼間でもなんでも急に眠くなってしまうのだ。

そういう時は身体を休めた方がいいと先生から言われていて、俺らも気を使っている。
段々とそれもなくなるだろうと言われているけど、とにかくみんな心配でならないのだ。


「眠かったら寝た方がいいよ…」

「うん、ルシアの言う通り、ラフィーに勉強は今のところ必要ないしね」

「いいなぁ…アレクぅ俺も甘やかしてよ」

「ノエルはやらなきゃダメ!」

「いじわるぅ」

「ふふっ、みんなありがとう、少し休んでくるね」


こうして今まで剣ばっかりだった俺らは今、絶賛勉強に励んでいて怪我をする人もいないので、俺の異能はほぼ使い道がないのだけれど…

一日が終わる頃、ベットの上で本を読んでいると、カイルはいつも通り俺の部屋にやってくる。


「ルシア。回復…必要…?」

「あ、え…っと…」

「んじゃ、質問変えるね…ルシアも…甘やかして欲しい?」


ベッドの上の俺に跨り、読んでいた本を抜き取られるとじりじりと迫ってくるカイル…

俺に拒否権なんてない。

『うん』でも『はい』でもない代わりに、0距離にまで達した唇を受け入れ目を閉じた。


「…っ、ルシア…好き…」

「はぁ…っ、俺も…好き…カイルっ…」


相も変わらず、あいことばの様に囁かれるカイルの好きに俺の本気の好きは増していくばかり。

その「好き」本気にしてもいいの…?


「約束…忘れてないよな?」

「ん…っ、やく…そく…?」

「ルシアが言ったんだろ…?戦いが終わったら二人でどっか行こうって…」


忘れてやしないけど、あの時はこんな今があるなんて思ってなかったし、実現するなんて思ってなかったから…


「行く…カイルと二人で…」

「ふふっ、じゃあ行くとこ考えないとな」


そして俺らはまた体を重ねる…
好きだからなのか何となくの流れからなのか、未だに分からないけど気持ちいいことに変わりはなくて、お互い求め合って満たされる事に幸せを感じる。


「はぁっ、あ…っ、イクッ…」

「はっ…まだ、だぁめっ…」

「あっ、あっ…も…っ、無理っ!」

「気持ちいい…っ?」

「ん…っ、きもち…っ、あっ、カイル…ッ!」


欲望のままぶつかり合い果てた俺らは、息を整えながらぼぉっと天井を眺める。
ねぇ…カイルは今、何考えてる…?

俺が何考えてるか伝えなくても分かるかな?
でも…今、伝えたい。


「ねぇ、カイル…す…き…」

「…っ、なんだよ…急に…っ」

「急じゃない…前から言ってるじゃん…」

「あぁ、うん。そうだよな…ん…えっ?でも…っ」

「カイルはさ…違うの?その…俺の事…」

「違くないっ!…っ、違くないよ…俺も好きだよ…ルシアの事…  でも…っ、いいの?」

「何がだよ…」

「俺だよ!?俺なんかで…いいのかよ…」

「今更何言ってんだよ…好きだって言ってんだからいいに決まってんだろっ」


横にいるカイルは天井を見上げたまま耳まで真っ赤にして、両手で顔を覆ってしまった…
今まで見たことのないカイルの可愛い仕草に、どんどん好きが増していく。


「ねぇ、ほんと?」

「嘘つく理由ある?」

「ないけど…」

「嫌なの…?」

「嫌じゃないですっ!全然っ、むしろラッキーって言うか…俺から言うべきだった。ずっと、ルシアが好きだったから…」


ぎゅっと腕を掴まれカイルと目が合うと珍しく真剣な顔で、今度は俺の方が恥ずかしくなってくる。

俺を引き寄せ接近してくるカイルから目を逸らしわざと見ないようにしていると、カイルが目を合わせるように覆い被さり上から伏し目がちに視線を下ろされて、胸が苦しくて再び目を逸らす。


「こっち…見て…?」


俺の頬を優しくなぞるカイルの手が暖かくて、その手に導かれながら仕方なくカイルを見上げると、今度は優しく唇を塞がれた。


「ん…っ」

「好きだよ…ルシア」

「俺も好き…カイル」


伝えることが出来てよかった…本当の気持ち。

この先も、こんな当たり前の平和が続きますように…
もう二度と戦いが起こりませんように…
そう願って止まない。

だけど、あの妖魔の本体は本当に消えてなくなったのか、どこかで息を潜めているのか、その真相は誰にも分からないまま…

そして、いなくなってしまったあの人も未だに帰ってきてはいなくて、不安はまだこの先も続くんだと思う。

それでも俺らは、今を生きるんだ。

大丈夫、俺にはカイルが、みんながいてくれるから。

行こう、描いた未来の先に―――

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