放課後の保健室でKissして?

むらさきおいも

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迎えた朝

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次の日の朝、目覚めると昨晩の姿のままの将吾が腕の中にいて、やっちまったと深くため息をつき恐る恐る揺さぶり起こす。


「おい、将吾?起きれる?」

「んぅ…?朝ぁ…?」

「うん…朝」

「マジぃ?」

「うん…ごめんな、昨日そのまま寝ちったわ…」


眠気に勝てず俺は将吾の後処理もしないまま、ぐっすり寝てしまったらしい。
もうこうなってしまっては後の祭りだが、将吾が顔を顰めるから俺は心配になって思わずお腹をさすった。


「…っ、痛ぇ…」

「どこ!?大丈夫か?」

「うん…ちょっと頭痛い…」

「あぁ、二日酔いか…」

「ん…昨日は…ごめんなさい」

「いや、いいよ…それよりとりあえず風呂入ってさっぱりしてきな?」

「うん」


将吾が風呂に行ってから、このありえない状況に改めて頭を抱える。

やってしまった事はもう仕方がない。
それに、あんな将吾を放っておくことなんてできるわけ無かったし、今回は例外だってそう思い込むことにした。

将吾が出た後、自分もシャワーを浴びると、濡れた頭のままぼぉっとしてる将吾の頭をタオルで拭いて乾かしてやる。

もし、こんな未来があったのなら、ものすごく幸せかもしれない…

だけどそれと同時に失う事の恐怖もまた―――

ダメだ、そんなありもしない未来を考えるだけ無駄だと、自ら思考を現実に引き戻す。


「着替えたら送ってくから…」

「えっ…もう少し、いちゃだめ?」

「いてどうすんだよ…」

「一緒にいたい…」


ぎゅっとしがみつかれて、俺だって…って喉まで出かかって飲み込み一旦冷静に考える。

昨日の事は仕方がなかったとして、今日はもうダメだろ。
これ以上一緒にいたらもう何も言い訳できなくなる…


「流石に…帰ってないんだから心配するだろ…」

「心配なんかするわけないじゃん…」

「…っ、それでも一応さ…」


将吾は悪くない…
だけど興味無いと言いながらも、実の子供を奪われた母親が、逆上してくる事だってなくない事を俺は知ってる。

それが愛なのか、あてつけなのか…
そんな事まで俺には分からないけど、俺はまだそれに対抗できるほど強くはなれないから。


「連絡だけはする…それならいい?」

「んぅ…まぁ、少しなら別にいいけど…」


すぐさま俺にしがみついていた手を離し、携帯で母親にメッセージを送る将吾。
電話をかけたってでやしないのは分かりきった事…

まぁ、ちゃんとメッセージだけでも入れといてくれれば良しとするか。

に、しても…これからどうする?
腹減ったし飯でも食うか…って言っても男の一人暮らしの冷蔵庫の中に入ってるものなんてたかが知れてる。

冷蔵庫を開けたままぼぉっと考えてると、後ろからトントンと肩を叩かれ振り返る。
すると、将吾が嬉しそうに微笑みながら立っていた。


「連絡、したよ?」

「あ、おう…んじゃ、飯でも食う?」

「ん…食べる」

「つってもなんもねぇんだわ、一緒にコンビニ…行くか?」

「うんっ!」


その笑顔が眩しくて…
そんな将吾の笑顔を俺が一生守ってやる事が出来るなら、出来ればそうしたくて、でも怖くて…

俺は本当に、どうしようも無いくらい臆病者になってしまったんだな。

それから着替えもせず俺のスエットを着たまま、一緒にコンビニに行って、一緒にご飯を食べて、する事なくて一緒にゲームして…

こんなに充実した休日は、いつぐらい振りだろうか…
俺にとっても、めちゃくちゃ濃くて楽しい一日だった。

でも、その時間もそろそろ終わりだ。
もうすぐ外は日が暮れる…

こんな時間まで遊んでしまったもんだから、将吾の帰りたくないモードが更に発動してしまった。
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