放課後の保健室でKissして?

むらさきおいも

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隼人から涼へ

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昨日の夕方、隼人くんから学校に連絡があり面会ギリギリの時間に滑り込んだ。


「ごめん、遅くなった!」

「こっちこそ、急に呼び出してすいません…」

「どうしたの?学校の事?」

「いや、加野先生の事…なんだけど…」

「りつ?りつがどうかした?」

「相田先生ってあいつと仲良いだろ?ってか昔からの知り合いかなんか?」

「あ、うん!大学からの友人だけど…」

「なら何か知らない?将吾の事好きなくせに何で拒むの?あいつは何を抱えてるの?」

「隼人くん…」

「俺、こんな中途半端な気持ちで将吾の事…守れない…」


聞けばさっきまでりつがここにいて、将吾くんの話をしてたとか。

だけどりつは頑として、将吾くんと離れる事を曲げなかった。
それが隼人くんには納得がいかなかったようだ。

そりゃそうだろう、誰がどう見たってりつは将吾くんの事を気に入っているし、将吾くんだってりつが好き…

なのに一緒になれないもどかしさを抱えたまま、りつの事を諦められない将吾くんを託されるなんて、隼人くんにしてみたら納得いかないだろう。


「あのね、隼人くん…りつは昔、目の前で大切な人を亡くしたの」

「…っ、けどそれとこれと何の関係があんだよ…」

「うん、その子はね、りつが養護教諭になって初めての学校の生徒で一年生の時から面倒見てた子だったの。家庭環境が複雑でさ…力になってあげてたんだけど、そのうち特別な関係になってさ…」

「何で…死んだの?」

「母親の虐待。それに耐えられなくなって卒業間際に自殺したの。保健室でね」

「…っ、保健室で…!?なんで…っ」


隼人くんは驚きを隠せない様子だった。
俺だってりつから話を聞いた時、こんなに悲しい事があっていいのか?と心を痛めた。


「うん…その日もいつもと変わらなかったそうだよ。だからりつもいつも通り、ベットに寝かせて用事を済ませて戻ってきた時には…最後はりつに看取って欲しかったのかな…だけどりつにとっては大きな心の傷になってね」

「だから…あの時も…?」

「うん…二人が怪我した時ね、かなり動揺してた。あれが引き金になったのかもしれない…」

「俺らの…せい?」

「あ、ううん、これはりつの問題だから…二人が気にすることじゃないよ。ただもう、この仕事は辛いってさ…」


少し意地悪だったかな、こんな伝え方…
でも、りつはただ逃げたわけじゃないって隼人くんにだけは伝えておきたかったんだ。

彼らのせいでは無いけれど、だけどちゃんとした理由があってこの仕事を辞める事は理解して欲しかった。

そして、出来れば将吾くんにも伝わればいいなって、りつにとっては絶対に余計なお世話だろうけど、俺の勝手な願望。

りつだけが悪者になるような、そんな最後にはしたくなかったんだ…


「…仕事は、わかった。けど将吾は…っ」

「重なるんだって、その子と。守れる自信が無いって…」

「だから俺に…?は?なんだよそれ…っ」

「納得出来ないかもしれないけど…りつも苦しんでる。だからりつの事…今はそっとしといてやって欲しい…」 

「将吾の事あんだけ誑かしといて、やっぱり無理って事かよ…」

「りつは優しいから…突き放せなかったんだよ」

「なぁ、相田先生ってあいつの事好きなの?」

「えっ?」

「や、だってあいつの事めっちゃ庇うし…」

「ふふっ、うん…好きだよ。親友としてね…沢山助けて貰ったし、俺も力になりたいんだ」

「そっか…親友…ね」


親友として…
そう、俺とりつは唯一無二の親友。

隼人くんと将吾くんも、今は思春期で複雑な思いもあるかもしれないけど、やっぱり親友って言葉が一番しっくり来るのかな…


「あ、でもりつの将吾くんへの想いは本物だと思うよ?」

「なんだよ…今更…」

「好きだからこそ幸せになって欲しい、自分じゃダメなんだって思い込んでるんだよね…」

「めんどくせぇやつ。確かに、そんな奴に将吾は任せらんねぇな。わかった、将吾は俺が守るよ。俺が…絶対」


そう強く決意しつつも、どこか不安げな隼人くんの姿に俺の心も痛んだ。

一先ずはりつの想いを汲んでくれた隼人くんだけど、きっと将吾くんの想いが一番大事だって分かってるんだろうから、隼人くんだってきっと辛いんだ。

でも今後、二人がどうするのかは二人の問題。
そこは頑張って乗り越えて欲しい。

俺は何より、りつが心配だ。
今の仕事を辞めて気持ちがスッキリしたとしても、後々将吾くんの事で悩んだりしないだろうか…
それとまた、前みたいに荒れた生活に戻らないだろうか。

本当にりつの事が心配だ…
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