放課後の保健室でKissして?

むらさきおいも

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湊くんの仮病

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本日もお昼を適当に済ませ、いつものように職員トイレで一服タイム。
先生にも息抜きは必要だからね~。


「いたいた!やっぱりここか…」

「おっ、お疲れ~涼ちゃん」

「お疲れ~じゃないよぉ…いっつも保健室放ったらかしじゃん」

「んなことねぇよ、昼休みくらい良いだろ?」

「ん…まぁいいけど…」

「…てかまた何かあった?」

「あ…うん、ちょっと…」

「なぁに?内緒の話?」

「うん、実はさ…」


俺の耳元に顔を寄せた涼ちゃんが話し始めたその時、バタバタと走りながら職員トイレに陽介が飛び込んできた。


「あーいたっ!!やっと見つけ…って…」

「なになに?みんなして…俺だってちょっと休憩したいんだけどぉ?」

「…何してたの?お取り込み中でした?」

「っ、…ううん大丈夫だよ!じゃあ、りつ…また今度…」

「お、おぅ…わかった」


じゃあね~と手を振り涼ちゃんが出ていくと、隼人がちょっと不貞腐れ気味に視線を合わせ近付いてきたと思ったら、俺が吸ってたタバコを取り上げられた。


「あっ!ちょっ、陽介!?」

「何話してたんだよ…」

「まだ何も話してねぇよ…てかそれ返して!」

「ほんとに?」

「ほんとだよっ…てか、なに怒ってんの?」

「別に…怒ってないけど…っ」

「じゃあそれ…早く返して!てか返しなさいっ!」

「やーだねっ」


陽介は指で摘んだ残り少ないタバコを慣れた手つきで吸うと、ふぅ~っと俺に煙を吐き出した。


「わっ!ゴホッ、ゴホッ…何すんだよっ」

「名前なんかで呼ばれちゃってさ?仲良さそうだったから…ちょっとムカついただけ」

「お前なぁ…だからってタバコはダメだろ?」

「うるせぇよ…」


タバコを取上げでも尚、悪びれもなくまだ拗ねてる陽介…

ラスト1本だったタバコはもうほとんど灰になり、俺の憩いの休憩時間が陽介のお守りで潰れてしまう。


「なぁ…てかお前なんか用あったんじゃないの?」

「あ…そうだった!早く来てっ!」

「わっ、ちょっ…」


慌てて吸殻を灰皿に押し潰した陽介が、俺の手を引っ張り急に走り出して保健室に戻ると、可愛らしい男の子がベットで横になり、涙目で足を押さえて悶えていた。


「あ~ん…陽介遅いよぉ…何してたの??」

「ごめんごめんっ…先生探してて… 」

「はぁっ…走らせんなよっ…んで、どうしたの?」

「昼休みサッカーしてたら、足くじいて歩けないって言うから連れてきたら先生いなくてさ…」

「どれどれ?あ~捻挫かな?」


靴下を脱がせて痛みのある場所を確認すると、少し赤くなってはいるものの骨には異常はなさそう。

にしても色の白い子だなぁ…


「ねぇ…でもめっちゃ痛いの…あぁっ痛い痛い!あ~んもう授業無理だからここで寝ていい?」

「大丈夫か?湊ぉ…サッカー出来ないのに無理すっからだよ…」

「だってぇ…」

「まぁ別に休むのは構わないけど…」

「じゃあ、俺寝るわっ!」

「一応湿布貼っとくか」


患部に湿布をペタっと貼ると、ニコッと笑って俺に愛想を振りまきまくるこんな可愛い子、3年にいたっけか…!?

そんな俺の下心が垣間見えてしまったのか、陽介の視線が刺さる。


「先生…」

「なんだよぉ…」

「ダメだからね」

「ダメ?」

「だーめっ!」


俺らのやり取りに可愛い子が割って入ってきて、興味津々に目を輝かせて陽介と、俺の顔を交互に覗き込んでくるその仕草がまた子犬みたいで可愛い。


「なになに??何がダメなの??」

「お前は知らなくていいの!」

「えー!なんでよぉ!」

「じゃあ俺教室戻るわ。先生、くれぐれも湊の事よろしく」

「あっ…陽介、ちょっと待って!」


話を無理やり切り上げて扉に手をかけようとした陽介を引き止めて、ちょっと気になった事をこっそり聞いてみた。 


「お前…もしかしてあの子のこと好き?」

「なっ、なんでだよっ…俺は…っ///」


目を泳がせ耳を真っ赤にして照れてるところを見ると、満更でもないんだろう、多分この前言ってた気になってる子とはきっとこの子の事だ…

その事を確信した俺はニヤッと笑って、意地悪く陽介の耳元で囁いた。


「…俺とどっちが好き?」

「そっ…それは…っ///」

「迷っちゃうの?」

「迷わない…俺は…先生が好き…」

「ふ~ん…じゃあまた後でね…」

「…うん///」


そっかそっか…この子ね、顔真っ赤にして照れちゃって陽介もわかりやすいやつだな。
確かに可愛いし、一緒にいて楽しそうな感じはわかるな。

一先ず納得したところでさっきの子の様子を見に行くと、ゴロゴロしながら携帯ゲームで遊んでいる。
ベットの側まで椅子をガラガラと運び、そこに座り彼がどんな子なのかを少し探ってみることにした。


「あれ?もう治った?」

「あーもぉ平気~」

「そぉ?ならいいけど…君名前は?」

「あ、俺?みなと!」

「湊くんね、陽介と仲いいの?」

「うんっ!俺、陽介の事大好きっ!」

「へぇ~大好きねぇ…」

「ねぇ…先生さぁ…俺、聞きたいことあって…」

「ん?なぁに?」


耳を傾けた瞬間ぐっと手を引かれ体を引き寄せられて、思いもよらぬ出来事にビックリして彼に視線を向ければ、さっきの可愛さはどこへやら、ドキッとするような色気のある表情に吸い込まれそうになる…


「陽介とヤッた…?」

「えっ!?」

「だからぁ…陽介とえっちした?って聞いてんの」


その可愛い雰囲気から想像もしないような言葉が耳元で発せられ、俺は驚き一瞬固まった…

ヤッた…とはもちろんそういう事だよな?


「や、ヤッてはないよ…」

「ヤッては…とは?」

「あーいや、てかなんでそんな事聞くの?」

「だって、俺知ってるよ?」

「…っ、何を!?」

「先生と陽介がちゅーしてるの」


え…いや、見たってどこで…
ここ以外でそんなことした覚えは無いし、もちろん誰もいないことを確認してるし、陽介から聞いたのか?

けどもし陽介が内緒にしてるとしたら、ここは下手に話さないで誤魔化した方が良さそうだよな…なんて俺なりに気を回そうと考えてると、湊くんが痺れを切らしたのか唇を尖らせ不貞腐れながら呟いた。


「もうっ、陽介は先生の事好きすぎるんだよっ…俺じゃダメなんだもんっ…」

「…そんな事ないと思うぞ??」

「だって…お前とは出来ない言われたんだもん…」

「え…そうなの?」


陽介のあの感じだと、湊くんの事は満更でもなさそうだったけど違うのか??
それとも本気で俺と迷ってるのか!?

にしても、湊くんは陽介が俺の事好きって事は知ってるんだな。


「ねぇ、何で俺じゃダメなのかなぁ…」

「うーん…そう言われてもなぁ…」

「先生は陽介のこと好きなの?」

「え?俺はそういう感情はねぇよ、本人にもそう言ってんだけどなぁ…」

「はぁ…俺こんなに好きなのになぁ…」

「俺は陽介も満更でもないと思うんだけどなぁ…」

「ホント!?ほんとにそう思う!?」


目をキラキラ輝かせる湊くんは本当に子犬のように可愛くて、陽介が好きになるのも分からなくもないが、何をそんなに迷うことがあるのか…

にしてもさっきからずっと気になってんだけど、湊くん…俺見た事ないんだよなぁ。
3年だったらだいたい把握してたはずだが…


「ところで湊くんさ?」

「ん?」

「俺お前の事…見たこと無かったんだけど3年…だよな?」

「えっ、あ…」


その時、いつの間に授業が終わったのか、ガラガラっと扉が開いて陽介が入ってきた。


「よっ!湊、足どうだ?」

「うん、大丈夫…」

「痛み出てきたら念の為病院行けよ?」

「うん、ありがとう!りつ先生♡」

「おぅ、またなんかあったら何時でもおいで」

「うんっ!」

「なに?何かあったの?」

「うぅん、なんも無いよ!帰ろっ、陽介」

「お、おぅ…」


そして二人は帰って行ったんだけど、やっぱりどうも気になる…
湊くん…湊くん……?…まぁいっか。

とりあえず陽介が俺なんかより湊くんの事を好きになってくれれば、きっとこれからもっと楽しくなるはず!

俺はそう確信しながら、二人を陰ながら応援することにした。
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