放課後の保健室でKissして?

むらさきおいも

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ツンデレ将吾くん

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4時間目も終わり、いよいよお昼の時間だと言うのに一向に起きてこない将吾。

一体何時間寝てんだこいつは…

あの事があってからあっという間に半年が経ち、将吾もギリギリ3年になれた。

久々に学校に来たと思えば遅刻してきて、眠いってベットに入ったまま普通に寝てるし…

でも可愛いからずっと見てられるわ。


「おーい、そろそろお昼だぞ?飯食わねぇの?」

「んぅ……お昼?もぉ?」

「早く起きないとぉ…食べちゃうぞっ」


寝ぼけ眼の将吾の脇に手を突っ込んで、こちょこちょっとイタズラをすればケラケラと笑いだし、喜んでるのかと思えば次第に怒り出した。


「ははっ、はぁっ…もっ、やめろっ!」

「やぁだよ」

「はぁっ…マジ…っ、無理だってっ!!」


布団をかぶり隠れた将吾の上に馬乗りになり、布団を剥がし顔を近ずければ、真っ赤な顔をしてはぁはぁと息を切らす将吾の姿は本当にたまらない。

でも、俺らの関係はあれから全く発展していなくて…
というより発展させてはいけないと思ってるから、ギリギリのところで理性を保つべく、耐えていると言った方が正しいだろう。

俺は毎日この可愛い生き物を目の前に、いつはち切れるかも分からない理性を必死に抑えているのだ。


「はぁっ…寄るなっ!バカっ!」

「あっ!?せっかくパン買ってきたのにっ…
    要らないの?」

「いらねぇーよっ」

「あそ…じゃあいいよ。一人で食べるから」

「どーぞっ///」


再び布団を被って拗ねてしまった将吾を放っておいて起こすのを諦め、一人分のコーヒーを入れて仕事用のデスクで買ってきたパンを食べ始めた。

するとカーテンが少し揺れて将吾が動き出した事に気がつきチラッと視線を移せば、隙間から物欲しそうな顔でこちらを見てくるから、俺はわざと知らん顔して再びパンを頬張り将吾の様子を伺う。

すると痺れを切らした将吾が観念したのか、俺に声をかけてきた。


「ねぇ…」

「なに?」

「食べたい…」

「さいっきいらねぇって言ったろ?」

「お腹空いた…」

「しょうがねぇな…コーヒー飲む?」

「うん」


バツが悪いのか俯き加減で出てきた将吾を丸椅子に座らせ、買ってきたパンと暖かいコーヒーを手渡すと、美味しそうにパクパクと食べ始めた。

思春期って難しいよな…

でも可愛いから全部許せるな、なんて頬が緩んでる事に気が付き、慌てて身を引き締めて真面目な話にすり替えてみたりする。


「午後は?授業出んの?」

「出ない」

「お前、このままだといくらなんでも卒業出きないぞ?」

「別に辞めるからいい」

「えっ!?今更?あと1年じゃん、高校くらい
    出とけよ」

「どうでもいい…」


投げやりになる気持ちもわからなく無いけど、あと1年の辛抱だ。

大きなお世話かもしれないが俺としてはここまで来たならちゃんと卒業して、大学なり就職なり頑張って欲しいと願っている。

俺が言うのもなんだけど…

そんな俺の親心を他所に最後の一口を頬張ると、また布団に潜り込もうとする将吾を俺は慌てて引き止めた。


「ちょっ、ほんとにまた寝るの?」

「いいじゃん別に…」

「もぉ…」


諦めてカーテンを閉めて自分のデスクでコーヒーを飲んでゆっくりしてると、次の授業のチャイムが鳴り、外では元気に体育の授業が始まった。


「おーい、しょぉーごぉー。…マジで寝てんの?…おーい」


呼んでも全く返事がないのでつまんなくなって、新しいコーヒーを入れようと立ち上がった瞬間、カーテンの向こう側から将吾の異常な叫び声が聞こえて慌ててカーテンを開けた。


「将吾っ!?どぉしたぁっ!!」

「はぁ…はぁっ…今何か…っ、何か体の上に乗っかって…っ」


夢でも見たのかなんなのか、だけど当の本人は俺の腕を掴んで離さないし、涙目になりながら上目遣いで見上げてくるから本気で怖かったんだろうけど、俺的には可愛くて可笑しくて仕方がない。


「ふふっ…」

「笑うなっ!今絶対おばけいたんだぞっ!」
 
「こんな時間に寝るからだよぉ…夢だ夢!」

「絶対いたの!!…まじ怖い…っ」

「いるわけないじゃん…昼間だよ?」


ポンポンと頭を撫でて宥めると、掴まれていた腕を離してくれたから落ち着いたんだろうと思い、ほっと胸を撫で下ろし戻ろうとカーテンに手をかけると、白衣の裾をツンっと引っ張られた。


「んだよぉ…怖いならもう起きたら?」

「やだっ…」

「俺も忙しいんだよ?」

「んぅ…加野っち…ここにいてよ…」

「なんだよ…可愛いじゃん…いていいの?」


将吾は目も合わさずコクコクと頷くと、白衣の裾を掴んだまま黙ってしまった…

ここにいるのは構わないけどずっとこのままって訳にもいかないし、とりあえずやる事やってから戻ってこようと俺は行動に出た。


「ねぇ…一回離してくれる?」
「なんで?」

「用事済ませたら戻ってくるから…」

「すぐ?」

「うん、すぐ」

「早く戻ってきて…」

「了解」


カーテンを開け隔離スペースから外に出ると、一先ず途中だった作業を手っ取り早く終わらせたところで、ちょっと焦らしてやろうかと用もないのに書類の整理を始めてみた。

すると待ちきれないのか、将吾の俺を呼ぶ声が聞こえる。


「加野っち…早く来て…」

「はいはい、待っててね」


あぁ可愛い…

ウズウズする気持ちを抑えながら、ベットのカーテンを開けると、何故か将吾の顔は真っ赤に火照っていた。


「おまたせ」

「…遅い」

「顔真っ赤だけど?」

「…っ、うるせえな…ちょっと暑いだけだよ…」


照れながら答える将吾に期待されてるみたいで勝手にワクワクしながらも、傍に寄れば何となく体が暖かい…

気温で言えば、今日はさほど暑くもなくなんなら少し涼しいくらい。

違和感を覚えた俺は冷静になり、汗でペタっとくっついた前髪を上げて額に手を合わせると、やっぱりいつもより少し熱い。

そしてそのまま、将吾のほっぺを両手で包み込んで目を合わせる…


「なっ…///」

「んーっ、微熱かなぁ…お前、夜ちゃんと寝てる?」

「んなのどっちでもいいだろっ…」

「どうせ夜中までフラフラ外で遊んでんだろ」

「遊んでねぇよっ」

「ダメだぞ?夜ちゃんと寝ないと…」

「うっせぇなぁ…」


微熱の割には元気に反抗する将吾の態度に少し安心ししつつも、これ以上悪化してしまわないようにどうせならしっかり寝てもらおうと、布団をかけ直してまた出ていこうとした。


「えっ、どこ行くの!?」

「ん?夜遊びする悪い子にはお仕置が必要だなぁと思って?」

「やっ、やだっ!何!?」


怖がりの将吾をからかいながら、カーテンの外に出て薬棚から冷えピタを取り出しベットに戻ると、ビビって目を閉じる将吾のおでこにそれをぺたっと貼り付けた。


「冷た…っ、いいよっ、こんなの!」

「だぁめ…っ、これ貼って大人しく寝てなさい」



不満そうに口を尖らせる将吾の頭をポンポンと撫でると、その手を掴まれぎゅっと握られる…


「…っ、ねぇ…」

「ん?」

「言うこと聞くから…ここにいて?」

「ふふっ…もちろん」

「ちゃんと寝たら…ご褒美くれる?」

「…そうだな、考えておくよ」


やっぱり少し辛いのか少しづつ目が閉じていくと、握られてた手の力がふっと抜けて将吾はあっという間に眠りについてしまった。

ちゃんと家に帰ってるんだろうか…
ご飯は食べてるんだろうか…

家に帰ったとして、ちゃんと睡眠は取れてるんだろうかと、ありとあらゆる事が心配で仕方ない。

仲良かったアイツと近頃は一緒にいるところも見ないし…

何かあったのかな?

深入りは絶対にしないって誓ったのに、頭に思い浮かぶのは全部将吾の心配事ばかり…

お願いされたら拒めなくなってきてる俺も、いよいよなのかもしれない。

こんなの良くないと思いつつも、その手を離せずに可愛い寝顔を眺めていたら、いつの間にか俺の瞼も閉じていた…
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