茜空

美緒

文字の大きさ
上 下
10 / 11

バレンタイン 4 終わり

しおりを挟む
「~~~~~~~~~~~っ」

 ソファーに突っ伏して、私は頭を抱えていた。
 ダメ。恥ずかしい。顔を上げらんないーーー!

「……茜」

「ひうっ!」

 ちょちょちょちょちょっ!! 首筋を撫でないでえぇぇぇぇぇぇっ!!!

 慌てて起き上がって、統也君から距離を取ろうとしたけれど、統也君はそんな事はお見通しだったらしく、あっさり捕まって……ま、また統也君の膝の上ぇーーーっ!!
 顔が紅潮していくのが分かる。統也君を直視できなくて、少し潤んだ目があちこちさまよう。

「……可愛い」

 小さな呟きの後、また、キス。
 あ、あれだけしたのにまだ足りないのーーー!?

「足りない」
「!?」
「茜が足りない」

 あわあわあわ。
 とととととと統也君!? 貴方、年齢誤魔化してませんか!?
 何この色気! 腰砕けになりそうなフェロモン!!
 ちょちょちょちょっと待って! そんな切なそうな瞳で私を見ないでー!!
 そそそそそそそれにっ! 私が足りないと言われても、どうすれば良いか!?!?

 ジッと私をただ見詰めてくる統也君。
 こういう時、どうするの? 何をすれば、何を言えば正解? 誰か答えをプリーズ!!

 もうもう。
 心臓はバクバク落ち着かないし、思考は支離滅裂でまとまらないし。
 どうしようどうしようどうしよう?

 私を見詰める統也君。私の、一番好きな人。
 ああ、そうだ。今日ってバレンタインだっけ。
 美奈達が言っていた。『愛』を伝える日。
 私は――うん。統也君が好きだよ。誰にも渡したくないっていう独占欲もある。
 この気持ち、どう伝えれば良い?

 そっと、統也君に両手を伸ばす。
 統也君は驚いたのか少し目を丸くしたけれど、私のしたいようにさせてくれる。

 統也君の頬に触れる。
 光が当たると天使の輪が出来る金の髪も、時々意地悪、でも普段はとても優しく輝く碧の瞳も、優しく甘く私の名前を呼んでくれる唇も、みんなみんな好き。
 ちょっと意地悪で、優しくて、過保護なくらい私を大事にしてくれて。
 そんな等身大の統也君が――大好き。

 溢れる気持ちのまま、私は統也君の首に手を絡ませ――そっと、初めて自分から唇を重ねる。
 ねえ、伝わる? どうか、伝わって。私が、統也君をとても好きだって。

 ゆっくり離れると、統也君の顔が目に飛び込んできた。
 呆然と目を見開いて、私の事を見ている。
 な、何か、そんな顔見ちゃうと、今更ながらに自分の行動が滅茶苦茶恥ずかしくなってきて。
 つい、もじもじしながら統也君を窺い見る。

「あの……これで、良い?」

 す、少しは、足りないとか言っていた分、補えた?

 すると。
 何故か統也君が真っ赤になり、片手で顔を隠しながらソファーの背もたれに沈み込んだ。

「……参った」
「え?」
「降参だよ、降参」
「は?」

 統也君はどこか困った様な嬉しそうな複雑な笑みを浮かべ。

「これも惚れた弱み、か」

 呟くと、私を優しく包み込んだ。

 ――こうして。私と統也君の初めてのバレンタインは幕を閉じたのでした。





 追伸。

 次の日のお昼休み。
 美奈達に昨日のバレンタインどうだったと聞かれたので、恥ずかしい部分はカットカットして説明したら。

「……(絶句)」
「……皐月君、哀れ」
「無自覚ってある意味、犯罪級にタチが悪い」

 何故かそんな事を言われてしまった。
 どういう事だろう?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

会うたびに、貴方が嫌いになる

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
長身の王女レオーネは、侯爵家令息のアリエスに会うたびに惹かれた。だが、守り役に徹している彼が応えてくれたことはない。彼女が聖獣の力を持つために発情期を迎えた時も、身体を差し出して鎮めてくれこそしたが、その後も変わらず塩対応だ。悩むレオーネは、彼が自分とは正反対の可愛らしい令嬢と親しくしているのを目撃してしまう。優しく笑いかけ、「小さい方が良い」と褒めているのも聞いた。失恋という現実を受け入れるしかなかったレオーネは、二人の妨げになるまいと決意した。 アリエスは嫌そうに自分を遠ざけ始めたレオーネに、動揺を隠せなくなった。彼女が演技などではなく、本気でそう思っていると分かったからだ。

桐壺の更衣になるはずだった私は受領の妻を目指します

白雪の雫
恋愛
美容オタクというか休みの日は料理を作ったり、アロマオイルマッサージをしたり、アロマオイルを垂らしてバスタイムを楽しんでいるアラフィフ女な私こと桐谷 瑞穂はどうやら【平安艶話~光源氏の恋~】という源氏物語がベースになっている乙女ゲームに似た世界に、それも入内したら桐壺の更衣と呼ばれる女性に転生した・・・らしい。 だって、私の父親が按察使の大納言で母親が皇族だったのだもの! 桐壺の更衣ってあれよね? 父親が生きていれば女御として入内出来ていたかも知れないのに、父親が居ない為に更衣として入内するしかなかった、帝に愛されちゃったが故に妃達だけではなく公達からも非難されていた大納言家の姫にして主人公である光源氏の母親。 そして主人公が母親の面影を求めて数多の姫達に手を出すと同時に、彼女達を苦しめ不幸となる切っ掛けともなった女性──・・・。 ゲームでは父親の遺言から幼い光源氏を残して逝くところまでが語られるけど、実は後見人が居ない状態で入内する前に私を心配して保護しようとしてくれている年上男性の存在が語られているし立ち姿もちゃんとあるのよね~。 その男性は智寿といって受領で超金持ち!長身のゴリマッチョ!しかもセクシーな低音ボイス! 実は女性受けしそうな外見をしている帝や光源氏、頭中将達といったキャラよりも筋骨隆々な智寿様が推しだったのよね~♡ 今の私は大納言の姫とはいえ根は二十一世紀の日本で生きていた庶民。 そんな私が帝の妃として・・・否!何もかも占いで行動が決められるという窮屈な場所で生きて行けるはずがない! よしっ!決めた! 二十一世紀・・・とは言わないけれど、せめて健康的で清潔な生活を送る為に私は智寿様の妻になる!!! 私が入内しなければ藤壺も葵の上も六条の御息所も・・・皆不幸にならないもの!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義です。

根暗令嬢の華麗なる転身

しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」 ミューズは茶会が嫌いだった。 茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。 公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。 何不自由なく、暮らしていた。 家族からも愛されて育った。 それを壊したのは悪意ある言葉。 「あんな不細工な令嬢見たことない」 それなのに今回の茶会だけは断れなかった。 父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。 婚約者選びのものとして。 国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず… 応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*) ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。 同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。 立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。 一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。 描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。 ゆるりとお楽しみください。 こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。

くだらない冤罪で投獄されたので呪うことにしました。

音爽(ネソウ)
恋愛
<良くある話ですが凄くバカで下品な話です。> 婚約者と友人に裏切られた、伯爵令嬢。 冤罪で投獄された恨みを晴らしましょう。 「ごめんなさい?私がかけた呪いはとけませんよ」

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...