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メルディ国編

閑話 神様もびっくりだヨ side成長神

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 ※※※ 注意 ※※※

 この話は、主人公視点では分からない、本編の裏話のような、ある種のネタバレ的なものを含むサイドストーリーとなっています。
 読まなくても本編の方に変わりはありませんが、人によってはこれを読んだ事により、本編の読み方が変わる可能性があります。
 その為、これを読む、読まないは自己責任でお願いします。
 読了後の苦情等は受け付けませんので、ご了承下さい。




 この話は、『16 教えますヨ』までの神サイドの話になります。






 サトコ――いや、リジーがネスフィルに魔法を教える……ひいては、同行する事を了承したのを見て獣神がホッとした様に笑った。
 自分の加護を持つ者同士だ。仲良くしてくれたら嬉しいという、獣神らしい優しい思いから出た笑みだろう。
 まあ、魔法特化であるリジーと接近特化であるネスフィル。相性は悪くないと思う。……あの性格にさえ慣れれば、だが。

 それにしても……

「まさか加護が暴走するとは……」

 私の言葉に、その場に居た神々が一斉に頷いた。幸運神など遠い目をしている。いや、気持ちは分かるが。

 それにしても……私の加護。あれは、「どうしてこうなった!?」と問いたい。
 私が司るのは成長。努力する者に等しく力を与えるものだ。断じて奪うものではない!

「何言っているんですか。老いも成長でしょう」
「……」

 魔術神の言葉に項垂れる。
 昔は、この法則は良いと思ったんだ。若い時が長ければ、より良い物を目指し研鑽するだろうと……。事実、この法則を導入した当時は、みな切磋琢磨し、己の力を伸ばす為に努力していた。
 だが月日は流れ……成長が止まった時点の力を維持する為の努力しかしなくなった。私が望んだのは、その上なのに。努力し、この世界の様々な水準を上げて欲しいと思ったのに……どこで間違ってしまったのだろう。

「最初から」

 ズバッと一刀両断する魔術神は私の方を見る事なく、随分嬉しそうにリジーと遣り取りしている。
 加護を与えた事により精神的な繋がりが微かに生まれ、彼女の持つ異世界の知識が手に入り、知識を司る者としてはとても興味深いのだろうな。

 思わず漏れそうになる溜め息を殺し、私は最初を思い出す。
 リジー……サトコが召喚されて来た時。老いた姿に私達は衝撃を受け、新参者の召喚神が嘲笑した。

「あっはは! ババアになってるよ! 最高神様の決めた法則はスバラシイですねぇ」

 私――いや、『最高神』という地位と、彼女を貶す言葉に、集まっていた神々が不快を示す。だが、召喚神は気付かぬまま、ニヤニヤと彼女を見下ろした。

「こういう、無様な召喚が見たかった! ババアのまま、世界を引っ掻き回して楽しませてくれよなっ」

 召喚神の言葉に、慌てて彼女を視る。本来、召喚された者に付くはずの召喚神の加護が――ない。共に召喚された者には付けているのに、彼女に付けないとは……。
 召喚神は、本来、魔術神が司っている『魔術』の一部『召喚魔法』だけを強引に奪い取り、神へとなった者だ。全ての神々の承認を得ぬまま無理矢理神となった為、その行動や言動等に問題が見られていたが……決められた事すら守れぬとは――。
 こやつに、神たる資格はない。

 私は、老いて召喚されてしまった彼女への罪悪感と少しでも助けになればと思い、こっそり加護を与え、周囲を目だけで見渡す。
 彼女へ向かっていた神々の視線は私のそれに気付くとこちらを見、召喚神を冷ややかに睨み付け、一斉に頷いた。彼等もまた、召喚神に神たる資格はないと認めたのだ。

「……召喚神」
「はーいよ」

 いまだ、嫌な笑みを浮かべる召喚神が私を見る。ああ、落ちたものだと嘆かわしくなる。
 神の見習いとして修行していた時はまともだったのに……神の地位を奪った時から歪んでしまった。
 まだ未熟だったのだ。そう思うが、時間は戻らない。決められた事を守らぬ者に裁きを下さねばならない。

「お前から、神の地位をはく奪する」
「はぁ?」
「そして、彼女が許すその時まで、お前を永劫の牢獄へ幽閉する」
「なっ!?」

 永劫の牢獄――全ての概念が消え、ただただ白だけが広がる神々の幽閉場所。過去、様々な罪を犯した神々が地位をはく奪され、そこへ幽閉されている。
 いまだかつて、その場から出られた存在はない。

「ふざけんなっ! あいつがババアで召喚されたのはあんたの所為だろっ!!」
「――お前は故意に、彼女へ加護を与えていない。それは、神々が決めた事に逆らう行為だ」
「っ」

 自覚があるのは当然だ。元召喚神は顔を歪め――身を翻した。

「冗談じゃねぇ」
「――甘いよ」

 だが、そう行動するだろうと予想を付けていた魔術神の行動は早かった。
 己に戻った召喚魔法を力に変え、元召喚神を永劫の牢獄へと送り込んだ。
 その姿が消え、みなでホッと息を吐こうとした途端。

「あああああっ!?」

 魔術神の素っ頓狂な叫びが響き、全員の視線が人の世に向く。

『……は?』

 ……何が、あった? 元召喚神に罰を与えている間に……何があったのだ?
 我等の中でブラックリスト入りしているグゼナ国。その国の王子が……年寄りになっている?
 全員、呆然と見るしかない。あの王子が老いるまで、まだまだ時間があった筈だが?

「……いつの間に、彼女へ加護を与えたんですか? 成長神、幸運神、獣神」

 魔術神の言葉に、私は驚いて幸運神と獣神を見る。彼等も私を見ていたが……その瞳の中に不憫さがあるのを感じ、思わず、視線を逸らす。
 それだけで、何故私が加護を与えたのか分かったのだろう。魔術神が笑う。

「やれやれ。人間には加護を与えないと言っていた成長神がついつい加護を与えてしまうほど、老いての召喚は異常事態って事ですか」

 言葉にトゲを感じるのだが、私の被害妄想だろうか?
 チラリと再び彼女を見て――

「は?」

 いつの間にか謁見の間と呼ばれる場所に移動していた彼女。そこでも――老化現象が起きた。今度はバッチリ目撃した。何というか……妙な力の流れを感じた様な?
 他の神々も今度は目撃したのだろう。訝し気に様々な物を眺めた後、魔術神へ問う様な視線を投げ掛けた。

「申し訳ありませんが、私にも理由は分かりませんよ。こんな事、今までなかったのですから、多方面から調べてみないといけないでしょう」

 確かにそうだ。
 こういった、妙な力の流れ等を分析するのは、魔術神が得意だ。流石、知識を司る者といえる。任せるしかない。
 人の世では、彼女が随分楽しそうに、だが複雑そうに、グゼナの王や貴族を脅し、魔術神の導きに従い城を移動している。

「ぶっ――あっはっはっ!!」

 意外な所から突然、笑い声が上がった。
 人の世を見ていた神々――魔術神を除く――が笑い声の主を見遣る。それは――最近、難しい顔ばかりしていた闘神だった。

「いいな、彼女! 面白い! 脅し文句に対し、もう少しバカにした脅し文句があったと斜めの方向に反省しているっ!!」

 ……ツボにはまったようだ。笑い転げている。

「ひーひーひー。きっ、気に入った! 俺も加護を与える!」

 腹を抱えて笑い転げながらも、確実に彼女へ加護を付与する。
 これは……前代未聞の事態だ。一人の人間に、四人もの神が――って、ん? 違う! おい、魔術神! いつの間に加護を付与していた!?
 五つの加護に気が付き魔術神を見ると、「元召喚神の代わりですよ」等としれっと言ってきた。
 いや、確かに、上位神である魔術神が付与するのは正しい。正しいが――っ!!

 何と言えばいいのかと悩んでいるうちに、彼女は魔術神の導きに従い、あの国で埋もれていた神器の一つ『時空神の贈り物』を手に取り――無意識なのだろう、そこに積もっていた埃をパッパッと払う。
 その行動に――時空神が感激した。ああ……今まで、使われる事もなく様々なものに押し潰されていたからな……。
 グゼナに神器がある等と知られたら、あの国王達は金に換える為、あの神器を粉々にし、その命を終わらせていた可能性がある。だから、知られない様にする為、あの国に看破、鑑定、識別等の『調べる為の魔法』を持つ者が生まれない様に、持っている者が近付かない様に神々で色々と手を尽くした。
 その結果、神器は忘れ去られ、あの場所で長き時を無為に過ごしていたのだが……ようやく、丁寧に扱ってくれそうな者の手に渡った。喜ばしい事だ。

「ありがとう、ありがとう! お礼に加護をあげよう!」

 おいっ!?
 時空神の行動は素早かった。止める間もなく六つ目の加護が彼女に付与される。あああああ……大丈夫なのか? また、妙な事が起きないか?

 ハラハラしながら見守っている間にも、魔術神と時空神が喜々として彼女へ導きを与え……あの国から、貴重なアイテムが全て消えた。平積みされていた書物を回収する時など、わざわざ彼女に対し言い訳までしていた。自分の知識に変換して、より彼女の力になる為、と。……知識を司る者が何を言っているのやら。
 城の隠し通路に今では偉大な変人とか呼ばれている召喚勇者が「灯台下暗し」とか言って作った隠し部屋。そこにあった魔術神が贈った杖も、古の匠と呼ばれる者が作成した秘宝級の家具も、根こそぎ。きれいさっぱり消えた。その事が少しだけ怖くなってくる。
 ……何が怖いって、彼女がその回収した全ての物の価値に全く気付いていないのが怖いんだが……知られた時、どうなるのだろうか?

 もう、魔術神と時空神の暴走を黙って見ているしかできない中、彼女は我々の予想を超える行動をする。
 何故、突然ジャンプして頭をぶつける? オオカミを滝壺に落とす? 魔法を使って走り出し――落ちたっ!?
 慌てていた為か、無意識に力が発動し――

 な に が 起 き た !?

 色々な力が一斉に弾け、気が付いたら彼女が地面に座り込んでいた。

「魔術神!?」

 説明を求めると、魔術神は苦笑を浮かべ。

「何と言いますか……彼女に加護を与えている神々が、彼女を助けようと一斉に力を使い、その結果として自然界の法則とか時間の概念とか様々なものをスパッとすっ飛ばして彼女を助けた……としか言いようがありません」
「……何があった?」
「さあ? アイテム達すら彼女を助けようと動いたので、もう、何がどうなってこうなったのか理解できません。多分ですが、彼女自身には、『何か』が適当につじつまを合わせて記憶として植え付けていると思います。何せ彼女……疲れてはいますが、混乱している素振りはないので……。もう本当に、何が何やら、ですね」

 魔術神すら匙を投げる現象……これはまずいのではないか?

「問題はないと思いますよ。複数の神の加護を持っている人間など彼女以外いません。いない以上、同じ事は彼女にしか起こりません」

 いや、それこそ問題だろう!?

「彼女がどんな行動を取るか分からない以上、問題のありなしも、絶対大丈夫とも言えないんですよ。……神々が力を使わないよう、自重を頑張るしかないかと」

 魔術神の乾いた笑いに、幸運神、時空神、闘神、獣神――って、おい。全員じゃないか――が、揃って目を逸らした。何かしら自重は難しいという事だろう。……まあ、私も彼等の事は言えないと思うが。
 ふと、魔術神が妙な顔をした。

「……働けと言われました……かなり働いていると思うのですが……」

 何と言うか……嬉しいような楽しいような悔しいような……様々な色が浮かぶ複雑な表情。魔術神が今、何を考えているのか、うかがい知る事はできない。
 彼女は、どのような経緯で「働け」と言ったのだろう?

 ……突然、魔術神が項垂れた。心底打ちひしがれているようだ。

「わ、私に敗北感を味わわせるとは……彼女、やりますね」

 何をだ!? 彼女と魔術神の間にどんな遣り取りが!?

「ふ、ふふふふふふ。これは、私の性格の見せ所ですね」

 性格じゃないだろ! そこは腕、腕だ!!

 時々、ニヤリと笑いながら彼女を導く魔術神に、時空神以外が引く。本気で引く。ついていけない。
 というか、魔術神の隣に陣取り、平気な顔で魔術神に何かを言っている時空神にもついていけないな。

「時空神って、魔術神と張る性格だったかしら?」

 ふうっと溜め息を零す幸運神。確かに……まだ時空神の方が良識あった気がするが……。

「魔術神。あのクズ達を一掃する為、彼女にちょっと働いて貰おう」
「イイですねぇ。じゃあ、看破魔法が使える様になりました~と表示して……」
「あ、ルール破りしているという情報も遠回しに出しておこうよ」
「ああそうですね。アレ、既婚者と不倫してるから丁度いいです」

 ……物騒な会話が聞こえる。
 聞こえない振りをしてもいいが、取り返しのつかない事になったら本当に大変だ。
 恐る恐る人の世を見ると、彼女はまたいつの間にかメルディ国にあるカジス村の冒険者ギルドに居て……。

 何故、自分の魔力が規格外だと気付かない!?
 隠蔽魔法を使い、3分の1も魔力を隠したのにそれでも『白』。それがいかに常識外なのか、どうして気付かないのだ!?

「教えてませんから」

 楽しそうに魔術神が言う。こいつ……。
 段々、私の言葉遣いが悪くなっている自覚はある。だが、自分のペースを保とうと思っても、魔術神に時空神、そして彼女がそれを許してくれない。
 あああああっ。神の威厳がっ! 最高神の余裕がっ!!

「最初からありませんよ」

 魔術神……お前、性格悪い。悪過ぎ。

「あ……バカな奴。彼女に鑑定魔法を使って不快にぃ!?」
「ほぉお!?」

 魔術神の驚愕の声に時空神の妙な叫びが重なる。
 神々が一斉に何事だと人の世を見て、納得する。老化現象、三度目だ。

「は、ははははは……」

 魔術神の口からこれまでにない乾いた笑いが零れる。その顔は――引きつっていた。

「老化現象が何故起こるのか……分かりましたよ」
「何!?」

 期待を込めて魔術神を見ると――引きつった笑みを私に向けてきた。

「成長神ってば、彼女の事、どれくらい気に入っているのか聞いても?」
「は?」

 意味が解らん。気に入っている?

「無自覚ですか……」

 はぁ……と溜め息を吐き、魔術神は額に手を当て。

「あの老化現象は、成長神の加護が原因です」
「……は?」

 魔術神が言うには……私の加護が、付与されている当人――つまり彼女を害した、もしくは害そうとした者に怒り、彼女を守る為だけにその力を振るい。
 結果として、蓄えていた力の没収をした――だけでは済まず。他の神々の加護をも巻き込み、未来に蓄えるであろう『若さ』、『能力』、『魔力』等、ありとあらゆるものを没収した。
 ……え?

「こんな、今までにない力が発揮されたのですから、成長神が彼女を気に入っていると思っても間違いないでしょう」

 いや、そうかもしれないが……私としては、気に入っている訳ではないと思うが?

「取り敢えず、老化については事実を織り交ぜて、言い訳しておかないといけませんね」

 魔術神は頭を抱えつつ、彼女に対して老化現象の言い訳をする。
 結局……私の怒りに触れた為に起こった現象で済ませるようだ。まあ、本当の事は言えないよな……。

 困惑しているうちに……再び、事件が起きた。

「まぁ……」

 幸運神がポカンと彼女を見る。
 そう。今度は幸運神の加護が反作用を起こし、幸運を奪う等という事をやらかした。
 幸運神の加護は、幸福と運を与えるのではなかったか……?

「与えると奪うは表裏一体。どちらが欠けても成り立たないという事でしょう」

 どこか諦めた様に魔術神が呟く。

「もうこれは、加護が意志を持って暴走した。それで済ませましょう。彼女に与えた加護は既に独立し、彼女を守る為だけに行動しています。私達が干渉するのは無理です。というか、干渉したくありません」

 投げやり、というのはこういう事をいうのだろう。魔術神が思いっ切り拗ねている。自分の理解が及ばない事が発生し悔しいのだろうな……。
 私達が加護の暴走に頭を抱えているうちに、人の世では騒ぎが大きくなり……彼女はそんな騒動の中心にしっかりいた。こういうのを『トラブルメーカー』とでも言うのだろうか?

「ああ、もう! つじつま合わせが大変なんですけどっ!!」

 そう叫びながらも、魔術神が随分と楽しそうに――見ようによっては自棄になっている――彼女のフォローに回っている。手のかかる子ほど可愛いとかそんな感じか?

「あ……」

 それまで黙っていた獣神が何かに気付き、人の世を思い切り覗き込む。
 視線の先には……獣神が現在、彼女以外で唯一加護を与えているネスフィルがいた。今、彼女の居るカジス村の冒険者ギルドに向かっているようだ。

 ネスフィルはユキヒョウの獣人だ。ユキヒョウは既に個体数をかなり減らし、絶滅の危機にある。その毛皮を目的に狩られてきたからだ。
 だから獣神はユキヒョウを守る為、現在、一番強い個体であるネスフィルに加護を与えた。大切なモノを引き寄せる事を、守れる力を手に入れる事を願って。

「……魔術神」
「うん? どうかした?」
「リジーと、ネス、一緒に行動、する、に、して、欲しい」
「……リジーがネスフィルの『大切』になれると?」
「わから、ない。でも、おれの加護、持ってるから」
「まあ……加護を持つモノ同士って引き合うからね。同じ加護なら余計に。上手くいけば、大事なパートナーになる、か」

 魔術神は頷くと、真剣な顔をして彼女――リジーを導きだした。それを、獣神が祈る様に見詰める。

 私は再び、人の世に視線を向ける。
 魔術神が導いているのだ。リジーはネスフィルと共に行動する様になるだろう。
 何の運命のいたずらか。老いを与えられ、この世界へと召喚されたリジー。絶滅回避が期待されているネスフィル。この出会いは、何をもたらすのだろうか。

 ……私達の中に、運命を司る神はいない。
 運命を司っていた者は、過去、罪を犯し、地位をはく奪され永劫の牢獄に幽閉されている。
 次代を就けてもよかったのだが……みなで協議し、やめた。我々の手で運命を作るのは何かが違うと思ったからだ。
 その為、この先に何があるのか、神といえど知る事はできない。
 できる事といえば、願うだけだ。どんな運命だろうと、乗り越えていってほしいと。

「ありがとう、魔術神」
「どういたしまして」

 リジーがネスフィルと共に行く事が決まった。
 それによって、どこかホッとした空気が流れる。

 ネスフィルは26年間、この世界で生きてきた。強者として。
 その力を持って、何も知らないリジーを守る……いや、守る必要はないか。というより、あれが黙って守られる珠だろうか? いや違うな。何かあっても、自分でぶち壊しそうな気がする。
 うん、そうだな。逆だ。
 何も知らないからこそ、様々なもので雁字搦めとなっているネスフィルの鎖を砕いて欲しいと思う。それこそ容赦なく。

 姿は老いていても、彼女の本質は若い。
 その若さでもって、この世界に、今までにはない風を起こしてもらえたら……と少しだけ願っておこう。

「成長神も強欲ねぇ」

 幸運神が笑う。でも、そうなったら良いね、と。

「私が導くのだから大丈夫」
『いや、それが一番心配だから』

 魔術神の言をみなで一斉に否定する。
 絶対、ぜったい、絶対に! 揃って暴走しそうだからほどほどにしておいてくれ。

 それにしても……





 彼女、リジーが『マル』と呼んでいる存在。それが実は『魔術神本人』だと知った時、彼女は何を思うのだろうか……?
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