魔王、勇者の息子になる。

ヒロセ

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第1章 リルエット編

第11話 魔王、寝不足になる。

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 朝、天気は晴れている。
 今日も授業があるので、俺は学園に行く。
 
「ふはぁ……」
 
 俺はあくびをしながら、1階の廊下を歩いていた。
 昨夜、家族デイというくだらないイベントで勇者一家と同じベッドで寝ることになった俺なのだが、勇者のいびきとルティアの寝相の悪さであまり寝れてない。
 挙句の果てには勇者に抱きつかれて、最悪だった。
 俺があくびをすると、隣にいたルティアも眠そうに口を開いていた。
 
「眠たいね~私一睡もできなかったよ。」
「黙れ」
 
 うそつけ。熟睡してただろ。
 しかも寝ぼけて俺の耳甘噛みしやがって。
 マジのマジで、勇者とルティアは完膚なきまで叩きのめす。
 
「あーあ……学園めんどくさい」
「……」
「ねぇ2人でサボってさ。どこかで遊ぼ?」
「断る」
「けち」
 
 ルティアと適当に会話をしていると、俺たちの前で俯きながら歩いているリルエットの姿が見える。
 今日も男達に囲まれ、罵倒を浴びさせられていた。
 
「……またか」
 
 軽くため息をつき、やれやれと頭を横に振った。
 またイジメられているのかよ……あいつ。だから少しは抵抗しろ。これじゃまた魔王の名が汚されてしまうだろうが。
 俺は呆れた目でリルエットを見ていると、
 
「待てぃ~!そこの不届き者!」
 
 近くから聞き覚えのある声が響く。
 リルエットやイジメているやつら、そして廊下にいるやつらが全員同じ方向を見ると、そこにはカナリアが立っていた。
 
「やいやいやい!神聖なる学び舎で弱き女子をいじめるとは、お前のような下衆野郎成敗してくれてやる!」
 
 何してるんだ?あいつは……。
 黒縁メガネをきらーんと輝かせて、腰まで伸びているツインテールを揺らしてポーズをとっているカナリア。
 なんだか、見てるこっちが恥ずかしくなってくる。
 いきなり変な奴が登場して、いじめっ子たちは一瞬ぽかんとした表情を浮かべるが、すぐに「ハハハハっ」とカナリアをバカにするように笑った。
 
「おいおい!ヒーローごっこか!面白ぇ!なに、俺たちを成敗するって?お前がか?」
「違う!私じゃないユウ殿だ!」
 
 ……は?
 
「父は勇者アラン様、母は大魔法使いエナ様。その二人の間に生まれたユウ殿が貴様らを悪即……あ!」
 
 カナリアは俺と目が合う。
 そして「ユウ殿~!」手を振りながら、こちらに近づいてくる。
 
「今日も良き朝だな。早速で悪いんだが、いじめをやっている愚かな輩がいてな。ぜひユウ殿の手で成敗を……ふがががが!」
 
 満面の笑顔で話しかけてくるカナリアに腹が立ったので、こいつの鼻を俺は思いっきりつまんだ。
 
「痛いっ!痛いぞ!ユウ殿敵は私じゃない!あいつらだ!」
「お前、なに勝手に俺の名前を出してんだ?」
「ご、ごめん……!でも私じゃあいつら勝てないんだもん」
「知るかぁ!お前の厄介事に俺を巻き込むんじゃねぇよ」
「だって!昨日ユウ殿、悪さする精鋭組をボコボコにしてのだろう?」
 
 なんでこいつがそのことを知っているんだ?その場にはカナリアはいなかったはず……、あいつしかいないか。
「ノノ……あの野郎」と手の力が強くなる。「鼻が取れちゃうよ!」と涙目になっているが知ったことか。
 カナリアの次はイジメをしているやつらと目が合う。すると、
 
「ちっ……」
 
 男たちの態度が一変する。馬鹿笑いをしていたがいきなり静かになった。
 そしてリルエットから離れて、俺たちを睨みながらその場を去っていった。
 罵倒から解放されたリルエットもこちらのほうをじぃーと見て、頭を下げて再び足を進めた。
 
「くーくくっ!やつらユウ殿の顔を見た途端、逃げ出したぞ!」
「うるせぇよ」
 
 俺の顔を見て逃げたんじゃない。ルティアの顔を見た瞬間、あいつら顔色を変えて逃げやがった。……俺よりルティアのほうが恐ろしいってことか?
 「やったな、ユウ殿」とキャーキャー騒いでいるカナリアにうんざりしていると、突然、ルティアに話しかけられた。

「ねーユウ、誰これ?彼女?」

 そういえばこいつとルティアは初対面だったな。
 
「ただのバカツインテールだ」
 
 俺が簡潔に紹介すると、「あ、そう」と返事が返ってきた。
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