19 / 42
旅行編 植物園編
しおりを挟む
話題になった植物園にも行くことに。ローディア植物園は様々な花が咲いている。エラは赤いショートヘアを弄りながら尋ねる。
「バラの花飾りとか似合うかな?」
「じゃあ私はユリかな」
バックはユリの花を見ながら、黒いユリの花言葉の看板を見かけた。
何も言わずに拳を握りしめたバックに、手を重ねるウェイ。大丈夫、と呟いたバックの手を握り、ウェイはこう言うのだ。
「白いユリを買って帰りましょう。勿論バラもですわ」
「ウェイは何も買わないの?」
「そうですわね、ではワタクシはアイビーを買いますわ」
様々な植物を見ていく中で心が落ち着いていく三人。ウェイは安心していたのだが、バックの表情は何故か浮かない。
「どうしましたの?」
「うん、いつ墓参りにいこうかなって」
それは両親だけでなく、あの日死んだ人達の眠る墓。花を見ていると供えたくなったのだろう。
ウェイはふふふと笑って、それも売店で買おうと言ったのだった。
中には絡み合う花がある。三種の花が混ざり合い絡み合う姿は自分たちを想像させた。
「赤が私、黄色がバック、青がウェイね」
エラがそう言うとウェイが抗議する。
「逆ではありませんこと?」
「だってウェイ赤で止まらないじゃん」
エラの言葉に吹き出したバックは、私も青が良いと言うのだった。
「バックは完全にイエローシグナルですわ」
ウェイが言うのにムッとしたバックだったが言い返せないでいたのだった。
そして保管されている樹齢千年の木を見る。ローディア植物園はこの木を中心に造られている。壮大な木を見ながらエラはふと呟く。
「私もこれくらい生きられたらなぁ」
だがウェイがその意見を突く。
「意志は紡げますわよ」
「あー、まぁそうだね」
意志を紡ぐ。バックはそれを強く思った。そしてある考えが思い浮かんだ。
エラを見つめるバックに、どうかしたのか尋ねる。
「なんでもないわ。私、宿に帰ったらやりたいことができたよ」
ちょっとごめんと、シャルを連れて少し離れる。必要な物を用意してもらうのだ。
「必要な物ならワタクシにも言ってくだされば……」
「ウェイにも内緒! シャル、よろしくお願いします」
「わかりました。ウェイ、私が戻るまで護衛を任せますよ」
「わかっていますわよ。暫くブラブラしましょうか」
シャルが戻るまで花々を見て回る三人。待ち合わせは売店。ゆっくり見て回る。
そうして売店で、花飾りを買う。墓花も大量に買うのだが、ここでウェイが待ったをかけた。
「生花ではなく造花を買いましょう」
いつもは墓花に生花を供えていたバックだが、ウェイの意見に賛同した。
大きな売店だったので様々な造花もあった。キクの花の造花を沢山買って荷物はウェイが持つ。
ここでシャルが合流した。四人は植物園を出て、墓園へ行く。
着いてから、ウェイとシャルの持つキクの花の造花を一つずつ受け取りながら、墓に供えていく。月神会のメンバーの墓だ。
恨みなんてない、どうしてこんな事をさせたのかなんて、どうでもいい、死んだ人に失礼だ。
両親の墓に着いた時、目を瞑り手を合わせるバック。エラとウェイとシャルも。
そうして最後に兄の墓に来た。ワクチン接種で死んだ兄、真相は分からない。ワクチンで死ぬ人もいる、別の要因の人もいる。
それはどうしようもない事。幼くして死んだ兄と月呪法をバックにさせるまでに至った両親を思い涙を流した。
「行こう、半蝿に対処しないと」
いつだって墓参りする度に思い出すバック。ずっと忘れることのない記憶。
去る時に一言「絶対にこの呪いを消してみせる」と言って、シャルの運転する車に乗り込んだ。
ウェイはアイビーの髪飾りを二つ、短いツインテールの部位に付けながら思う。
(半蝿ですら、これですのに、今までどうやってやってきたんでしょう)
バックを見つめるウェイに、バックは「顔に何かついてる?」と尋ねる。
「バック、今までどうやって三つの顔の月と戦ってきたんですの?」
それはふとした疑問。約十年もの間、戦い続けたバック。それはエラも知りたかった。バックが度々、遅刻や早退、休みを繰り返したのは知っていた。
それらが三つの顔の月との戦いだったなら納得いくが、一人で戦うには大きすぎる敵だった。
「ただ毎日をひたすら何も考えずに生きてきた。三つの顔の月に付け入られた時だけ博士を頼った。私の責任だと思っていたから」
話せなかったのはわかる。だが引っかかるのは博士すら近づかせなかった事。だがその秘密には人差し指を口に当てるバック。
エラとウェイは諦めて、半蝿処理を手伝った。
「半蝿の時は協力者はいたけど、毎回違う人だったよ。それは私の理由によるけど」
「今は苦痛ではありませんの?」
「うん、なんだろうね? ウェイとシャルさんは信用できるし、エラがキッカケなのかも」
初めての協力者を得て、枷が外れたのかもしれないと言うバック。
吹っ切れたとでも言うのだろうか、そんな思いがあるバックは嬉しそうな顔をした。
「エラとウェイとシャルに会えて、今はただ嬉しい」
半蝿を全て処理し終えて病院を去る。車に乗り込んだ後、宿に向かい休んだ。
エラが寝た後、ムクリと起き上がったバックは、シャルから受け取ったものを広げて、作り始めた。
「手紙ですの?」
「うん、見たら怒るよ?」
「でしたらワタクシもシャルと共に、部屋の外に立っていますわ」
バックは手紙を書き綴り、ある行動をとった。そして全て書き終わると、シャルとウェイに渡した。
「私の誕生日の前日まで開けないで欲しい。あとこれは……」
「わかりました。預かっておきます」
何かを頼んで、笑顔になるバック。
「まだ明日もありますわよ、楽しみましょう。おやすみなさいですわ、バック」
バックはベッドにダイブする。これできっと大丈夫。
「バラの花飾りとか似合うかな?」
「じゃあ私はユリかな」
バックはユリの花を見ながら、黒いユリの花言葉の看板を見かけた。
何も言わずに拳を握りしめたバックに、手を重ねるウェイ。大丈夫、と呟いたバックの手を握り、ウェイはこう言うのだ。
「白いユリを買って帰りましょう。勿論バラもですわ」
「ウェイは何も買わないの?」
「そうですわね、ではワタクシはアイビーを買いますわ」
様々な植物を見ていく中で心が落ち着いていく三人。ウェイは安心していたのだが、バックの表情は何故か浮かない。
「どうしましたの?」
「うん、いつ墓参りにいこうかなって」
それは両親だけでなく、あの日死んだ人達の眠る墓。花を見ていると供えたくなったのだろう。
ウェイはふふふと笑って、それも売店で買おうと言ったのだった。
中には絡み合う花がある。三種の花が混ざり合い絡み合う姿は自分たちを想像させた。
「赤が私、黄色がバック、青がウェイね」
エラがそう言うとウェイが抗議する。
「逆ではありませんこと?」
「だってウェイ赤で止まらないじゃん」
エラの言葉に吹き出したバックは、私も青が良いと言うのだった。
「バックは完全にイエローシグナルですわ」
ウェイが言うのにムッとしたバックだったが言い返せないでいたのだった。
そして保管されている樹齢千年の木を見る。ローディア植物園はこの木を中心に造られている。壮大な木を見ながらエラはふと呟く。
「私もこれくらい生きられたらなぁ」
だがウェイがその意見を突く。
「意志は紡げますわよ」
「あー、まぁそうだね」
意志を紡ぐ。バックはそれを強く思った。そしてある考えが思い浮かんだ。
エラを見つめるバックに、どうかしたのか尋ねる。
「なんでもないわ。私、宿に帰ったらやりたいことができたよ」
ちょっとごめんと、シャルを連れて少し離れる。必要な物を用意してもらうのだ。
「必要な物ならワタクシにも言ってくだされば……」
「ウェイにも内緒! シャル、よろしくお願いします」
「わかりました。ウェイ、私が戻るまで護衛を任せますよ」
「わかっていますわよ。暫くブラブラしましょうか」
シャルが戻るまで花々を見て回る三人。待ち合わせは売店。ゆっくり見て回る。
そうして売店で、花飾りを買う。墓花も大量に買うのだが、ここでウェイが待ったをかけた。
「生花ではなく造花を買いましょう」
いつもは墓花に生花を供えていたバックだが、ウェイの意見に賛同した。
大きな売店だったので様々な造花もあった。キクの花の造花を沢山買って荷物はウェイが持つ。
ここでシャルが合流した。四人は植物園を出て、墓園へ行く。
着いてから、ウェイとシャルの持つキクの花の造花を一つずつ受け取りながら、墓に供えていく。月神会のメンバーの墓だ。
恨みなんてない、どうしてこんな事をさせたのかなんて、どうでもいい、死んだ人に失礼だ。
両親の墓に着いた時、目を瞑り手を合わせるバック。エラとウェイとシャルも。
そうして最後に兄の墓に来た。ワクチン接種で死んだ兄、真相は分からない。ワクチンで死ぬ人もいる、別の要因の人もいる。
それはどうしようもない事。幼くして死んだ兄と月呪法をバックにさせるまでに至った両親を思い涙を流した。
「行こう、半蝿に対処しないと」
いつだって墓参りする度に思い出すバック。ずっと忘れることのない記憶。
去る時に一言「絶対にこの呪いを消してみせる」と言って、シャルの運転する車に乗り込んだ。
ウェイはアイビーの髪飾りを二つ、短いツインテールの部位に付けながら思う。
(半蝿ですら、これですのに、今までどうやってやってきたんでしょう)
バックを見つめるウェイに、バックは「顔に何かついてる?」と尋ねる。
「バック、今までどうやって三つの顔の月と戦ってきたんですの?」
それはふとした疑問。約十年もの間、戦い続けたバック。それはエラも知りたかった。バックが度々、遅刻や早退、休みを繰り返したのは知っていた。
それらが三つの顔の月との戦いだったなら納得いくが、一人で戦うには大きすぎる敵だった。
「ただ毎日をひたすら何も考えずに生きてきた。三つの顔の月に付け入られた時だけ博士を頼った。私の責任だと思っていたから」
話せなかったのはわかる。だが引っかかるのは博士すら近づかせなかった事。だがその秘密には人差し指を口に当てるバック。
エラとウェイは諦めて、半蝿処理を手伝った。
「半蝿の時は協力者はいたけど、毎回違う人だったよ。それは私の理由によるけど」
「今は苦痛ではありませんの?」
「うん、なんだろうね? ウェイとシャルさんは信用できるし、エラがキッカケなのかも」
初めての協力者を得て、枷が外れたのかもしれないと言うバック。
吹っ切れたとでも言うのだろうか、そんな思いがあるバックは嬉しそうな顔をした。
「エラとウェイとシャルに会えて、今はただ嬉しい」
半蝿を全て処理し終えて病院を去る。車に乗り込んだ後、宿に向かい休んだ。
エラが寝た後、ムクリと起き上がったバックは、シャルから受け取ったものを広げて、作り始めた。
「手紙ですの?」
「うん、見たら怒るよ?」
「でしたらワタクシもシャルと共に、部屋の外に立っていますわ」
バックは手紙を書き綴り、ある行動をとった。そして全て書き終わると、シャルとウェイに渡した。
「私の誕生日の前日まで開けないで欲しい。あとこれは……」
「わかりました。預かっておきます」
何かを頼んで、笑顔になるバック。
「まだ明日もありますわよ、楽しみましょう。おやすみなさいですわ、バック」
バックはベッドにダイブする。これできっと大丈夫。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる