8 / 42
バック=バグ、遊園地に憧れる
しおりを挟む
それはある時発せられた言葉からだった。踊るのは楽しいが毎度は飽きると言うウェイがテレビをつけた時だった。
それは遊園地の宣伝だった。ついた瞬間反射的にチャンネルを変えたウェイだったが、付いてしまったものは仕方がない。そのバックの言葉が部屋に響いた。
「遊園地か……行ったことないな」
「ええ? バック、それは本当?」
エラは驚いてダンスを止める。バックは踊り続けている。
「それはそうだよ、私の状況考えたらね」
「でも、呪ったのは八歳の時でしょう? それまでは?」
「お父さんもお母さんも宗教に熱心で、そういうのをしてこなかったから」
エラはそれを聞いて何やら企んでいた。ウェイはすぐさまそれを見抜いた。
「何を企んでいますの? エラさん」
「ねぇ……ウェイ、バックを遊園地に連れて行けないかな?」
ウェイは顔をしかめた。何故なら人の多い遊園地での護衛が困難だからだ。こんな事になるならテレビをつけなければ良かった。
「別にいいよ、気にしなくて。私は行って感情が低下する方が嫌」
「えー、楽しいのに!」
ウェイはホッとした。これで何とか遊園地に行かなくて済むだろう。
「ちなみにウェイはあるの?」
「ないですわよ」
言ったウェイがハッとした。エラがニヤリと笑っている。
「バックの護衛が終わったら、また殺し屋稼業になるんじゃないの? そうしたらもう遊園地には行けないかも」
バックはハッとした。
(そうか、ウェイもまた……ならば、自分のためだけでなくウェイのためにも)
そう思うバックは提案した。
「ウェイ、遊園地へ行きたい」
「バック!? 正気ですの? 遊園地での護衛がどれだけ大変だと……」
「でも三人で楽しみたい」
こうなると断れば逆に……そう思ったウェイはため息をついてこう言った。
「なるべく小さめの遊園地を探しますわ……」
「駄目よ。この国一番のローディアランドへ行きましょう」
エラのこの提案に流石に殺気立つウェイ。だがエラはちゃんと計画があった。
「ローディアランドは八時から二十二時までの経営だから時間を絞ればメンテナンス中の乗り物以外に楽に乗れるわ。それ以外の時間はカフェにいればいい。更に平日に行けば人混みは少ないわ。どうせなら楽しみましょう?」
要するに学校をサボって行くということだ。それならと、ウェイも提案する。
「変装のための格好を用意してもよろしくて? 学生だと分かれば入れないですわよ」
偽証身分証も用意するというウェイ。ここまできたら何としてでも行ってやると言うエラ。
「今はラックの月だけど、いつハーフの月になるかわからない。ラックの月の間の方が助かるよ。ハーフの月は結構厄介だから」
「そういえば、まだラックの月なの? 半月はとっくに過ぎたけど」
「ラックは約三ヶ月、ハーフは約一ヶ月半、デスは約一ヶ月半。ラックの期間が長いの」
そういえばと、ハーフの月の時はどうなるのかを尋ねるエラ。
ハーフの月の時は命が半分になる。そしてハーフの月のみ、ある人間が対象となる。
それは病気を持っている人。病院に入院してる人が命を半分にされる。
呪いが進めば更に半分になる可能性があるから、ハーフの月の時は半蝿を発生させてしまったら、病院を駆け回ることになる。
政府公認許可証を見せて入院患者に薬を飲ませていくことになるのだ。
博士との連絡の連携も必要でかなり厄介な部類のようだ。
ならばと今のうちに遊園地に行こうと言うエラ。バックは笑ってウェイを見た。ウェイは既にタブレットで何かを操作している。
「今からチケットが届きますわ。変装用ウィッグと、服、偽証身分証も届きますので、この家から明日朝五時出発で」
仕事が早いと言うエラは家族に連絡する言い訳を今から考えることになる。
「悩むくらいなら、提案しないでいただけますか?」
エラは頭を掻きながら、ウェイを頼る。
「仕方ありませんわね。ワタクシから連絡しておきますわ」
ウェイはエラの両親に、ウェイの誕生日祝いを盛大にやるため泊まっていき学校を休むという嘘を伝えたのだった。
唐突に来たウェイとのお泊まり会にドキドキするエラとバックだった。お風呂の時間になった時、エラはこの家のお風呂は大きいから、三人で一緒に入ろうと提案した。
ウェイは苦笑して、先に脱衣所へ行く。バックとエラは、ウェイの背中を見て目を疑った。
その背中は傷だらけだった。ウェイは笑いながら言う。
「見える場所に傷があるとハニートラップで使えませんの」
その言葉通り、胸や腹には残るような傷がなかった。当然服で隠れない部分には傷がない。
それだけ器用に、対象を守るために受けた傷なのだろう。
そして前側の傷がないのが、向かい合えば無敵であることを物語っていた。
バックとエラは服を脱いで風呂場でウェイに抱きついて、一緒にお風呂に入った。
風呂から上がり、布団を敷いて語り合う。こんな日々は長く続かないことをウェイは知っていた。だから作り笑顔で話を聞いていた。
唐突だった。バックが寄ってきて、ウェイの顔をつねる。
「なんですの?」
「もっと笑って欲しい」
「笑っていますわ」
「私にはバレバレ」
それを聞いて困るウェイは、バックの顔を見つめてふっと優しく微笑んだ。
「あなたがどうして笑えるのかがワタクシにはわかりませんわ」
「そう?」
ウェイはゴロンと横向きに寝転がり、バックに背を向け言う。
「明日は早いですわよ。早く寝ますわよ」
バックとエラは顔を見合せて微笑んで、布団の中に入っていった。
それは遊園地の宣伝だった。ついた瞬間反射的にチャンネルを変えたウェイだったが、付いてしまったものは仕方がない。そのバックの言葉が部屋に響いた。
「遊園地か……行ったことないな」
「ええ? バック、それは本当?」
エラは驚いてダンスを止める。バックは踊り続けている。
「それはそうだよ、私の状況考えたらね」
「でも、呪ったのは八歳の時でしょう? それまでは?」
「お父さんもお母さんも宗教に熱心で、そういうのをしてこなかったから」
エラはそれを聞いて何やら企んでいた。ウェイはすぐさまそれを見抜いた。
「何を企んでいますの? エラさん」
「ねぇ……ウェイ、バックを遊園地に連れて行けないかな?」
ウェイは顔をしかめた。何故なら人の多い遊園地での護衛が困難だからだ。こんな事になるならテレビをつけなければ良かった。
「別にいいよ、気にしなくて。私は行って感情が低下する方が嫌」
「えー、楽しいのに!」
ウェイはホッとした。これで何とか遊園地に行かなくて済むだろう。
「ちなみにウェイはあるの?」
「ないですわよ」
言ったウェイがハッとした。エラがニヤリと笑っている。
「バックの護衛が終わったら、また殺し屋稼業になるんじゃないの? そうしたらもう遊園地には行けないかも」
バックはハッとした。
(そうか、ウェイもまた……ならば、自分のためだけでなくウェイのためにも)
そう思うバックは提案した。
「ウェイ、遊園地へ行きたい」
「バック!? 正気ですの? 遊園地での護衛がどれだけ大変だと……」
「でも三人で楽しみたい」
こうなると断れば逆に……そう思ったウェイはため息をついてこう言った。
「なるべく小さめの遊園地を探しますわ……」
「駄目よ。この国一番のローディアランドへ行きましょう」
エラのこの提案に流石に殺気立つウェイ。だがエラはちゃんと計画があった。
「ローディアランドは八時から二十二時までの経営だから時間を絞ればメンテナンス中の乗り物以外に楽に乗れるわ。それ以外の時間はカフェにいればいい。更に平日に行けば人混みは少ないわ。どうせなら楽しみましょう?」
要するに学校をサボって行くということだ。それならと、ウェイも提案する。
「変装のための格好を用意してもよろしくて? 学生だと分かれば入れないですわよ」
偽証身分証も用意するというウェイ。ここまできたら何としてでも行ってやると言うエラ。
「今はラックの月だけど、いつハーフの月になるかわからない。ラックの月の間の方が助かるよ。ハーフの月は結構厄介だから」
「そういえば、まだラックの月なの? 半月はとっくに過ぎたけど」
「ラックは約三ヶ月、ハーフは約一ヶ月半、デスは約一ヶ月半。ラックの期間が長いの」
そういえばと、ハーフの月の時はどうなるのかを尋ねるエラ。
ハーフの月の時は命が半分になる。そしてハーフの月のみ、ある人間が対象となる。
それは病気を持っている人。病院に入院してる人が命を半分にされる。
呪いが進めば更に半分になる可能性があるから、ハーフの月の時は半蝿を発生させてしまったら、病院を駆け回ることになる。
政府公認許可証を見せて入院患者に薬を飲ませていくことになるのだ。
博士との連絡の連携も必要でかなり厄介な部類のようだ。
ならばと今のうちに遊園地に行こうと言うエラ。バックは笑ってウェイを見た。ウェイは既にタブレットで何かを操作している。
「今からチケットが届きますわ。変装用ウィッグと、服、偽証身分証も届きますので、この家から明日朝五時出発で」
仕事が早いと言うエラは家族に連絡する言い訳を今から考えることになる。
「悩むくらいなら、提案しないでいただけますか?」
エラは頭を掻きながら、ウェイを頼る。
「仕方ありませんわね。ワタクシから連絡しておきますわ」
ウェイはエラの両親に、ウェイの誕生日祝いを盛大にやるため泊まっていき学校を休むという嘘を伝えたのだった。
唐突に来たウェイとのお泊まり会にドキドキするエラとバックだった。お風呂の時間になった時、エラはこの家のお風呂は大きいから、三人で一緒に入ろうと提案した。
ウェイは苦笑して、先に脱衣所へ行く。バックとエラは、ウェイの背中を見て目を疑った。
その背中は傷だらけだった。ウェイは笑いながら言う。
「見える場所に傷があるとハニートラップで使えませんの」
その言葉通り、胸や腹には残るような傷がなかった。当然服で隠れない部分には傷がない。
それだけ器用に、対象を守るために受けた傷なのだろう。
そして前側の傷がないのが、向かい合えば無敵であることを物語っていた。
バックとエラは服を脱いで風呂場でウェイに抱きついて、一緒にお風呂に入った。
風呂から上がり、布団を敷いて語り合う。こんな日々は長く続かないことをウェイは知っていた。だから作り笑顔で話を聞いていた。
唐突だった。バックが寄ってきて、ウェイの顔をつねる。
「なんですの?」
「もっと笑って欲しい」
「笑っていますわ」
「私にはバレバレ」
それを聞いて困るウェイは、バックの顔を見つめてふっと優しく微笑んだ。
「あなたがどうして笑えるのかがワタクシにはわかりませんわ」
「そう?」
ウェイはゴロンと横向きに寝転がり、バックに背を向け言う。
「明日は早いですわよ。早く寝ますわよ」
バックとエラは顔を見合せて微笑んで、布団の中に入っていった。
1
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
異世界帰還組の英雄譚〜ハッピーエンドのはずだったのに故郷が侵略されていたので、もう一度世界を救います〜
金華高乃
ファンタジー
〈異世界帰還後に彼等が初めて会ったのは、地球ではありえない異形のバケモノたち〉
異世界から帰還した四人を待っていたのは、新たな戦争の幕開けだった。
六年前、米原孝弘たち四人の男女は事故で死ぬ運命だったが異世界に転移させられた。
世界を救って欲しいと無茶振りをされた彼等は、世界を救わねばどのみち地球に帰れないと知り、紆余曲折を経て異世界を救い日本へ帰還した。
これからは日常。ハッピーエンドの後日談を迎える……、はずだった。
しかし。
彼等の前に広がっていたのは凄惨な光景。日本は、世界は、異世界からの侵略者と戦争を繰り広げていた。
彼等は故郷を救うことが出来るのか。
血と硝煙。数々の苦難と絶望があろうとも、ハッピーエンドがその先にあると信じて、四人は戦いに身を投じる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる