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第四話「魔族ゾデラルの事情」
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「時間がない、ここに人類を受け入れる準備をしなければならない。」
自分よりも2年も前にこの世界に転生してきた先輩は突飛な計画を話した。至って真面目な話であるなので僕は話少し笑いを堪えながら聞いた。
この異世界に居住区を造り環境に配慮したモデルケースを構築する。僕が大学を離れてから研究所で進められていた計画でSDGsを目的とした自動車メーカーや通信事業などのスポンサーも多く出資しているという。
「お前が残っていれば、この世界の自然保護観察員として自然、地質、気候調査・・・。やってもらうことが山ほどあるというのに・・・。」
「要は使いパシリでしょ?いいかげん僕も先輩のいいなりでなくて自分で生きていきたいんですよ。」
「この計画の発案は俺じゃない。ナナセからのものだ。」
「えっ?」
僕は思わずナナセのほうを見た。彼女はこちらを見て少しペロッと舌を出しておどけた。真っ直ぐでキラキラした目をしている。エルフに転生しているからではない夢見る人間の目だった。アスカ先輩はいまだ表情ひとつ変えない。
「わたしでもできる事があるならしようと思っただけよ。」
僕はまた目を外した。先輩やナナセの壮大な計画に比べて自分の存在のなんと小さなことかと恥ずかしい限りだった。
「でもこの世界は魔族の巣窟じゃないか。まさか逃げずに戦うつもりですか?」
「今逃げたところで元の世界はエイリアンの猛攻にあうだけだ。」
「どのみち人類は滅びる運命ってことですか。」
「少なくともこの世界に入ることで人類はこの世界に見合う形に転生しロールプレイングできる。長年、人類が忘れていた進化を促進する作用がこの異世界の風土で行われるようだ。」
その仕組みもよくわからない原理でモヤモヤが残る。特にモヤモヤするのが先輩の転生が上級職の魔術師で、自分は魔物つかい(おもに害虫のみ)ということ。
むしろG郞にしてもバエチにしても立派なクラスチェンジを遂げている。元の害虫である事を知らないナナセは珍しいマスコットモンスターだと思い込みネズミのズミさんの頭を撫でるなどして可愛がっている。
自分はいまだ着なれないブカブカのピエロの格好にも文句に嫉妬をこめながら岩壁をムチで叩く。
「ところで、今どこに向かうのですか?」
「決まっている。魔族を相手にするなら頭を押さえる。」
先輩たちはこの世界を行き来して分かったことはこの魔族を束ねる王と王子の存在。王は現在不在のため王子であるマルセル=イム=ロードスがこの魔族の国を治めていると言うこと。そして魔族の王子マルセルは祖母であるギンササの見舞いするために定期的にこの僻地を訪れると言うことだ。だからその隙をつく。
目的の場所に到着してマルセルがやってくるのを待つ。ギンササの居住する青い屋根の洋館はまるで幽霊屋敷のようだ。そんなことに恐れることなく先輩がその門前で待ち構えると一頭の青い馬に乗った同じ肌を持つ男がやってくる。男は下馬するとその異変に気づく。
「よう。祖母コン王子。ちょっと話でもしようか。」先輩は臆せずに声をかける。
「人質をとったつもりか?」
王子マルセルは先輩の意図を見抜いているようだ。だとすれば話が早い。だが、マルセルは手持ちの剣を引き抜いて迫る。アスカ先輩は呪文で雷撃の矢を放つが敵は目にも止まらぬ速さでそれを避け、瞬時に間合いを詰めると一振りで呪文の元となる杖を払い落とす。それでも二人の視線はぶつかったまま離れることはない。
「貴様たちは俺たち人間界を狙っているのだろうが、すでに俺たちの地球には宇宙から侵攻を受けている。ここはひとつ力を合わせてその野望を阻止することから始めた方が良いんじゃないか?」
「ふん、たわけたことを!」
二人は争いながら交渉を続けた。そんな中に新たな魔族が割り込んでくる。ファラドスだ。
「マルセル様、加勢に参りまいた。」
「人間界への侵攻はどうした?」
「はあ、挨拶回りの際に一軒目の男に逃げられまして・・・。」
「まさか侵略のために一軒一軒挨拶回りをしていたのか?」
「魔界、人間界双方に関わる重要事態でありますから・・・。」
「・・・・。」
マルセルは部下の思わぬ行動を聞いて戦意を解いてため息をついた。
「貴様は優秀な義士であるが、少し律儀が過ぎるところがあるな。」
「はあ・・・、ん?あいつは!」
ファラドスは小屋の前に身構える僕に気づいた。咄嗟にムチを構えるが、先程からそれほどレベルアップしていない。緊張と焦りの汗をが湧いてくるのを感じる。
「やめろ!」マルセルはふたりの緊張をほぐした。
「計画は少し練りなおそう。人間界にも事情があるようだ。それに今日は祖母君さまの見舞いに来ただけだ。」
マルセルは戦闘で優勢な状況で剣を納めて洋館の方を仰ぎみた。そこにはナナセに付き添われてマルセルの成長に笑みを浮かべる祖母ギンササの姿があった。
自分よりも2年も前にこの世界に転生してきた先輩は突飛な計画を話した。至って真面目な話であるなので僕は話少し笑いを堪えながら聞いた。
この異世界に居住区を造り環境に配慮したモデルケースを構築する。僕が大学を離れてから研究所で進められていた計画でSDGsを目的とした自動車メーカーや通信事業などのスポンサーも多く出資しているという。
「お前が残っていれば、この世界の自然保護観察員として自然、地質、気候調査・・・。やってもらうことが山ほどあるというのに・・・。」
「要は使いパシリでしょ?いいかげん僕も先輩のいいなりでなくて自分で生きていきたいんですよ。」
「この計画の発案は俺じゃない。ナナセからのものだ。」
「えっ?」
僕は思わずナナセのほうを見た。彼女はこちらを見て少しペロッと舌を出しておどけた。真っ直ぐでキラキラした目をしている。エルフに転生しているからではない夢見る人間の目だった。アスカ先輩はいまだ表情ひとつ変えない。
「わたしでもできる事があるならしようと思っただけよ。」
僕はまた目を外した。先輩やナナセの壮大な計画に比べて自分の存在のなんと小さなことかと恥ずかしい限りだった。
「でもこの世界は魔族の巣窟じゃないか。まさか逃げずに戦うつもりですか?」
「今逃げたところで元の世界はエイリアンの猛攻にあうだけだ。」
「どのみち人類は滅びる運命ってことですか。」
「少なくともこの世界に入ることで人類はこの世界に見合う形に転生しロールプレイングできる。長年、人類が忘れていた進化を促進する作用がこの異世界の風土で行われるようだ。」
その仕組みもよくわからない原理でモヤモヤが残る。特にモヤモヤするのが先輩の転生が上級職の魔術師で、自分は魔物つかい(おもに害虫のみ)ということ。
むしろG郞にしてもバエチにしても立派なクラスチェンジを遂げている。元の害虫である事を知らないナナセは珍しいマスコットモンスターだと思い込みネズミのズミさんの頭を撫でるなどして可愛がっている。
自分はいまだ着なれないブカブカのピエロの格好にも文句に嫉妬をこめながら岩壁をムチで叩く。
「ところで、今どこに向かうのですか?」
「決まっている。魔族を相手にするなら頭を押さえる。」
先輩たちはこの世界を行き来して分かったことはこの魔族を束ねる王と王子の存在。王は現在不在のため王子であるマルセル=イム=ロードスがこの魔族の国を治めていると言うこと。そして魔族の王子マルセルは祖母であるギンササの見舞いするために定期的にこの僻地を訪れると言うことだ。だからその隙をつく。
目的の場所に到着してマルセルがやってくるのを待つ。ギンササの居住する青い屋根の洋館はまるで幽霊屋敷のようだ。そんなことに恐れることなく先輩がその門前で待ち構えると一頭の青い馬に乗った同じ肌を持つ男がやってくる。男は下馬するとその異変に気づく。
「よう。祖母コン王子。ちょっと話でもしようか。」先輩は臆せずに声をかける。
「人質をとったつもりか?」
王子マルセルは先輩の意図を見抜いているようだ。だとすれば話が早い。だが、マルセルは手持ちの剣を引き抜いて迫る。アスカ先輩は呪文で雷撃の矢を放つが敵は目にも止まらぬ速さでそれを避け、瞬時に間合いを詰めると一振りで呪文の元となる杖を払い落とす。それでも二人の視線はぶつかったまま離れることはない。
「貴様たちは俺たち人間界を狙っているのだろうが、すでに俺たちの地球には宇宙から侵攻を受けている。ここはひとつ力を合わせてその野望を阻止することから始めた方が良いんじゃないか?」
「ふん、たわけたことを!」
二人は争いながら交渉を続けた。そんな中に新たな魔族が割り込んでくる。ファラドスだ。
「マルセル様、加勢に参りまいた。」
「人間界への侵攻はどうした?」
「はあ、挨拶回りの際に一軒目の男に逃げられまして・・・。」
「まさか侵略のために一軒一軒挨拶回りをしていたのか?」
「魔界、人間界双方に関わる重要事態でありますから・・・。」
「・・・・。」
マルセルは部下の思わぬ行動を聞いて戦意を解いてため息をついた。
「貴様は優秀な義士であるが、少し律儀が過ぎるところがあるな。」
「はあ・・・、ん?あいつは!」
ファラドスは小屋の前に身構える僕に気づいた。咄嗟にムチを構えるが、先程からそれほどレベルアップしていない。緊張と焦りの汗をが湧いてくるのを感じる。
「やめろ!」マルセルはふたりの緊張をほぐした。
「計画は少し練りなおそう。人間界にも事情があるようだ。それに今日は祖母君さまの見舞いに来ただけだ。」
マルセルは戦闘で優勢な状況で剣を納めて洋館の方を仰ぎみた。そこにはナナセに付き添われてマルセルの成長に笑みを浮かべる祖母ギンササの姿があった。
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