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第五話「魔族VSジミオVS宇宙人!?」

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 僕たち人間転生組は魔族ゾデラルの居城に案内された。尖った山々に沿ったその姿はラスボスの居城にふさわしい。ここでようやくの休息が与えられた。
 マルセルはアスカ先輩とともに僕たちの世界に迫る宇宙人対策に関して議論を交わしているようだが、僕はすぐにでも休みたかった。

 (しかし、こんな魔城で休むことができるのか?)

 という疑念は邪推だった。見晴らし位のいい城壁に上に立ち赤い空を見上げると先に襲われたドラゴンが遊泳している。こうしてみれば可愛いものだ。自分もこうして自由に飛んでいたいものだと思いながらゴロリと横になる。現実世界では無数のUFOが侵略を開始していると言うことを考えればこの魔族の城の何と平和なことか・・・。

 「敵が攻めてくると言う宇宙とは一体どんなところだ?」

 暇を持て余す光景を見かねてファラドスが問いかける。

 「うーん、無数の星々が瞬いているが、暗い闇の世界が延々と広がっている世界かな。」

 「この魔界よりも暗いのか?」

 「そんなところもあるらしい。」

 ファラドスはこの話の何がツボかわからないが苦笑する。魔族の義姉にしては少し抜けた違和感のある男だ。しかし、ふと上空を見上げるとドラゴンたちにそれ以上の違和感を感じた。

 (何か苦しそう・・・。)

 魔物つかいとしての勘が働くのか上空のドラゴンたちが暴れるように動きを見せて飛竜同士がぶつかったりもする。よくみるとドラゴンは頭に異様な曲線形の器具を取り付けられ不気味に発光している。

 「いったいどうしたというのだ。」

 「まさか、異星人エイリアンか・・・?」

 そう推測すると、上空には無数のUFOがワープするかの如く突如として現れて褐色の空を銀色に覆い尽くす。すると暴れ出したドラゴンは一斉に落ち着きを取り戻した。だが、今度はその矛先をこの魔城に向けると一斉に火を放って攻撃してきた。突然の造反に魔族の兵士たちは慌てふためく。

 「ドラゴンたちよどうしたというのだ?」
 
 「まぁ、宇宙人の侵略は怪獣を操って攻撃すると相場は決まっているからな。」

 「怪獣?貴様、由緒正しきロイヤルドラゴンをそのように愚弄するか!」

 「異星人にも同じことが言えるのかよ!」


 異常事態を聞いてマルセルたちは正門の広間に魔族群を集結させる。その頃にはUFO群も魔城の鼻先のところまできた。悪魔の形相を持つ戦士たちにさらなる動揺が広がる。

 「狼狽えるな!迎え撃つものは我々だけではない。」

 マルセルは檄を飛ばしてさらに指示を下す。

 「城に残る者は敵からの防御に集中せよ!空の敵は我ら遊撃部隊が執り行う。やがて他国から我らが同志が援軍に駆けつける。それまでUFOの攻撃には城兵、全てのちからをあげて守りぬいてくれ。援軍が来た時こそ好機ぞ!」

 兵士たちの勝鬨が鳴り響く。いよいよ決戦の時が来た。敵のコントロールを免れたドラゴンたちを遊撃部隊の兵士が跨り一斉に戦場へ向かっていく。その先陣を切るのがマルセルだ。

 王子が出立した様子をみて老婆はくたびれながらも喜び勇んでいるようだ。

 「見よ!我らが次期魔族の王たる活躍を!」

 ナナセに付き添われながら老婆の声に周りの兵士たちはみな右腕をあげて鼓舞する。バエチたちモンスターも転生前のことを忘れて変わらずナナセの後をついていく。

  「言いたいことはわかっておる。すぐに他国から援軍が駆けつけるといっておったがあれはじゃ・・・。」

 「お婆さま、無理をなさらずに。」

 「あぁ、そうかもしれん。しかし、息子たちが己の存亡をかけて戦おうとしているのを黙ってみておれなんだな・・・。」

 「息子?でも、マルセルさんは・・・。」

 「あぁ、この城の主である魔王の息子だよ。そうわしがその役割を与えたのじゃ。」

 「!?」

 「あぁ少し出すぎたかもしれん。しかし、もはや王もかえっては来ない。この世界の魔物どもはみなわしの作り出した泥人形なんだからな・・・。」

 「どう言うことです?」ナナセは頭を抱えた。

 「この世界がこの他の星から攻められたことはこれが初めてではない。ワシがかつてこの国に仕えていた時も多くの命が奪われた。人が消え竜だけとなった時、ワシは時の王の頼みを受けて泥人形に秘術をかけ王国の代わりを築いた。」

 「ドラゴンに不信感を持たせないために・・・?」

 「そうじゃな。しかし、近頃はワシの魔力も尽きてきたようじゃ。必要以上に律儀になったり、祖母に甘えるようになったりと、魔族がこれではな・・・。」

 老婆は力なく苦笑する。
 
 上空ではマルセル率いる遊撃隊とUFO群と交戦しているが、敵に味方する洗脳されたドラゴンの攻撃に同族のドラゴンや兵士たちも戸惑いを覚えて戦列は乱れた。

 城壁ではUFOからの攻撃を必死にシールド魔法を張って防ぎ続けている。しかし、一度に5人の魔力を消費するので、交代制で敵が攻撃してくるたびに防いでいる。
 アスカ先輩も呪文によりシールドを作り、僕もムチにコツを掴んできた魔力を込めて遠心力の盾を作る。
 ここでの軍師であるファラドスは変わらず檄を飛ばすが、隙を見てアスカの隣に向かい尋ねた。

 「防ぎきれるとお思いですか?」

 「いや、このままではゾデラルは滅亡するでしょう。」先輩は顔色ひとつ変えずに答えた。

 「そうか。なら案内したいところがある。宇宙を知っているお二方なら適任であろう。」

 ファラドスはそのまま僕とアスカ先輩を城内へ案内した。敵による攻撃と火災で小刻みに振動を感じながら城の最深部に到達する。その扉は僕らの二倍の大きさにも達し、その扉をこじ開けた時シアターの幕のような厚手のヴェールが仰々しく張られている。

 「宇宙が永遠の闇の世界で続いているなら、これをお前たちに託してみようと思う。」

 ファラドス隠しているヴェールを取り払うと巨大な壺が構えていた。中を覗くことができるが、墨汁のようなものがボコボコと蠢いている。

 「これは全ての闇と繋がっている。お前が言っていた宇宙の闇というものに入ることができるのではないか?」

 僕たちは動揺した。だが、これに近しいものを頭に浮かび思わず呟く。それは先輩も同じだった。

 (クラウンの壺!)

 原理としては実現不可能だが、この存在はハッキリとそれであった。二人はその中に飛び込んだ。
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