女体化ヒモホスト×ホス狂い女

あかん子をセッ法

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 「そう、じゃ、遠慮なく」
 「は、いや、だからなんでお前がっ」

 裸体と裸体。一度離れて、再び重なる。

 最中、女の脳内で回想されるのは、彼がまだホストとして活躍していた頃の事。

 「ねえなんで? アタシだけって言ってたじゃない」
 「いや、仕事だし。分かってくれてると思ってたんだけどなー」

 ドライに合鍵を捨てて去ろうとする彼に、彼女は縋り付いていた。

 「お金! お金に困ってるなら私払えるから!」
 「そうは言ってもオレ人気だし」
 「いっぱい払うからぁ! 嫌いにならないでぇ!」

 同担は許せない。絶対に彼を独占したい。

 その為なら幾らでも貢いだ。お金が無くなっても紹介された風俗で必死に働いて、パパ活でも荒稼ぎした。稼いだ金で自分を磨いて、より稼いだ。そうし続ける限り、彼は自分を見てくれるから。

 彼女自身正気でないのは承知の上で、しかし、それでもやめられない程、どっぷり沼に嵌っていた。




 「う、んっ……は、あっ、あぁっ」

 そんな全てを投げ打って愛し育てた、自分だけの彼。

 「あっ、やっ、ああっ」

 それが今や、このザマである。

 「やめろっ、てぇっ」

 抱けば容易に腕に収まる華奢な身体は、少しの愛撫であちこちから甘酸っぱい雌の媚臭を放ち。
 その股間に指先を滑り込ませれば、おぼこい少女の如く喘ぐ。

 「あふっ、っ、んう゛ぅうっ⁉︎」

 蜜をたっぷり滲ませた割れ目は簡単に受け入れて、きゅうきゅうひくひく。痙攣しながら締め付け、腰をくねらせる。かつて彼に抱かれていた、自身の様に。

 「何? 挿れただけで甘イキしたのまさか」
 「うっ……ううっ、っ……ふっ、ふぅーーっ」

 冷淡に、尚且つ熱っぽく。彼女は「ざっこ」と吐き捨てた。
 反論は無い。代わりに返る「ふーーっ、ふーー~~……!」という快感を抑える様な吐息も甲高く、猛々しさは微塵も感じられない。

 「処女膜も無いし。どんだけ弄ったの」

 何だよこいつ。ほんと、今までの金返せよ。身体で返せ。

 愛憎が湧き上がる。止まらない。溢れ出る。
 今すぐ締め殺したい。滅茶苦茶に壊してやりたい。未だ薄ら笑いを維持しようとする憎たらしいその顔を、蕩けそうになりながら度々反抗心を覗かせる瞳を。屈服させたい。

 指が踊る。くちゅくちゅくちゅくちゅ、淫猥な水音が立つ。止まらない。止まらない。

 「はへっ、へっ、この、ぉっ」

 脚を閉じたりバタつかせたり、無駄な抵抗を諦めない彼は、のし掛かる重みが徐々に横に回って来ている事に気付き、今ならばと果敢にも彼女の乳房を弄ろうとした。
 が、くちゅり。挿れられた細長い指が鍵の様に先を曲げ、開錠するかの如く割れ目の中で捻られると、背筋がそっくり返り、腕は脇を締めるように動いてしまい、掌は空を彷徨う。

 「お、ふ、ぅううっ」

 体勢が整えられ、濡れて乱れた黒の長髪が掻き上げられる。かかれた汗が、揺れる豊かなたわわの先からぽたり、うねる彼の緩やかな曲線の谷間へと落ちた。
 綺麗な長い指先が再び舞い戻り、その汗を撫でて伸ばしながら、桜色に膨れた輪を撫でる。するとその中央で勃ち痼る小さな突起がぴく、ぴくと主張する。
 指の爪先はかりかり、かりかり。静かに優しくそれを掻いた。

 「ぅ、ん、んんっ」
 「自分のテクで開発しちゃってるんでしょ。こことか、こことかも」
 「っふぅ、ぅ、ひゅぐっ」

 走る甘美な官能に、彼は素直な反応を返さずにはいられない。背筋を逸らし、華奢な肩を小刻みに震わせ、秘部で挿れられたままの指先を抱き締める。

 「慣れてるつもりだった? こんなんで一方的に手玉に取れるとか思ってた?」

 全て自身で掘った墓穴だ。身体も、彼女も。
 だが彼の人生に反省の二文字は無い。どれ程腰を仰け反らせ、みっともなく喘ぎ、これ以上無い程の恥辱を噛み締めながらも、自身の立場の一切を受け入れず、その場限りの激情から不機嫌さを露わにする。

 「さっきからぁ、ひわせておけば」
 「ばっかじゃないの」

 俄かに釣り上がった眉尻は、「あぅっ」という情けない声と共に、摘まれた乳首から発火した快感に打ち下ろされた。

 「自分の思い通りに相手を動かそうとして、ダメだったらキレて。変わんないねそういうとこは」
 「ふうっ、うーー~~……!」

 懲りずに涙を滲ませ、まるで今にも噛みつきそうな小型犬の如く唸る彼。
 しかしそれも蜜壺の少し奥の上部、張り詰めて凝っている、少し凹凸のある部分に刺激を受ければ、すぐさま愛らしい嬌声に塗り変わっていく。

 「ま、だからダメなんだよ」
 「うっ、っ、ふぐぅっ」
 「相手の事を思ってる風で、結局独り善がりで……アタシよく言ってたよね、するとされるじゃ全然違う、って」
 「いいかげん、にぃっ」

 女がまた姿勢を横にずらしたかと思えば、くんっと、特に敏感な箇所に、最適な強さの指圧が加わった。 
 瞬間、「ふあ゛ぁっ!」と腰は目に見えて跳ね上がり、相手を責めるつもりだった手が飛んで行きそうな快楽を堪えようとシーツを掴んだ。

 「身体に教えれば分かるかな」
 「あっ、んっ、んんんんっ」

 女の手技は彼にされて善かった動きの模倣であったが、今、彼を快がらせる動きへと洗練され始めた。
 得てして彼の女体化以降のオナニーの刺激方法に辿り着くが、指は今や彼女の方が長く、刺激出来る幅は広い。
 自分が施してきた技を、自分以上の効果で再現される。気持ち良くない訳が無かった。

 「そこ、やめ……っお、んおおおっ!」

 末端の痺れ。足裏の灼熱感。ふわりふわりと飛んで行ってしまいそうな浮遊感。過ぎた快感により、彼の身は次々と異変に襲われる。
 脳天へ突き抜ける閃光。わななく手足の指。あからさまに声量が上がり、余裕が失われていく。

 「やめへっ、てばぁっ……ああぁっ!」

 言葉は上手く出ない。自身の嬌声に押しのけられる。
 顔の赤みが増す。呂律の回らない、考える余地もなく飛び出るそれらが恥ずかしくて堪らない。

 彼はシーツを離して、両手で口を押さえた。が、喉の奥でくぐもったり、鼻に掛かったり、全く解決しない。寧ろ踏ん張りが効かなくなるので、より状況を悪化させてしまう。

 「恥ずかしい声出してるって自覚はあるんだ。そうだよ、恥ずかしいんだよ。責められて、乱れちゃうと」

 嬉しい。もっと知ってほしい。

 なかなか得られなかった共感を得た実感が、女を心底感嘆させ、責め手は一層激しさを増す。

 「でもまだまだ。知らないでしょ? 女の子のカイカンはね、もっと深いとこにあんだよ」

 指が、奥へ奥へと伸びる。忙しなく捻る様に動きながら、少しずつ、彼の指の長さでは決して届かなかった所へ向かっていく。
 ぞくんっ、ぞわぞわぞわっ。腰骨から背筋を伝う快感の震えに襲われて、「あっ、んんんんっ」と悶えたのも束の間。遂に最奥に到達し、押された瞬間、彼の脳髄はスパークした。

 「んふぅっ⁉︎ っ、っぐぅっ⁉︎」

 瞳は白目を剥きかけ、火傷した様な足裏と脳天のひりつきを覚え、ぴんと一直線に伸びてから、再び引き攣りに悶える。
 「ほらね」と女。確信を持ち、見つけた弱点を指の腹で揺さぶる様に押す。

 「んううぅううっ……ふう゛うぅううぅっ」

 前後の振動で、彼の華奢な身体が揺すられ、嬌声までもが震える。

 なんかもれるっ、がまん、できないっ。

 暴れる腰が突き出されたかと思えば、ちゃっ、ちゃぽぽぽっ。水音が激しくなり、穿り返される割れ目から、飛沫が上がり始めた。
 尚も指は止まらない。溢れる水気と一緒に、弱点を掻き混ぜ続ける。

 「っ、っんんぅおおおぉ、おっ、おおぉっ、おおぉおおぉ⁉︎」
 「なっさけないなー。気付いてる? もうおちんちんの先から何にも出てないの」
 「はっ? ああぁっ、っんんんぅ!」

 嘘ではない。先の極少量の噴射を最期に、その豆粒大の先端は完全に液の漏出をやめていた。
 代わりに割れ目は一層堪え性を失い、大量の飛沫を上げている。惨めに痙縮して発せられる音の数々は、果たして断末魔か、それとも産声か。何れにせよ、完全に男としての性が絶たれた証であった。
 彼にそれを確認する暇はない。だが確実に、移ろい行く自身の感覚を突き付けられている。思わずにはいられない。そんな、まさか、と。

 「潮吹いて終わりじゃないの知ってんだろほら、がんばれ」
 「んにゃのっ、んっ、へあああっ!」

 自分でするのと人にされるのでは大きく違う。女の狙い通り、弱らされた身に教えが叩き込まれていく。
 腰が浮く。浮いたまま降りない。まるで其方にしか逃げ場が無いかの如く上へ上へと追いやられる。
 今は体重を掛けられていない。逃げようと思えば逃げられる筈なのに、股はただ情けなく開いて、指の動きに従ってしまう。
 
 「もおおああっ、んっ、んううぅうううぅ!」

 あっ、やばいやばいやばいっ、これだめなやつっ。

 再びシーツを握り締め、言葉にならない悶声を発し、彼は切迫を訴えた。
 自身の内で暴れる熱が飽和する感覚。女性的なオーガズムの予兆だ。
 知っている。初めてじゃない。ただ、感覚的には彼はもう先程からずっと射精に近しい物に襲われていて、理解が及ばない。

 でる?
 いやもうでてるっ。
 じゃあなにがでる?
 わからないやばいむりむりむり。

 「あ、もうだめな感じー? まあいいよ、イけ、イっちゃえ」

 既に溢れていた止め置けないものが、漏出すら追い付かず、とうとう内に収縮を始めた。
 下腹部が緊張する。彼の声は絞られ、そして止まった。

 直後、弾ける。

 「ぎゅっ⁉︎ ふっ、っ、ああぁっ!」

 情けない声が上がり、浮いた腰が一度、二度、ガクン、ガクンと大きく波打つ。
 男だった頃は勿論、女体化以降の自慰でも味わった事のない、深く鋭い絶頂。
 彼の身が、その奔流に振り回されている。

 「あっ、ああああぁっ……!」

 女の指を抱き締める割れ目が発火点となって、身体の隅々まで灼いていく。
 一瞬真っ白になった頭がスパークして、視界の端で火花が散る。
 収まらない。先のものよりずっと長い。

 おわっ、おわんら、あっ。

 腰は立つ力を失い落ち、尚も痙攣する。
 下腹が引き攣り続け、呼吸は整わず、思考も定まらない。苦しいにも関わらず、どうしようもなく心地良い。
 馴染めば、それはまるで湯船に浸かったかの様で、彼の焦点の合わない瞳が蕩けて落ちていく。

 女はそれを許さない。乳首がキュッと、つねられる。

 「ふぎゅっ」
 「ダメだよー寝て良いとは言ってないから」

 彼は絶え絶えな吐息のみを返す。表情にもう力はない。ただ未だ抜かれない膣内の指に俄かに弱点を押される度、苦しいのか切ないのかわからない形に歪む。

 「で、どう? ギブアップ? 弱過ぎて勝負になってないけども」
 「はーー……あ?」

 ぱーになった頭は、もうすっかりその事を忘れていたらしい。
 言われて思い出し、俄かに屈辱の色を取り戻す。

 「なんれ、だよ……だって、ひわなきゃ、いいんらろ……?」
 「じゃ、続けていいの?」

 が、問われると惑った。
 時間はまだまだたっぷりと残っている。この調子でヤられたら、自分はどうなるか。
 考えただけで遠い気分になってしまった。

 「っ、まって」
 「何? じゃあ言うの?」

 かといって、先に提示されたセリフを口にするのは憚られる。
 よしんば言ったとして、女と別れるにしても、その後どうするのか。

 打算的葛藤の末、答えは出せなかった。ただどうしようもなくて、「ごめん」と謝罪が口をついて出る。

 「は?」
 「いや、だっておれ、おまえと、わかれたくないし」
 「なら黙って耐えなよ」
 「でも、これたえるの、ちょっとむ」

 言い切られる前に、女は「女々しい」と断じて、媚肉を抉りながら指を引き抜く。
 「りぃっ⁉︎」っと声がひっくり返って、抱くものを失った割れ目からまた少し汁が噴かれた。

 「もう男失格だよ。身体以前に心が腐ってんじゃん」
 「そん、にゃっ」

 女は身体を起こして、ベットの横、灯るランプの下に置かれたタブレット端末を手に取り操作。部屋の壁際にあるモニターの電源を付ける。
 「なにしてんら」とふらつきながらも追い縋る彼。それを他所に女が何度かボタンを操作すると、卑猥な映像と音声が流れだす。
 彼は「……え」と凍り付く。映っていたのは、男の頃の彼がこの部屋で行った、彼女への裏切り行為の現場だった。

 「カメラなんて、つけてたのかよ」
 「そ、ずっと知ってたんだよ。単にアタシが都合の良い女だからここに居着いてるだけだって」

 随分前から、女は準備していた。彼が女体化していなかったのなら、恐らくこの映像はもっと早くに、違った形で当人に突き付けられていた事だろう。
 痴れ者の真っ赤な頬が引き攣り笑う。

 しらないと、思ってた。しってるならなんで。

 「いまさら、こんなのみせて、なにを」

 重々しいタップ音と共に、画面が切り替わる。今度は、女体化し始めた頃。彼がベッドの上で一人、小さくなりだした逸物を慰めているシーン。
 侘しい行為の中、独り言の様に呟かれるのは女の名前ではなく、別の女の名前ばかり。

 「別に好きでも何でもないんでしょ、アタシのことは」
 「はっ、いや、だからそれが」

 また切り替わる。今度は、先ほどまで行われていた自分達の情事の映像。
 改めて聴くには苦しい、情けない喘ぎ声が虚しく木霊する。

 「別れたくないのは、昔は金蔓だったからで。今は単にその身体で、一人で生きていくのが怖いから。違う?」

 絶頂の時とは違った形で、彼の頭は真っ白になった。
 従順で御し易い、野うさぎの様な女だと思っていた。それが今や見透かした様な、肉食獣の眼差しで自身を食い殺さんとしている。
 荒い息が整わない。か細い腕は何かに縋ろうとシーツを掴み、徐に後退ろうとした脚は滑って空回りする。

 動揺の極致。二進も三進もいかない。
 ごくり、唾を呑んでから、投げやりに言った。

 「わ、わかった、じゃあ、もう、おわりだ。わかれよう」

 そんなに断罪したいのなら好きにすれば良い。別れたいのならそうしろ。
 逆ギレ。或いは、今すぐ逃避したいという焦り。舌が回っていないのもあるが、その二つが前面に出た、あまりにも稚拙な態度であった。

 「えー、なんらったっけ? あー、はは。オレは、カレシしっかくです、もう女なんで、お前のあいてできません、ごめんなさい。へへへ、はい、こんなんでいいっ、んんっ⁉︎」

 この後に及んでへらへら笑い、未だ回らぬ舌で雑なセリフを吐き散らかす口を、女は唇で塞いだ。
 舌を入れ、歯茎を、上顎の裏を舐ってから、困惑して泳ぐ馬鹿な舌を絡め取りしゃぶる。
 彼は反射的に噛んで撃退する事も出来た筈だった。しかし、その頭は既にたっぷりと快感に浸されており、与えられる更なる快感に抗えず。短絡的に対抗心を燃やすも、面積で劣るピンクの粘膜は、間も無くされるがままになる。

 きす、こんな、きもひっ、いぃ?

 音も感触も、脳髄に直に響く様な、深く濃密なキス。
 気持ちは真反対にも関わらず、安堵と多幸感が押し寄せて来る。
 こんなキスは知らない。知りたくもない。けれど、あまりに気持ち良い。

 主導権を握られ、犯されるという未経験が、彼の根本を崩壊させていく。

 「んっ、っ、っは」

 ちゅはっと吸い出された舌が、一度離れる。
 彼の方は出たまま戻らず、戯言の様に「にゃっ、れ」と震えた。

 「はっ、ほんと、バカだねー」

 なんでこんなの好きなんだろ。
 なんで、こんなに────

 「んひゃっ」

 弛緩し切った弱者の身体が、簡単に押し倒された。
 ささやかな膨らみに、豊かな女肉が押し付けられ、お互いの形は潰れながら、小さい方が包まれて見えなくなる。
 さながら捕食行為。自然界の営み。しかしそれは似て非なる蹂躙であり、満ちて溢れるのは快楽ばかり。

 ぴくん、ぴくんと愛らしく震え、内腿と両脇は締まり、抵抗する筈だった両掌が泳ぐ。
 逃げる暇もない。その両掌には指が、締まる内腿には脚が絡められた。必然股倉同士が重なり合い、淫蜜塗れの敏感な突起が擦れ合う事で快感の火花を発す。
 「んあっ」と跳ねた悶声が、発せられた側から喰まれた。絶頂後の汗ばんだ敏感な素肌が、柔らかな体温に隙間無く包まれて灼けつく。蕩かされる。

 「は、セリフ、ぜんぜん違うしっ……ふっ、“言わずにいられたら別れないでいてあげる”って言っただけでー、言った時具体的にどうするかは、何も言ってないよ?」

 息継ぎで離れれば、その間に、途切れ途切れに言葉が紡がれた。
 淫蕩させられた頭には、そんなややこしい意味など理解出来ない。「っんらろっ」と訳も分からず反論しようとするが、忽ち取り留めを失ってしまう。

 「んっ、んんんっ、んんんぅっ……ふうぅっ! ふっぐ、っぅ゛うっ」

 達してもいないのに、それに近しい絶頂感に苛まれ、彼は度々激しく切なげな息を漏らす。反抗の意思が保たない。恐れも猜疑心も、快感の泥濘へ沈んでいく。
 女はまだまだ容赦しない。上はお互いの唾液を念入りに混ぜ、熱くてとろとろの粘液を口内に作り、下は彼に鍛えられた淫らな腰使いを存分に発揮して、薄紅の粘膜を快楽漬けにする。

 ちゅっじゅ、れろはふ。くにくに、くちくち。絡まったり、解れたり。繰り返される。濃厚で粘度の高いキスの音が、濡れた股同士の交合音が、何度も、何度も何度も何度も。

 「っはぁっ、はーー~~……!」
 「ふっ、っ、はぁ……ま、カレシ失格は、その通りだから。しっかり引導、渡しとくよ」
 「はぐっ、んっ」

 意地の悪い言葉責めが無くなり、更にギアが上がる。

 「っ、は、んんっ、ちゅっ、くちゅっ、ちゅっ……んんんっ!」

 すっかり甘くなった彼の嬌声が、恥じらう余裕すら失って上擦った。
 限界だ。息苦しさと官能で顔は真っ赤に茹で上がり、頭に霞がかかり、意識が遠去かっていく。

 「んむっ、っ、ちゅっ……っれろ、っ、はふっ」

 女もそれは同じ。だからこそ際限無く、果てへ向けて突き進む。

 まっ、もうむりっ、しぬっ、し────

 「ん゛っ⁉︎ っ、んぅう゛っ!」

 女の下で、その身はくの字に折れ曲がり、強く深く引き攣った。
 その都度女の舌先が、腰が応じる。密着が解かれない様に、丁寧に、丁寧に。動きを合わせる。同時に身を震わせ、閉じた瞼の裏で意識を白黒させながらも、決してやめない。

 やがて力尽き、彼は動かなくなる。女は漸く「ぷあっ」と口付けを解き、上体を起こした。

 甘美な銀の糸が引き、撓んで、はたと途切れ落ちる。
 影が引き明らかになるのは、艶やかに蕩け切った彼の尊顔。

 放り出されたままの舌がひくひくと震え、絶え絶えの吐息はつるりとした喉の出口、鼻から入る空気と交わる場所で枯れて、耽美な音色を発す。
 長いまつ毛を生やした瞼からか細く覗く、焦点の合わない大きな瞳は、涙を湛えて蕩け、今、こめかみに張り付いた短く柔い頭髪へ向け流れ落ちた。

 「ぅ、ぁ……」

 瞬間、不意に浮上した彼の意識は、自身へ向けられる愛欲に塗れた恍惚の笑みを捉え、漸く己が運命を悟る。

 交わる吐息。合わせて揺れる、カラダとカラダ。
 擦れ合って、突起同士が稀に引っ掛かれば、忽ち快楽の火花が散って、身は強張り、シーツの擦れる音がする。
 いみじく息を吸い込めば、鼻腔に届くのは酷く淫猥で甘酸っぱい女蜜の香りばかり。

 無意識に最奥が締まり、その度下腹部からは茹だる様な淫熱が搾り出され続ける。全身はその熱に浮かされたまま重怠く、思考はいつまで経っても纏まらない。
 冷めそうにないどころか、更なる深みを予感させられ、絶望し、恐怖し、震える声で懇願した。

 「ご、ごめ……らさ、ひ……」
 「んー? 何について、あやまってんの?」

 女は自身の余韻に浸りつつも、それをおくびにも出さず、ギラついた目でとぼけて、彼の秘部へ再び指先を侵入させた。
 解れた蜜壺は案の定、あまりにも鋭敏で、核心を握られたかの様な衝撃を彼に与える。
 最早耐えられる余地も無く、舌を突き出して「ひあっ、ああぁっ」とだらしなく喘いだ。

 「沢山あり過ぎて、分かんないんだけど」
 「あっ、ぜんぶっ、ぜんぶ、ごめ、んんっ! もう、ぜったひ、しにゃぃ……うらぎらなぃいっ! っ、らか、らぁっ、おねがいぃっ、ゆるし、てぇっ」

 打算皆無の、必死の謝罪。
 何でもいいからとにかく許して欲しい。でないと、壊れてしまう。
 結局の所、それもまた自分勝手な動機で、受け入れられる訳が無いかに思われた。

 「いいよ」

 優越感に痺れる女は、少し身を揺すってから、甘優しく肯定した。

 「へ、ぇ?」

 彼は驚いた。しかし直後、その耳元に囁かれる。

 「その代わりに────」

 彼の瞳が揺れて、また新たに涙が滲む。
 その色は安堵か、それとも悲嘆か。

 「ふふっ」
 「っあ」

 首筋へのキス。軋むベッドの音。

 「────」

 久方振りに呼び合われる、二人の名前。

 夜の闇に、嬌声が溶けていく。
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