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18.某日後編 残骸
しおりを挟む「ぁ゛あっ……!」
抵抗を失った肉の棒は一気にズンっと腹奥まで滑り込む。激痛が走り、自身の喉からは一瞬断末魔の如き金切り声が上がるも、圧迫感ですぐに途切れて呻き声に変わった。
腹部が下から押し潰されて息が吸えない。涙ながらに口を大きく開け吸おうとするが、それを彼の唇が塞ぐ。
「ん゛っ……ううっ……」
酸欠で視界が眩んで、末端が痺れて痛みが誤魔化されていく。その朦朧とした中で今一度、密着したまま先程行われていた頭を溶かす作業が行われ、強張った全身が解かれた。
「っは……大丈夫か……?」
気遣う声と共にまた頬が撫でられる。酷い事をされている筈なのに、大事にされている実感で胸が一杯になって、強がる言葉が出てくる。
「ぅ゛ぅ……いたいし、くるしいけど……がまん、できる……」
いやだ、もうやめたい。やめてほしい。
今一度額にキスされて、頭を撫でられた。これ程までに人に求められ、愛された事は無い。幸せが滲み出す。
「大丈夫だ。暫くすれば痛みは引く。心地良くなってくる」
「う、んっ……!」
いやだ、そんなわけないっ……!
ふわふわすりすり、愛情たっぷりに両胸が愛撫される。すると重い鈍痛の中、再びこそばゆさに近い快感が背筋を走り、腰に伝達して甘く痺れ始めた。「うっ、ふぁっ……ぁぁっ」と、恥ずかしい声が漏れれば、そこにまた唇が蓋をして、舌と舌が絡められる。
うぁっ、すりすりやばいっ、した、くちゅくちゅっ……おなかっ、ひびくぅっ……!
いやだっ、きもちわるいっ、きもちわるいぃっ……。
刺激で下腹部が痙攣して締まる様に動けば、自ずと刺さっている物の輪郭が浮き彫りになっていく。太くて硬い、熱く脈打つ強烈な異物感が窮屈な肉の輪を押し広げている様が鮮明に意識出来る様になる。
「これっ、ほんとにはいってっ……ぁっ、みゃくうってるっ……!」
いやだいやだいやだっ、ぬいてよおねがいぬいてぇっ!
彼は「落ち着いてきたかい?」と今一度投げ掛けて来る。確かに、感触がはっきりしてきてから刻一刻とそれが馴染んでいくのを感じるし、身体の余計な力も抜けて楽にはなってきた。
けれど、それに反比例して加速度的に余裕が無くなっていくのが分かる。
「わかんなっ、いっ……なんか、むしろっ、そわそわしてっ……あぁっ!」
「そうかっ……」
返事をした直後、ゆっくりと中のそれは動き始めた。
「後は任せて……委ねなさい」
ぬろぉーっと引き抜かれ、肉の輪が引き摺りだされて捲り上がったかと思えば、ずぶり、また奥へと沈められる。うっ、と声が漏れ、同時に痛みを感じていた箇所のより奥が灼け痺れた。
「ぅっ、ぅっ、ふぁっ、ぁっ」
おかしいよこんなのっ、まってっ、これだめだってっ!
「っあっ、あああっ……!」
徐々に加速して、力強くなる。ぱちむっ、ぱちむっ。最奥を突かれて、その度濡れた肌同士が打ち合い、吸い付き合って卑猥な音が鳴る。合わせて自分の口からも意図せず艶っぽい声が押し出されて、相応の雰囲気を醸し出す。
「あっ、ぅっ、ぅあっ、あぁっ!」
やめっ、てっ、ぇっ、っ……!
一突き毎に何やら腹奥から発火し、身体の芯を衝撃が駆け上がって脳天を突き抜ける。深くて重い。自慰の時に生じる物とは似て非なる物だ。それもまた少しずつ強くなって、次第に無視出来ない程に中枢を灼き始める。
「んぁっ、ぁっ、あっ、はぁっ、ぁっ、っあ゛」
やぁっ、っ……っっ…………。
流石に怖くなって相手に視線を送った。が、彼の瞳はより強烈な興奮の色しか返さず、止まるどころか寧ろ一層激しく、情熱的になる。
「あっ、んっ、んっ、んんっ、んぅっ、う゛ぅっ!」
裂かれた心身が溶かされ、掻き混ぜられる。苦痛が快感に変わって、脳髄が暴力的な多幸感に支配されていく。何も考えられなくなる。
響く卑猥な声と荒々しい息遣いと、粘質で空気混じりな衝突音が、閉所で立ち込める、むせ返る様な性臭に包まれて一つに溶け合う。次第にそれ以外は何も感じ取れなくなって、そして「うっ! くっ!」と彼のこれまた聴いた事の無い様な切羽詰まった吐息が漏れたのを合図に、ずんっとこれまで以上に深々と挿し込まれたその時。
どくっ!
熱い肉棒は膨張し、内側から圧迫された下腹部が前方向にぐっと張り上げられた。かと思えば数秒後、ぐっ、ぐっ、ぐっ! と激しく脈打ち暴れ、その先端から灼熱が噴出される。
「あ゛っ、っう゛うぅっ────」
その度視界は明滅して、遂には真っ白になった。灼けつく白光が、脳裏で飽和してしまった。
天にも昇る気分とは正にこの事かと、そう思わずにはいられなかった。本当に、そのまま死んでしまうのではないかとすら直感して少し怖くなる程、気持ち良かった。気持ち良くなってしまった。
後になって分かる。結局の所、この時、この瞬間に僕は死んだのだろう。
頭の天辺から爪先まで多幸感一色となる中、ゆっくりと降下する。その過程もまた格別で、滲み出る異常なその快感を噛み締める。二回り程大きな相手の身体を腕と脚でぎゅっとするとより強く滲むので、強く強く、逃がさない様に巻き付け、抱き締めた。
どくどく腹の奥、注ぎ込まれた灼熱が満ちて、股の外に溢れ出す。
「っあ…………はーっ……」
これ、だされたんだ……。
過ぎる妊娠の二文字は、自身が男故の現実味の無さと余りに深い余韻の中、再びの口付けによって掻き消された。
「んっ……っっ……っ~~……」
こういう時キスをする意味が分からなかったけれど、理解させられてしまった。ただただ、こうすれば気持ち良くなる様に出来ているのだと。
受け入れ、自ら舌を絡めてしまう。ちゅっ、じゅっと音が立つ度、脳が痺れる。息の続く限り乱暴に舐られて、最後にちゅはっと離されれば、此方の口元はだらしなく舌を出したままになった。
「はー……はー……」
なんでやめちゃうの……? もっと……。
惚けた自分は半ば無意識にせがむ様な眼差しを相手に向け、その顔にゆっくりと焦点を合わせた。
瞬間、一気に醒める。「えっ……」と思わず声まで漏らしてしまった。目の前の彼の表情が、何故か急に冷たく、冷酷な物へと変わっていたから。
「っ、なん、でっ……っ……!」
そう口にすると、その瞳は震え出し、涙を溢れさせながらみるみるうちに血走っていく。尚も能面の如き表情は動かない。が、毛が逆立ったかと錯覚する程の怒りと悲しみが伝わって来て、戦慄すると同時に困惑せずにはいられなかった。
理解が追い付かず硬直している隙に彼の手元は此方の首筋に伸び、掴んで締め上げて来る。爪がめり込んで激痛を発する程に強く、強く。
「い゛っあ゛っ……っ……!」
急速に薄れ行く意識の中、唐突に訊かれた。
「お前は誰だ……?」
「っ、ぇ゛っ……?」
何を今更な質問で、訳が分からなかった。貴方がこうしたのだろうに、何故そんな事を訊くのか。
もっとも、何を思おうと返事は出来ない。もう事切れる。
予感した直後、寸での所で首元を絞める手は投げ捨てる様にパッと離され、うつ伏せになる様に転がされた。気道が急に開いてゲホゲホと咳込む最中、今度は背後から乱暴に胸を握られる。
「げほっ! っ! い゛っ!」
「誰だと訊いているだろっ……!」
更に、挿入されたままの肉棒が強く、強引に最奥に突き刺さる。いずれも先程までとは全く異なる、愛のない暴力だ。
「がっ、あ゛っ……!」
最中、姿見に映る自身が視界に入り、理解した。
────ほんとだ。だれだろ。
首を絞められている中、母とはかけ離れた豊かな乳房を揺らしながら苦悶とも恍惚とも取れる表情を浮かべる少女は、おおよそ誰とも似つかわしくなかったのだ。
「……っ、ごめ゛っ……んぐっ!」
訳も分からぬまま許しを乞おうと口を動かしたが、言葉を出す前に再び首を絞められた。そして腹を突き破りそうな程の抽送運動と並行してまた意識を失う寸前まで追い詰められた後、解放される。
「かはっ、っはぁ゛っ! ゆるしっ…………!」
誰だ、誰だと常に譫言の様に訊いてくる。その癖返答を許す素振りは全く無し。此方が何か発言の意思を見せようとするだけで締め上げられ、嬲られる。かと言って言葉を閉ざせば、それもまた気に食わないらしく更に激しい責め苦を受ける事になるので、結局ごめんなさい、ごめんなさいと、気が遠くなる程に延々と、壊れたレコードの様に繰り返した。
そうしている内、フッと気がつくと、ベッドの上、先程までの自身と同じ様に謝罪の言葉を連呼する彼に強く抱かれていて、ああ、終わったんだなと悟る。お互いぐちゃぐちゃでボロボロのまま絡み合ったその様は、まさに残骸と表現する他無かった。
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