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 クチュクチュグチュグチュ。闇の中、不快な音は止まない。穿られ続ける穴という穴、蝕まれ続ける肌、灼けた感覚のその内外を肉が這い回っている。それが続けば続く程、蕩けて境界が曖昧になった身体の輪郭の一部から何かが吸い出され、矮小化していく。

 「ぁ゛…………っ……」

 あれからどれくらい経ったのか。身体の感覚だけでなく時間の感覚も完全に狂ってしまった。無限にも思える時間の中ただ只管に嬲られ、終わりを諦めた精神は浮かんでは沈んでを繰り返し、ただただ朦朧と揺蕩うばかり。希望や絶望といった明暗さえ見出せない。

 最中、不意に光が差し込んで徐々に開ける。ボヤけた網膜は徐々にピントが合って、怪しい光の中を浮遊する淫魔の姿を捉えた。そしてするとずるずるんっと鼻の穴と耳の穴から触手が抜けていき、濃密な淫臭が疲労し切っている筈の濡れた鼻腔を擽り、甘い艶声が鋭敏になった鼓膜を揺らす。

 「んフフ、どーオ? どんな気分?」
 「ふーーっ……! うっ、ぐうううっ……」

 返事は出来ない。未だ口は喉奥まで塞がれている。

 「ヤバいだろうねェー、アタシここまで虐めたの初めてだからソーゾーできないゾ❤︎」

 嬉々として淫魔は頬擦りした。身体に纏わり付く肉もその動きに合わせて蠢き、ここが彼女の領域である事を嫌という程理解させられる。反応したくないのに、一々悶えてしまう。

 「さあ、どーなってるか……一緒に見てみヨー!」

 ノリ良く語尾の上がった「ご開帳ー❤︎」という掛け声と共に、身体中に纏わりついていた肉が上から順に剥がれていく。ぐちちちちっ。かさぶたを剥がす様な、形容し難い痛気持ちい刺激が極大の規模で生じて、脳は揺れ、身は仰反った。それを「ダメだよちゃんと見なきャ」と淫魔。肉を操り、僕の視線を強引に足元に固定する。

 「んぐっ、お゛ぶっ、っ! ごはっ! はあ゛あああああっ!」

 口元を塞いでいた肉が剥がれ、口内から引き抜かれた瞬間、未知の快感が爆ぜた。忽ち視界は白み、喉奥から吐瀉物混じりの悲鳴が上がる。甲高い、少女の様な悲鳴が。

 「あ゛っ……え゛ほっ、ぐっ、うぐ、う゛ううううぅ……!」

 誰の声かと確認する間も無く、股間を含む下腹部を包む肉も剥がされ、更なる鋭い衝撃が全身を貫いた。ぷぴゅっ! と色の薄い、サラサラとした濁り汁が噴水の如く噴き上がる。腹筋が痙縮し、「ふっ、ゔふっ、う゛ううううっ、ゔうううううぅ……!」と残りの息が咳と共に吐き切られていく。

 「うううぅっ……げほっ、え゛ほっ……ふううぅっ……ふうぅーっ……」

 あ゛っ……なに……これ…………?

 涙で滲んだ視界が明滅する中、異変を見つけた。どういう訳か、臍の下辺りがじんわりと光っている。いや、それだけではない。光に目が行きがちだが、全体的なシルエットも、空気に曝された全体の感触も全ておかしい。

 「アハッ! かーわいッ!❤︎」
 「ゔ…………ふっ、ゔう…………⁉︎」

 幾度か瞬きするとハッキリとして、驚愕する。怪しい光に照らされ艶めく自身の肌。その輪郭が、細く柔らかで、少しふっくらとした物となっている事に。

 「はっ……あ゛…………⁉︎」

 しかも、あれだけ赤く大きく張り上げ主張していた僕の逸物が、なんと子供の頃に戻ったかの様に小さくなって、淡い色をした皮かむりの状態になってしまっている。今まで感じた事がない程にピンッと張り詰めて、脈打ち、熱く痺れているのに、前の四分の一程のサイズも無い。

 「ほら、スゴくない? あんなにおっきかったのが……」

 淫魔がその華奢な掌で「こんなにちっちゃくなっちゃったァー♡」と玉袋の裏から持ち上げて来るせいで、否が応でもその小ささが分かる。というか……別に逸物に限った話じゃない。僕の身体、全てが幼くなっている様だ。明らかに自身と比べ淫魔が大きくなっているし、僕の声や息遣い自体がもう幼子そのものだ。

 「ゔっ……ふぐっ……!」
 「あっ、また泣くノー? ダメでしょー男のコなんだからサー❤︎」

 惨めさで溢れる涙がポロポロと淫魔の方に落ちていく。それを余計助長する様に、掌は幼くなった玉袋をよしよしと慰めて来る。
 酷く惨めな気分だ。死にたい。心の底からそう思った。なのに、ぞくり。転がされる陰嚢からまた官能の波が押し寄せる。

 「くっ、ひぐっ……」

 幼子と表現したけれど、やはり体感は全く幼子ではない。呼吸で身体が揺れる度、胸の先や竿先、腹の奥が切なく張り詰めた感じがする。

 「っ……ふうぅっ……」
 「まあ、もうすぐオシマイなんだけどネー」

 とその時、落ちる涙粒の内の一つが偶然、ちんまりした竿先に当たった。

 「ふあ゛っ!」

 ゾクンッ! 電撃が腰骨を突き抜け、背筋を伝い脳髄に響く。腰がびくっと跳ねて、また甲高い悲鳴が空間で木霊した。

 「あ゛っ……ふあ゛ああぁ……!」
 「アハハッ、ヤーバそー❤︎ あれだけアタシの催淫液に漬け込まれてェ、その上ふっかぁー……くッ、淫紋刻まれちゃってンだもんネ❤︎」

 下腹部に刻まれた痛々しい紋様が怪しげに明滅し、ズクン、ズクンと、まるで第二の心臓になったかの如く脈動して、狂おしい程の疼きを全身に伝えていく。

 「ふぅっ……ふざける、な……もとに……もどしぇっ……っ!」
 「戻す訳ないじゃーン、なっさけない声でなに言ってんノー?」

 陰部を弄ぶ手指がつぷり、手近な肛門内に挿れられた。身体が縮んだせいか、それだけで苦しくなって「あ゛っ、お゛っ……!」とまた息が詰まる。が、当然相手は気にしない。深々と根本まで挿し込んで、内部を捏ねくり回す。

 「くお゛っ……お゛おおおぉっ……」
 「戻すどころかァー、もっと進んで貰わないとイケナイんだケド❤︎」
 「も゛っ、もっと、おおぉ……?」

 艶っぽい声が「そ、モット❤︎」と呟くと、挿入された指先に更に力が入れられて、最奥、何かコリっとした部分が押される。刹那、

 「ん゛っ、お゛おおおおおおおおおおおおぉ……! 」

 先程よりも深く重い衝撃が生じ、脳天を突き抜けた。気を失いかけるも、向こうはそれに飽き足らない。こりゅこりゅこりゅこりゅ、痼りをしつこく責め続け、その上で空いた手を使って逸物の皮を扱いて来る。

 「はっ、お゛っ、くお゛っ……おお゛っ……!」

 衝撃が連続し、深刻な痙攣によって脳内でバチバチと閃光が明滅を繰り返す。最中、またぷぴっと竿先から汁が飛んだ。小水ではない、とろんとした汁だ。それが痙攣に合わせて飛んでいく。

 「子供みたいな見た目で、子供が出しちゃイケナイ声一杯だして……ぜーんぶ抜くんダヨ。今までニンゲンのオスを形作ってた要素、全部を……こーやってネっ」

 すると淫魔は汁を噴く一口サイズの陰茎をぱくり。口に含んで、飴玉の如く舌で転がしたり、ちゅぽちゅぽと吸ったりし始めた。
 
 「お゛っ、お゛っ、お゛おおっ……!」

 舌先が先端に触れる度、尻の奥の痼りを弄られる度、粘膜が灼け痺れて苦しくなる。今までの物理的に与えられてきた苦しさとは違う。本当に快感が強過ぎて息が出来ない。その上空いた手でずっと張って苦しかった乳首をつねられると、獣みたくみっともなく吠えて、涎を垂れ流してしまう。

 これ、むりっ、死────

 「お゛っ、ぉ゛っ、っ…………!」

 訪れる死の予感。最中、ぎゅうううううっ、バネが縮むが如く痙縮し、そして、ビクン!

 「っっ! っっっっ~~~~~~~~!」

 今までとは質の異なる弾け方をして、心身は高みへと飛び跳ねた。ビクビクビクビク、痙攣して、ぷちゅっ、ぷちゅっ。淫魔の口内で、竿先からまた殊更にサラッとした感じの吐精が行われる。水っぽい故、まるで普通の飲み物の如く簡単に、喉を鳴らしながら飲み干されていく。

 「っっ……んぉ゛っ……っ~~~~……!」
 「ンーー……じゅっ…………んんーー?」

 もう一滴も出ない。そんな状態になっても、尻穴の奥の痼りをぐりぐりされたり、張った乳首をつねられたりするとまた出て来て、強引に吸い出される。やめてくれ、もうやめてくれという願いも、残る反逆の意思一滴すらも残さず吸い尽くされる勢いだ。
 こんな事続けられたら幾許もなく死んでしまう。そう思った。しかし吸われれば吸われる程、陰嚢や頭の中から活力を含む何かが失われていく程、空になった分を脈打つ淫紋から与えられる熱と疼きが埋めていく。そのせいでどんなに死にそうでも死ねない。完全に空にはなってくれない。

 「ん゛っ……っーー、っ~~~~…………」

 そんな生殺しの地獄が繰り返された末、遂にちゅぽんっと口が離れた。

 「んっ……フゥ。この方法ではこれがもう限界カナー」

 淫魔は口惜しそうにそう言いながら、ツーっと下から此方の腹部の淫紋に舌を這わせ、未だに肛門に挿れっぱなしの指を動かし反応を伺ってくる。

 「ん゛っ……っーー…………」

 気力も体力も残っていない筈なのに、淫らな熱だけは満たされているお陰か。僕の身体はキチンと跳ねて返事をする。
 その様子に、淫魔は満足げに微笑んだ。

 「うム、よろシー。これでもう殆どキミは男として死んダ❤︎」

 虚なまま相手をただぼーっと見つめる。言葉の意味を考える余裕はもう無い。

 「後はアタシの魔力を受け入れて眷属化するダケ❤︎ ……なんだケドー、ごめんネ、アタシまだキミの事許せてないンだワ。もーちょっとダケ、意地悪するネ」

 パチンッ。指が鳴らされ、周囲は薄紅色の光に包まれた。
 
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