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2.短期集中女の子講習 クズ、女の子の努力を学ぶ

身嗜み3

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 ただ堂々と教える宣言した直後で格好は付かないが、自分に他人のメイクを弄る様なセンスは無いというか、そもそも化粧選びをかなりマイに頼って来たせいで実は知識が無い。なので事前の計画通り、ここからは彼女の力を借りる事にする。

 「はぁ……」

 が、開口一番、マイは怪訝な顔で溜息を吐いた。

 「ご、ごめんねマイ……こんな事任せちゃって」
 「いえ、任された事に対しての不服はありません。このクズの顔に対してです」

 そしてクズの顔を指差し言う。

 「お嬢、昔のお嬢にも言った気がしますが……こんな小娘顔に化粧は要らないんですよ。化粧とは若々しさや大人っぽさ等の印象を齎し、個人の良しを伸ばし悪しを打ち消すものです。良しも悪しも未だ無い、若々しさが過剰で鼻に付く顔面に何かをしても上手くはいかないんです」
 「は? 好きでこうなった訳じゃねぇんだけど⁉︎」
 「あ、あはは……」

 どうやらプロ根性的に許容出来ないらしい。とはいえ、嫌々ながらも彼女はスパルタ指導を開始する。

 「まあでも仕方ありません。ガキ丸出しで馬鹿っぽい顔面を少しマシな知性を感じる大人っぽい顔面にする為には、コレとコレ。あとコレを」
 「は? いやいや待て! んな一杯無理だって!」
 「黙りなさい。手間がかかるのはそれだけ貴方の顔面に問題があるという事です」
 「そこまで言う⁉︎ ってか一杯あり過ぎて覚えられねえよ!」
 「全て覚えろとは言いません。ただ使う物の種類と手順、使い方のみを叩き込むだけです。まあ概ね網羅する事になるでしょうが」
 「はぁ⁉︎」
 「さあまずはファンデーションを」
 「無理無理無理だって!」
 「大丈夫、そういうの、お嬢で慣れてますからっ」

 あー……アタシもこんなんだったわ……。

 昔の自分と重なって複雑な気分になりつつも、その過程を生暖かく見守った。

 そして____

 「っ、おお……」

 完成した自身の顔に思わず感嘆するクズ。事実、首から上は見違える程に大人っぽく美しくなり、児ポ法に引っ掛からない程度の見た目へと変貌した。鏡に写る自分を見て「オレ、このコ嫁にしたい……」なんてさぶいぼの立つセリフを吐いている所で現実に引き戻されるが、黙っていれば本当にその辺のアイドル以上というか、芸能人と言われても納得してしまいそうな程華がある。

 尚、マイは余韻冷めあらぬ内に無情にも「では次、化粧の落とし方についてレクチャーします」と告げる。

 「え゛っ」
 「えじゃありません。落とし方も重要です」
 「いや、なんつーかもうちょい……」
 「口答えも甘えも許しません。これから毎日繰り返し行なって習慣付けていくものです。一度に覚えて下さい」
 「は、はひ……」

 そうして彼はその日から三日間、私とマイの開いた時間で女性としてのルーティンを一通り叩き込まれた。



 「付け焼き刃かもだけどまあ、このくらい出来れば合格だろ」
 「そうですね。覚えが早くて助かりました」
 「……はぁ」

 ムカつくけれど、紛いなりにも優秀らしい。然程苦労せずに彼は全て自分でこなせる様になった。

 「で? 合格でどうなんだオレは」
 「作法は全くなってませんが、まあ形になっただけ良しとしましょう」
 「だね……じゃあ、申し訳無いけど後お願いしても良い? アタシもう限界。一刻も早くコイツの居ない生活に戻りたい」
 「承知しました。私も同意見です、早く済ませましょう」
 「えっ、なっ、なにやめっ、っ!」

 彼はマイの手によって眠らされ、運ばれていく。手際が良過ぎて身の毛がよだったが、まあそれは良いとして。何でもこの後そのまま父の経営する娼館へ連れていかれ、住み込みで働かされるんだとか。なんか迷惑かけそうで嫌だな。
 
 私はそれを見送った後、ぐったりと壁に寄りかかって項垂れる。

 ……これからどうしよっかな。
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