144 / 149
恋と仕事と
第30話
しおりを挟む
※お詫び
いきなり最終話をアップしていたことが判明し、おわーおわーと焦って、うっかり削除してしまいました(泣)
もう一度下書きには戻せなかった・・・、栞はさんでくださった方、本当に申し訳ないです。
下書きからもう一度1/3に更新できるよう準備を致しますので、何卒ご容赦下さい。
■□■
ノアランのささやかな願いを聞いて先代王妃、表舞台から姿を消した王太后は大変に喜んだ。
数日後に開かれたと王妃それぞれの茶会では、城のパティシエの菓子に加え、実績が浅いどころか開店したての『カメリア』の菓子が出され、評判になる。
その美しい造作と上品でありながら蕩けるような甘さに魅了された王妃は、以降、カーラとノアランに王家御用達を標榜することを許すと、小さな、しかし、偽造は許されない看板を開店祝いに届けてくれた。
それは開店から十日ほど経って届いたが、店の一番目立つところに飾られ、高貴な貴族は勿論だが、握りしめた金を差し出して一切れだけのケーキを買いに来る平民も、王妃様お気に入りの菓子を口にできるなんてと、庶民たちまでも喜ばせていた。
本来は貴族向けの高価な値段設定だったが、客層を観察したノアランが小さくカットして、庶民でも祝いのときなどに買いやすい値段の物を準備してはどうかと提案。
そのため急遽、休みの日に突貫工事で入口とショーケースを表の貴族側と裏の庶民側に分けることになった。
王都の庶民たちも身分差を気にせずに出入りできるようになり、小さいが見たこともないほど美しく美味しいケーキを買うことが出来るようになったと、喜びの声に溢れている。
実は裏側の店は、歳をとってあまりたくさんの量が食べられなくなった高齢の貴族にも密かに喜ばれており、王太后の茶会の菓子は裏側の店から購入されるようになった。
さて、ノアランはその他にも、カーラのタウンハウスの裏庭とガゼボに店からアプローチを繋げて、貴族たちの茶会などができる貸しスペースを作ってしまった。
カーラは自分の屋敷が賑やかになり過ぎると文句を言ったが、『カーラ・シーズン』でタウンハウスを持たない貴族たちの利用が想定以上に多いことを知ったノアランが、領地が遠い貴族たちも気軽に自家が主催する茶会が開けるようにし、貸出料の大半をカーラに支払うのはどうかと説得した。
これにより、いつも呼ばれるのを待つのみだった遠方から社交に来る貴族たちは、挙ってこの貸し茶会を利用しだした。
これなら待たなくとも自分から動けるのだ。
いつの間にかノアランに言い含められたカーラは、公爵家御用達の招待状作成と発送、席次表や茶会を差配する侍女まで別料金で準備してやり、王都の茶会に慣れていない田舎貴族たちは、簡単に公爵家レベルの茶会を提供、経験することができるようになった。
早くも予約が半年待ちである・・・。
「半年先なんて社交シーズン終わってますけど、よろしいのかしら」
「いいんじゃないかな。ほらこれを見てごらんよ」
「あら、招待客が王都近隣に領地を持つ方たちばかりだわ」
「社交シーズンが終わったあとだからこそ、じっくり話せる茶会を失敗しないようにここでやってみたいということじゃないかな」
そう分析したノアランを、カーラは感嘆の目で見つめていた。
キャメイリアがシルベスに戻ったあと、ノアランは一度数日だけ帰国し、大荷物を持ってコーテズに舞い戻った。
カーラのタウンハウスに住み込むのはさすがに遠慮したが、近くに小さな屋敷を借り、精力的に『カメリア』の経営に取り組んでいる。
「ノアラン君は想像以上のやり手だな。うちとしては手に入れた原石が宝石になったので、うれしい悲鳴ってところだが」
ブラスが土産の買い物と様子見がてら来店した際、貴族フロアと庶民フロアに分けられたどちらも大変な盛況ぶりをみて、そう漏らしたほど。
ノアランの美しい容姿と、知り合った頃のカーラについて回るような姿からは想像ができないほど、今や獅子奮迅の活躍で、カーラの資産を爆増させているのだ。
「カーラは、ノアラン君との将来を考えたりしないのか?なあエイミは何か聞いていないのか?」
『カメリア』で目立たぬようカーラの護衛をするエイミに、ブラスが訊ねると、主人と長い付き合いの侍女は気軽に自分の考えを述べた。
「おふたりとも想いあわれているとは思うんですけど、きっかけがねえ、ないと進めないんじゃないですか?いまさら」
「きっかけ?そうか!そうだったのか!」
ブラスはノアランがカーラを慕っていることは直接聞いて知っている。あとはカーラなのだ。
自分がそのきっかけになってやろうとほくそ笑んだ。
いきなり最終話をアップしていたことが判明し、おわーおわーと焦って、うっかり削除してしまいました(泣)
もう一度下書きには戻せなかった・・・、栞はさんでくださった方、本当に申し訳ないです。
下書きからもう一度1/3に更新できるよう準備を致しますので、何卒ご容赦下さい。
■□■
ノアランのささやかな願いを聞いて先代王妃、表舞台から姿を消した王太后は大変に喜んだ。
数日後に開かれたと王妃それぞれの茶会では、城のパティシエの菓子に加え、実績が浅いどころか開店したての『カメリア』の菓子が出され、評判になる。
その美しい造作と上品でありながら蕩けるような甘さに魅了された王妃は、以降、カーラとノアランに王家御用達を標榜することを許すと、小さな、しかし、偽造は許されない看板を開店祝いに届けてくれた。
それは開店から十日ほど経って届いたが、店の一番目立つところに飾られ、高貴な貴族は勿論だが、握りしめた金を差し出して一切れだけのケーキを買いに来る平民も、王妃様お気に入りの菓子を口にできるなんてと、庶民たちまでも喜ばせていた。
本来は貴族向けの高価な値段設定だったが、客層を観察したノアランが小さくカットして、庶民でも祝いのときなどに買いやすい値段の物を準備してはどうかと提案。
そのため急遽、休みの日に突貫工事で入口とショーケースを表の貴族側と裏の庶民側に分けることになった。
王都の庶民たちも身分差を気にせずに出入りできるようになり、小さいが見たこともないほど美しく美味しいケーキを買うことが出来るようになったと、喜びの声に溢れている。
実は裏側の店は、歳をとってあまりたくさんの量が食べられなくなった高齢の貴族にも密かに喜ばれており、王太后の茶会の菓子は裏側の店から購入されるようになった。
さて、ノアランはその他にも、カーラのタウンハウスの裏庭とガゼボに店からアプローチを繋げて、貴族たちの茶会などができる貸しスペースを作ってしまった。
カーラは自分の屋敷が賑やかになり過ぎると文句を言ったが、『カーラ・シーズン』でタウンハウスを持たない貴族たちの利用が想定以上に多いことを知ったノアランが、領地が遠い貴族たちも気軽に自家が主催する茶会が開けるようにし、貸出料の大半をカーラに支払うのはどうかと説得した。
これにより、いつも呼ばれるのを待つのみだった遠方から社交に来る貴族たちは、挙ってこの貸し茶会を利用しだした。
これなら待たなくとも自分から動けるのだ。
いつの間にかノアランに言い含められたカーラは、公爵家御用達の招待状作成と発送、席次表や茶会を差配する侍女まで別料金で準備してやり、王都の茶会に慣れていない田舎貴族たちは、簡単に公爵家レベルの茶会を提供、経験することができるようになった。
早くも予約が半年待ちである・・・。
「半年先なんて社交シーズン終わってますけど、よろしいのかしら」
「いいんじゃないかな。ほらこれを見てごらんよ」
「あら、招待客が王都近隣に領地を持つ方たちばかりだわ」
「社交シーズンが終わったあとだからこそ、じっくり話せる茶会を失敗しないようにここでやってみたいということじゃないかな」
そう分析したノアランを、カーラは感嘆の目で見つめていた。
キャメイリアがシルベスに戻ったあと、ノアランは一度数日だけ帰国し、大荷物を持ってコーテズに舞い戻った。
カーラのタウンハウスに住み込むのはさすがに遠慮したが、近くに小さな屋敷を借り、精力的に『カメリア』の経営に取り組んでいる。
「ノアラン君は想像以上のやり手だな。うちとしては手に入れた原石が宝石になったので、うれしい悲鳴ってところだが」
ブラスが土産の買い物と様子見がてら来店した際、貴族フロアと庶民フロアに分けられたどちらも大変な盛況ぶりをみて、そう漏らしたほど。
ノアランの美しい容姿と、知り合った頃のカーラについて回るような姿からは想像ができないほど、今や獅子奮迅の活躍で、カーラの資産を爆増させているのだ。
「カーラは、ノアラン君との将来を考えたりしないのか?なあエイミは何か聞いていないのか?」
『カメリア』で目立たぬようカーラの護衛をするエイミに、ブラスが訊ねると、主人と長い付き合いの侍女は気軽に自分の考えを述べた。
「おふたりとも想いあわれているとは思うんですけど、きっかけがねえ、ないと進めないんじゃないですか?いまさら」
「きっかけ?そうか!そうだったのか!」
ブラスはノアランがカーラを慕っていることは直接聞いて知っている。あとはカーラなのだ。
自分がそのきっかけになってやろうとほくそ笑んだ。
0
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる