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恋と仕事と

第30話

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※お詫び
いきなり最終話をアップしていたことが判明し、おわーおわーと焦って、うっかり削除してしまいました(泣)
もう一度下書きには戻せなかった・・・、栞はさんでくださった方、本当に申し訳ないです。
下書きからもう一度1/3に更新できるよう準備を致しますので、何卒ご容赦下さい。

■□■

 ノアランのささやかな願いを聞いて先代王妃、表舞台から姿を消した王太后は大変に喜んだ。
 数日後に開かれたと王妃それぞれの茶会では、城のパティシエの菓子に加え、実績が浅いどころか開店したての『カメリア』の菓子が出され、評判になる。
 その美しい造作と上品でありながら蕩けるような甘さに魅了された王妃は、以降、カーラとノアランに王家御用達を標榜することを許すと、小さな、しかし、偽造は許されない看板を開店祝いに届けてくれた。

 それは開店から十日ほど経って届いたが、店の一番目立つところに飾られ、高貴な貴族は勿論だが、握りしめた金を差し出して一切れだけのケーキを買いに来る平民も、王妃様お気に入りの菓子を口にできるなんてと、庶民たちまでも喜ばせていた。

 本来は貴族向けの高価な値段設定だったが、客層を観察したノアランが小さくカットして、庶民でも祝いのときなどに買いやすい値段の物を準備してはどうかと提案。
 そのため急遽、休みの日に突貫工事で入口とショーケースを表の貴族側と裏の庶民側に分けることになった。
 王都の庶民たちも身分差を気にせずに出入りできるようになり、小さいが見たこともないほど美しく美味しいケーキを買うことが出来るようになったと、喜びの声に溢れている。
 実は裏側の店は、歳をとってあまりたくさんの量が食べられなくなった高齢の貴族にも密かに喜ばれており、王太后の茶会の菓子は裏側の店から購入されるようになった。
 

 さて、ノアランはその他にも、カーラのタウンハウスの裏庭とガゼボに店からアプローチを繋げて、貴族たちの茶会などができる貸しスペースを作ってしまった。

 カーラは自分の屋敷が賑やかになり過ぎると文句を言ったが、『カーラ・シーズン』でタウンハウスを持たない貴族たちの利用が想定以上に多いことを知ったノアランが、領地が遠い貴族たちも気軽に自家が主催する茶会が開けるようにし、貸出料の大半をカーラに支払うのはどうかと説得した。

 これにより、いつも呼ばれるのを待つのみだった遠方から社交に来る貴族たちは、挙ってこの貸し茶会を利用しだした。
 これなら待たなくとも自分から動けるのだ。
 いつの間にかノアランに言い含められたカーラは、公爵家御用達の招待状作成と発送、席次表や茶会を差配する侍女まで別料金で準備してやり、王都の茶会に慣れていない田舎貴族たちは、簡単に公爵家レベルの茶会を提供、経験することができるようになった。

 早くも予約が半年待ちである・・・。



「半年先なんて社交シーズン終わってますけど、よろしいのかしら」
「いいんじゃないかな。ほらこれを見てごらんよ」
「あら、招待客が王都近隣に領地を持つ方たちばかりだわ」
「社交シーズンが終わったあとだからこそ、じっくり話せる茶会を失敗しないようにここでやってみたいということじゃないかな」

 そう分析したノアランを、カーラは感嘆の目で見つめていた。

 キャメイリアがシルベスに戻ったあと、ノアランは一度数日だけ帰国し、大荷物を持ってコーテズに舞い戻った。
 カーラのタウンハウスに住み込むのはさすがに遠慮したが、近くに小さな屋敷を借り、精力的に『カメリア』の経営に取り組んでいる。

「ノアラン君は想像以上のやり手だな。うちとしては手に入れた原石が宝石になったので、うれしい悲鳴ってところだが」

 ブラスが土産の買い物と様子見がてら来店した際、貴族フロアと庶民フロアに分けられたどちらも大変な盛況ぶりをみて、そう漏らしたほど。
ノアランの美しい容姿と、知り合った頃のカーラについて回るような姿からは想像ができないほど、今や獅子奮迅の活躍で、カーラの資産を爆増させているのだ。

「カーラは、ノアラン君との将来を考えたりしないのか?なあエイミは何か聞いていないのか?」

『カメリア』で目立たぬようカーラの護衛をするエイミに、ブラスが訊ねると、主人と長い付き合いの侍女は気軽に自分の考えを述べた。

「おふたりとも想いあわれているとは思うんですけど、きっかけがねえ、ないと進めないんじゃないですか?いまさら」
「きっかけ?そうか!そうだったのか!」

 ブラスはノアランがカーラを慕っていることは直接聞いて知っている。あとはカーラなのだ。
 自分がそのきっかけになってやろうとほくそ笑んだ。
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