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コーテズにて
第15話
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章の設定を忘れまして、修整しています。
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カーラが貴族学院に在学中、親しくしていた子爵令嬢がいた。
職業夫人に憧れているというアミーラだったが、その夢は叶わず、昨秋に政略結婚で辺境のドレイン伯爵家に嫁がされている。
ドレイン家は領地は小さいがその中に複数の鉱山を持ち、精鋭の騎士団に守られた豊かな貴族だ。王都にタウンハウスも持ってはいるのだが、何しろ遠い領地のため社交シーズンにはいつも出遅れていた。
というのもドレイン辺境にまでは、王都で名の知れたデザイナーが行くことはない。
ブティックは勿論あるのだが、保守的な土地柄のせいか、いつの時代の流行かと思うようなデザインのドレスを売るところばかり。
ドレイン伯爵夫人ニーナミアが自分で誘致したブティックも、女性たちの求めるデザインに閉口して王都に戻ってしまった。
次にニーナミアは、王都のアトリエの主と手紙のやりとりを交わしてオーダーしたが、王都に来て実物のドレスを見たときの絶望感ときたら。
面倒臭い思いをして態々大枚はたいて出来たのがこれかと、二度とやるものかと強く思ったほど。
ドレスのような繊細な注文はやはり実物を目で見て決めなければダメだ!と、ニーナミア夫人はいつもの社交シーズンより早くドレイン領を発てないかと考えもした。
しかしドレイン領は雪がとても深い。
夫人たちが乗るような、暖かく乗り心地良く仕立てられた重たい馬車は、少しの雨ならともかく、雪が溶け残り、地面深くまで水分を含んで泥濘んだ道を走ることは難しかった。
結局王都に向かうのは、雪が溶け地面が乾くのを待つしかないのだ。
仕方なく既製品も見てみたが、安っぽくてとても耐えられないとニーナミア夫人は頑として受け付けなかった。
アミーラの手紙で事情を知っていたカーラは、店のドレスの準備ができるとすぐに招待状を送った。
ニーナミア夫人が気に入るようなドレスが用意できるから、必ず夫人と来るようにと書いて。
ちょうど社交シーズンに向けて、遅まきながら王都にやって来たドレイン夫人たちを早々に捕まえることができたのは、カーラの幸運の為せる技だろう。
ニーナミア夫人は嫡男の嫁アミーラに連れられ、疑いの目を向けながら、プレオープン中のカーラの店にやって来た。
「アミーラ様!よく来てくださいましたわ」
「カーラ様!一年ぶりにございますね、今年はパーティーには出られなかったのですか?お会いできるのを楽しみにしておりましたのよ。まあいろいろと大変だったと伺ってはおりましたが。
それにしても、こんな素敵な店を王都に構えられるとは流石ですわ」
大きな緑の瞳をうるうるさせたアミーラが、カーラの手を取り挨拶を交わす。勿論ニーナミア夫人を紹介するのも忘れない。
「こちらは私の義母ニーナミアです」
王都に着いてすぐ、他の店でオーダーしたドレスはまだ仕上がっていないため、去年王都で流行ったスタイルの青いドレスを着たニーナミア。
しゃんと背筋を伸ばして歩く彼女は、若い頃はかなり美しい女性だったことを匂わせている。
「ようこそお出で下さいました、シーズン公爵家のカーラと申します」
「お初にお目にかかります、ドレイン伯爵家のニーナミアと申します」
その声は凛として、辺境守護の一翼を担う一門の夫人に相応しい風格があった。
「ドレイン伯爵夫人、アミーラ様とは親しい仲にございますから、どうぞ夫人もカーラとお呼びください」
「ありがとうございます。ではカーラ様もニーナミアと」
名を呼び合うことで少しだけ打ち解けると、カーラは早速ふたりを、まずはドレスだとヘシーとナラの元へ連れて行った。
高飛車に出てくる貴族がいないとも限らないため、ヘシーの補佐はナラについてもらっている。
ドレスルームに入ると、それは可愛らしい猫脚の応接家具が置かれ、美しい花柄のティーセットが用意されていた。
「どうぞお座りになって」
ソファを勧めたカーラは、すぐにヘシーに目配せをした。
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カーラが貴族学院に在学中、親しくしていた子爵令嬢がいた。
職業夫人に憧れているというアミーラだったが、その夢は叶わず、昨秋に政略結婚で辺境のドレイン伯爵家に嫁がされている。
ドレイン家は領地は小さいがその中に複数の鉱山を持ち、精鋭の騎士団に守られた豊かな貴族だ。王都にタウンハウスも持ってはいるのだが、何しろ遠い領地のため社交シーズンにはいつも出遅れていた。
というのもドレイン辺境にまでは、王都で名の知れたデザイナーが行くことはない。
ブティックは勿論あるのだが、保守的な土地柄のせいか、いつの時代の流行かと思うようなデザインのドレスを売るところばかり。
ドレイン伯爵夫人ニーナミアが自分で誘致したブティックも、女性たちの求めるデザインに閉口して王都に戻ってしまった。
次にニーナミアは、王都のアトリエの主と手紙のやりとりを交わしてオーダーしたが、王都に来て実物のドレスを見たときの絶望感ときたら。
面倒臭い思いをして態々大枚はたいて出来たのがこれかと、二度とやるものかと強く思ったほど。
ドレスのような繊細な注文はやはり実物を目で見て決めなければダメだ!と、ニーナミア夫人はいつもの社交シーズンより早くドレイン領を発てないかと考えもした。
しかしドレイン領は雪がとても深い。
夫人たちが乗るような、暖かく乗り心地良く仕立てられた重たい馬車は、少しの雨ならともかく、雪が溶け残り、地面深くまで水分を含んで泥濘んだ道を走ることは難しかった。
結局王都に向かうのは、雪が溶け地面が乾くのを待つしかないのだ。
仕方なく既製品も見てみたが、安っぽくてとても耐えられないとニーナミア夫人は頑として受け付けなかった。
アミーラの手紙で事情を知っていたカーラは、店のドレスの準備ができるとすぐに招待状を送った。
ニーナミア夫人が気に入るようなドレスが用意できるから、必ず夫人と来るようにと書いて。
ちょうど社交シーズンに向けて、遅まきながら王都にやって来たドレイン夫人たちを早々に捕まえることができたのは、カーラの幸運の為せる技だろう。
ニーナミア夫人は嫡男の嫁アミーラに連れられ、疑いの目を向けながら、プレオープン中のカーラの店にやって来た。
「アミーラ様!よく来てくださいましたわ」
「カーラ様!一年ぶりにございますね、今年はパーティーには出られなかったのですか?お会いできるのを楽しみにしておりましたのよ。まあいろいろと大変だったと伺ってはおりましたが。
それにしても、こんな素敵な店を王都に構えられるとは流石ですわ」
大きな緑の瞳をうるうるさせたアミーラが、カーラの手を取り挨拶を交わす。勿論ニーナミア夫人を紹介するのも忘れない。
「こちらは私の義母ニーナミアです」
王都に着いてすぐ、他の店でオーダーしたドレスはまだ仕上がっていないため、去年王都で流行ったスタイルの青いドレスを着たニーナミア。
しゃんと背筋を伸ばして歩く彼女は、若い頃はかなり美しい女性だったことを匂わせている。
「ようこそお出で下さいました、シーズン公爵家のカーラと申します」
「お初にお目にかかります、ドレイン伯爵家のニーナミアと申します」
その声は凛として、辺境守護の一翼を担う一門の夫人に相応しい風格があった。
「ドレイン伯爵夫人、アミーラ様とは親しい仲にございますから、どうぞ夫人もカーラとお呼びください」
「ありがとうございます。ではカーラ様もニーナミアと」
名を呼び合うことで少しだけ打ち解けると、カーラは早速ふたりを、まずはドレスだとヘシーとナラの元へ連れて行った。
高飛車に出てくる貴族がいないとも限らないため、ヘシーの補佐はナラについてもらっている。
ドレスルームに入ると、それは可愛らしい猫脚の応接家具が置かれ、美しい花柄のティーセットが用意されていた。
「どうぞお座りになって」
ソファを勧めたカーラは、すぐにヘシーに目配せをした。
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