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コーテズにて

第8話

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 猫は案外すぐに見つかった。
子爵家に仕えるナラの侍女仲間から、屋敷で生まれた子猫の話を聞きつけ、譲り受けることになったのだ。

 カーラ自らが子爵家に足を運び、子猫たちを見に行った。

「シーズン公爵様のご令嬢がいらしてくださるとは」

 子爵一家がぴしっと整列して出迎えてくれたが、そちらへはにっこり笑ってちょこりとカーテシーしてみせ、目では早く子猫のところに連れて行けと圧をかける。

「で、ではこちらへ」

 ネズミ捕りのために穀物倉庫で飼っていた猫が、立て続けに子猫を3シーズン生んだところ、明らかに増えすぎてしまい、今回生まれた子猫たちはすべて貰い先を探すのだそうだ。

「にぃ~」

 さすがにカーラを子爵家の倉庫に連れて行くわけにはいかないので、子猫たちはかごにいれられて応接に置かれていた。

 カーラが覗くと、白っぽい猫と黒っぽい猫と、白黒のぶち猫が二匹。

「う」

(かわいいっ!何これ、ベリルより数倍かわいいわ。この中から一匹だけなんて)

「選べない」

 さくらんぼのようなカーラの口から言葉がもれた。

「選べないわ、こんなにみんなかわいいのだもの!そうだわ、この子たちは雄なの雌なの?」
「今回は全員雄猫ばかりです」

 カーラは「そっか、男の子かぁ」と呟きながら一匹づつ子猫の頭を撫でていく。
子猫と言ってもう二ヶ月ほどなので、じっとはしておらず、目を離すとかごから出ようとするのも可愛くてたまらない。

「ナラ、全部男の子なんですって」
「はい、そのようですね・・?」
「元気な男の子、4匹飼うのいいと思わない?」
「え!ええっ?」
「だってこんなにかわいいのに、とてもじゃないけど選べないし、兄弟を引き離すのもかわいそうじゃない?ね!私がお世話するから」

(いや、それは絶対に嘘だろう)

 ナラと共にいたルブの目はそう言っていた。

 しかし、一度決めたら翻すことのないカーラである。
ナラは、猫の世話係となった自分の姿を思い浮かべてため息をついたのだが。
目敏いカーラはニヤッと笑ってナラを揺さぶった。

「ねえ、猫の世話でわからないことがあったら、アルトスを訪ねて教えてもらえばいいと思うわ」

 そう言って。

 表情を変えないナラだが、よく見ると目尻が少し下がっている。

「それに足りないものはアルトスの工房で買うから、頻繁に行ってもらうようになると思う」
「か、畏まりました。猫ちゃんのお世話は私におまかせを」

 ナラが頭を下げる。
俯いたその顔は、嬉しそうに笑っていた。
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