74 / 149
夢は交錯する
第17話
しおりを挟む
次の日は、宿の主人に紹介された家具工房を訪れた。
「ほう、コーテズ王国から!それは遠い中ご苦労様でございましたな」
アルトスと名乗った工房主も、やはり銀髪で灰色の瞳をした壮年の男である。
「しかしコーテズまで家具を運ばれると大変な運賃となりますよ」
「それは構わないわ」
「え?」
てっきり断ると思ったのに、若い令嬢が値段も気にせず構わないと言うことに、アルトスのほうが驚いてしまった。
カーラにとってシルベスのレートの家具や運搬代は大したことはない。
ディルドラだけがシルベス価格でないのだ。
作り置かれたソファの値段をチラリと見たが、その出来に相応しくないほど安かった。
この値段で仕入れ、コーテズ価格で売ったら、さぞ儲かりそうだと閃く。
「私の商会に家具を卸しませんこと?」
「はあっ?」
「コーテズの王都で、貴婦人向けの装飾品を置く店を始めますの。その店に置く家具を頼みたくて来たのだけれど、どうせならお値段をつけて家具も売ったらいいのではないかしら!こんなに可愛いのだもの、絶対に売れると思うの!」
「か、かわいい?私の家具が?」
その時、にゃーんと鳴き声がして、アルトスの足元に黒い猫が纏わりついてくる。
「お客様だから、あっちへ行っていろ」
猫の腰を軽くぽんぽんしてやると、もっとやれと言うように靴の上に乗って退こうとしない。
「かわいい!猫ちゃんがお好きなのですね、だから家具を全部猫足に?」
「あー、まあ、そんなところです」
心なしか恥ずかしいそうにもじもじするオジサマに、カーラとナラはちょっとだけキュンとした。
「あ!そういうことね」
カーラが何か思いついたように口走る。
「猫ちゃんが似合う家具!」
今度こそ本当にアルトスは真っ赤になり、カーラが「当たった~!」と喜ぶ。
「そっかぁ、そうなのねえ!猫ちゃんかわいいものねぇ」
うふうふと笑うカーラは、猫より金がかわいい女であった。
「これは猫好き貴族に間違いなく売れます!そうだわ!猫ちゃんのぬいぐるみをね、ソファに乗せてみたらきっと皆様、おうちの猫ちゃんのためにこの可愛らしいソファを買ってあげたくなると思うわ」
カーラは今、自分の口が水を湧き出す泉のようにアイデアを生み出していることに興奮していた。
─すごい、これ全部うまくいったら、王都の五本指くらいになれちゃうかもしれないわ─
「そうだわ!お買い物で疲れた女性たちが一休み出来るように、カフェを併設して花茶とケーキを出しましょう!もちろんそのテーブルセットはこちらにお願いして、テーブルセットも希望があればお譲りして差し上げちゃうの!」
アルトスと店内に伴をした侍女三人は、ひとりで盛り上がるカーラをぼう然と眺めていた。
「ほう、コーテズ王国から!それは遠い中ご苦労様でございましたな」
アルトスと名乗った工房主も、やはり銀髪で灰色の瞳をした壮年の男である。
「しかしコーテズまで家具を運ばれると大変な運賃となりますよ」
「それは構わないわ」
「え?」
てっきり断ると思ったのに、若い令嬢が値段も気にせず構わないと言うことに、アルトスのほうが驚いてしまった。
カーラにとってシルベスのレートの家具や運搬代は大したことはない。
ディルドラだけがシルベス価格でないのだ。
作り置かれたソファの値段をチラリと見たが、その出来に相応しくないほど安かった。
この値段で仕入れ、コーテズ価格で売ったら、さぞ儲かりそうだと閃く。
「私の商会に家具を卸しませんこと?」
「はあっ?」
「コーテズの王都で、貴婦人向けの装飾品を置く店を始めますの。その店に置く家具を頼みたくて来たのだけれど、どうせならお値段をつけて家具も売ったらいいのではないかしら!こんなに可愛いのだもの、絶対に売れると思うの!」
「か、かわいい?私の家具が?」
その時、にゃーんと鳴き声がして、アルトスの足元に黒い猫が纏わりついてくる。
「お客様だから、あっちへ行っていろ」
猫の腰を軽くぽんぽんしてやると、もっとやれと言うように靴の上に乗って退こうとしない。
「かわいい!猫ちゃんがお好きなのですね、だから家具を全部猫足に?」
「あー、まあ、そんなところです」
心なしか恥ずかしいそうにもじもじするオジサマに、カーラとナラはちょっとだけキュンとした。
「あ!そういうことね」
カーラが何か思いついたように口走る。
「猫ちゃんが似合う家具!」
今度こそ本当にアルトスは真っ赤になり、カーラが「当たった~!」と喜ぶ。
「そっかぁ、そうなのねえ!猫ちゃんかわいいものねぇ」
うふうふと笑うカーラは、猫より金がかわいい女であった。
「これは猫好き貴族に間違いなく売れます!そうだわ!猫ちゃんのぬいぐるみをね、ソファに乗せてみたらきっと皆様、おうちの猫ちゃんのためにこの可愛らしいソファを買ってあげたくなると思うわ」
カーラは今、自分の口が水を湧き出す泉のようにアイデアを生み出していることに興奮していた。
─すごい、これ全部うまくいったら、王都の五本指くらいになれちゃうかもしれないわ─
「そうだわ!お買い物で疲れた女性たちが一休み出来るように、カフェを併設して花茶とケーキを出しましょう!もちろんそのテーブルセットはこちらにお願いして、テーブルセットも希望があればお譲りして差し上げちゃうの!」
アルトスと店内に伴をした侍女三人は、ひとりで盛り上がるカーラをぼう然と眺めていた。
0
お気に入りに追加
409
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
夫が浮気をしたので、子供を連れて離婚し、農園を始める事にしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
10月29日「小説家になろう」日間異世界恋愛ランキング6位
11月2日「小説家になろう」週間異世界恋愛ランキング17位
11月4日「小説家になろう」月間異世界恋愛ランキング78位
11月4日「カクヨム」日間異世界恋愛ランキング71位
完結詐欺と言われても、このチャンスは生かしたいので、第2章を書きます
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる