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夢は交錯する

第17話

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 次の日は、宿の主人に紹介された家具工房を訪れた。

「ほう、コーテズ王国から!それは遠い中ご苦労様でございましたな」

 アルトスと名乗った工房主も、やはり銀髪で灰色の瞳をした壮年の男である。

「しかしコーテズまで家具を運ばれると大変な運賃となりますよ」
「それは構わないわ」
「え?」

 てっきり断ると思ったのに、若い令嬢が値段も気にせず構わないと言うことに、アルトスのほうが驚いてしまった。
 カーラにとってシルベスのレートの家具や運搬代は大したことはない。
ディルドラだけがシルベス価格でないのだ。
 作り置かれたソファの値段をチラリと見たが、その出来に相応しくないほど安かった。
 この値段で仕入れ、コーテズ価格で売ったら、さぞ儲かりそうだと閃く。

「私の商会に家具を卸しませんこと?」
「はあっ?」
「コーテズの王都で、貴婦人向けの装飾品を置く店を始めますの。その店に置く家具を頼みたくて来たのだけれど、どうせならお値段をつけて家具も売ったらいいのではないかしら!こんなに可愛いのだもの、絶対に売れると思うの!」
「か、かわいい?私の家具が?」

 その時、にゃーんと鳴き声がして、アルトスの足元に黒い猫が纏わりついてくる。

「お客様だから、あっちへ行っていろ」

 猫の腰を軽くぽんぽんしてやると、もっとやれと言うように靴の上に乗って退こうとしない。

「かわいい!猫ちゃんがお好きなのですね、だから家具を全部猫足に?」
「あー、まあ、そんなところです」

 心なしか恥ずかしいそうにもじもじするオジサマに、カーラとナラはちょっとだけキュンとした。

「あ!そういうことね」

 カーラが何か思いついたように口走る。

「猫ちゃんが似合う家具!」

 今度こそ本当にアルトスは真っ赤になり、カーラが「当たった~!」と喜ぶ。

「そっかぁ、そうなのねえ!猫ちゃんかわいいものねぇ」

 うふうふと笑うカーラは、猫より金がかわいい女であった。

「これは猫好き貴族に間違いなく売れます!そうだわ!猫ちゃんのぬいぐるみをね、ソファに乗せてみたらきっと皆様、おうちの猫ちゃんのためにこの可愛らしいソファを買ってあげたくなると思うわ」

 カーラは今、自分の口が水を湧き出す泉のようにアイデアを生み出していることに興奮していた。


 ─すごい、これ全部うまくいったら、王都の五本指くらいになれちゃうかもしれないわ─


「そうだわ!お買い物で疲れた女性たちが一休み出来るように、カフェを併設して花茶とケーキを出しましょう!もちろんそのテーブルセットはこちらにお願いして、テーブルセットも希望があればお譲りして差し上げちゃうの!」

 アルトスと店内に伴をした侍女三人は、ひとりで盛り上がるカーラをぼう然と眺めていた。
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