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夢は交錯する
第9話
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「「えっ!にせもの?」」
父子は声を揃えて反応した。
「あの、偽物ってどうしてわかったんですか?」
「私がローリスに滞在した際、本当のノーラン様を、あ、ノーラン様は婚約者だった方のお名前なのですが、彼を診たことのあるお医者様がいらして、髪色などが全く違ったのですわ」
てっきり自分たちの書状だと拳を握りかけたのに、それより前から気がついていたようだと知って、ヤーリッツはちょっとだけ残念に思った。
「そういえば婚約者のご母堂様はシルベスの方らしく、銀髪に菫のような瞳の色だったそうですの。そういえばノアラン様も銀髪に菫色の瞳ですわね!」
「あ、ああ!でもシルベスでは珍しい色ではないですよ」
ノアランは言い訳し、視線を反らす。
「そうなのですね!」
「それで?」
さり気なくヤーリッツが先を促した。
「ええ、女医の記録がございましたので、それを陛下にお届けし、ご判断を仰ぎましたの」
─そうだったのか。では─
ヤーリッツとノアランが己の考えに沈むより早く、カーラは話を続けていく。
「陛下は偽のノーラン様を詰問されたそうです。すると別人だとすぐに告白したのですって」
「それは偽物が息子だと辺境伯を騙していたのかね?」
「いいえ、ローリス辺境伯がご子息を見失ったことを何年も隠蔽され、行方不明を知らずに召喚された陛下を欺くため、身代わりになる者を探して連れて行ったそうです」
「それが、真実?ええっ!」
「まさか!そんな愚か者が辺境伯なんて嘘だろう」
父子の胸中は酷く乱れていた。
─そんな愚か者が私の父だなんて、信じたくない─
と、泣きたくなったノアラン。
─そんな愚か者が父だなんてかわいそう過ぎる!しかしノアは聡明な母親似だ、間違いない─
そうは思うが、どうやって息子を慰めようかと悩むヤーリッツ。
「そういえば、ちょうどその頃我がシーズンの屋敷に不思議な手紙が届きましたのよ」
父子はハッとした。
「ノーラン様は偽物だと告発する、御本人からと思われるお手紙でしたの」
「そ、その手紙はどうなさったのです?」
「勿論それも陛下にお届けしましたわ」
「コーテズの国王陛下はそれをどうなさったのです?辺境伯の実の息子が現れたらどうすると?」
カーラが話し終えるのを待てず、食い気味にヤーリッツが押していく。
「ええ、コーテズ国内では既に公示されたのですが、陛下は真のノーラン様が現れても連座は問わないということ。
それとノーラン様の御祖母様と曾祖母様が持参された財産と領地、保有されていた男爵位をお渡しすると。
でも他国にいらっしゃるから、コーテズでお触れが出たとはご存知ないのでしょうね、静かに暮らしたいと手紙にございましたの」
ノアランは、あまりの情報量に目をぱちくりとまばたきを繰り返していた。
父子は声を揃えて反応した。
「あの、偽物ってどうしてわかったんですか?」
「私がローリスに滞在した際、本当のノーラン様を、あ、ノーラン様は婚約者だった方のお名前なのですが、彼を診たことのあるお医者様がいらして、髪色などが全く違ったのですわ」
てっきり自分たちの書状だと拳を握りかけたのに、それより前から気がついていたようだと知って、ヤーリッツはちょっとだけ残念に思った。
「そういえば婚約者のご母堂様はシルベスの方らしく、銀髪に菫のような瞳の色だったそうですの。そういえばノアラン様も銀髪に菫色の瞳ですわね!」
「あ、ああ!でもシルベスでは珍しい色ではないですよ」
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「そうなのですね!」
「それで?」
さり気なくヤーリッツが先を促した。
「ええ、女医の記録がございましたので、それを陛下にお届けし、ご判断を仰ぎましたの」
─そうだったのか。では─
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「陛下は偽のノーラン様を詰問されたそうです。すると別人だとすぐに告白したのですって」
「それは偽物が息子だと辺境伯を騙していたのかね?」
「いいえ、ローリス辺境伯がご子息を見失ったことを何年も隠蔽され、行方不明を知らずに召喚された陛下を欺くため、身代わりになる者を探して連れて行ったそうです」
「それが、真実?ええっ!」
「まさか!そんな愚か者が辺境伯なんて嘘だろう」
父子の胸中は酷く乱れていた。
─そんな愚か者が私の父だなんて、信じたくない─
と、泣きたくなったノアラン。
─そんな愚か者が父だなんてかわいそう過ぎる!しかしノアは聡明な母親似だ、間違いない─
そうは思うが、どうやって息子を慰めようかと悩むヤーリッツ。
「そういえば、ちょうどその頃我がシーズンの屋敷に不思議な手紙が届きましたのよ」
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それとノーラン様の御祖母様と曾祖母様が持参された財産と領地、保有されていた男爵位をお渡しすると。
でも他国にいらっしゃるから、コーテズでお触れが出たとはご存知ないのでしょうね、静かに暮らしたいと手紙にございましたの」
ノアランは、あまりの情報量に目をぱちくりとまばたきを繰り返していた。
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