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ローリスの秘密
第9話
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「どうせ婚約は解消されますでしょ?そうしたらわたくし傷物になってしまいますし、何か仕事を持って自立しようと思いましたの。
そんなとき、シルベスで出逢ってしまったのですわ!」
カーラはシルベスで見つけたものが女性にとってどれほど素晴らしい物だったかを力説した。
「その中で一軒は専属契約を結び、もう一軒は定期的に予約して作ってもらう約束をしてきたのですけど、専属契約を結んだ東方出身の者が作るカンザシが、本当に特別なんですの!お母様がいらしたらきっと喜んで着けて下さったと思いますわ」
幼い頃に亡くなった母の記憶は、カーラには薄いのだが。父を揺さぶるために、あえて言ってみた。
「そういえば、スリにあったのですけど」
「なあにぃ!護衛はどうした?」
「ええ、スリにあったのはトイルですわ」
護衛や侍女はカーラを見ているので、それは仕方ないとビルスが矛を収めたのを見てから。
「その際に助けてくださった貴族がヴァーミル侯爵ご令息のノアラン様と仰られまして、こちらにいらっしゃる際は我がシーズンに滞在をお勧めして参りましたわ」
カーラのことだから謝礼はしているだろうが、当主としてビルスも書状を書くと言った。
「ええ、よろしくお願いします」
「シルベスのヴァーミル侯爵か・・・、国境に近い所だな」
「国境も領地とされておられましたわ。でもコーテズのような辺境伯はシルベスでは置かないようですわね」
「ふうん。・・・その侯爵にノーランのことを調べてくれというのは強引か?」
カーラはちょっとだけ口角をあげて笑ったような顔をしたあと、顔を横に振ってダメだと示して見せた。
「そこまで親しいわけではございませんわ、一度お話ししたくらいですもの。お父様だったらそんな程度の貴族に調べごとを頼まれたら、どう思われますの?」
「だよな。忘れてくれ」
「ええ」
─まったく誰に似たのかと思うほど、しっかりした娘だ─
頼りになる娘だが、それ故の心配もあった。隙がなさすぎるのだ。
─カーラをいいと思う男は、カーラの強さや出自、財力に頼りたいような男か、対等でいられる女を好む男だろう。残念ながら貴族に後者はあまりいないからな─
どちらにしてもしっかりしすぎる娘の結婚は、此度の婚約破棄により想像以上に苦難の多いものとなるだろうと、空から見守るはずの妻に祈りを捧げるのだった。
「お父様?」
「ん?ああ、何でもないよ」
「そうだわ、ヴァーミル侯爵様のところで頂いた素敵なお茶があるんですの。これなら殿方も楽しんで頂けますわ!ちょっとお待ちになってくださいね」
カーラはナラを呼んで花茶を用意させた。
甘いけれど爽やかな香りが執務室に広がり、ティーカップになみなみと淹れられた美しいピンクの茶が目を引く。
「ほう、珍しいものだな」
「おあがりになってみてください」
ふーふーと少しだけ冷まして、カップに口をつける。数口飲み終えると満足気な顔で「美味い」と呟いた。
「そうでしょう!砂糖も入れていないのにほのかに甘くて、色も香りも素晴らしいんですの。ご夫人が催される茶会に出してみたら」
「すごく売れそうだな」
「ねえ、そうでしょう?商品化されるようにお勧めして参りましたのよ。私が商会を起こしたら、これも取引させてくださるようお願いするつもりですのよ!」
そんなとき、シルベスで出逢ってしまったのですわ!」
カーラはシルベスで見つけたものが女性にとってどれほど素晴らしい物だったかを力説した。
「その中で一軒は専属契約を結び、もう一軒は定期的に予約して作ってもらう約束をしてきたのですけど、専属契約を結んだ東方出身の者が作るカンザシが、本当に特別なんですの!お母様がいらしたらきっと喜んで着けて下さったと思いますわ」
幼い頃に亡くなった母の記憶は、カーラには薄いのだが。父を揺さぶるために、あえて言ってみた。
「そういえば、スリにあったのですけど」
「なあにぃ!護衛はどうした?」
「ええ、スリにあったのはトイルですわ」
護衛や侍女はカーラを見ているので、それは仕方ないとビルスが矛を収めたのを見てから。
「その際に助けてくださった貴族がヴァーミル侯爵ご令息のノアラン様と仰られまして、こちらにいらっしゃる際は我がシーズンに滞在をお勧めして参りましたわ」
カーラのことだから謝礼はしているだろうが、当主としてビルスも書状を書くと言った。
「ええ、よろしくお願いします」
「シルベスのヴァーミル侯爵か・・・、国境に近い所だな」
「国境も領地とされておられましたわ。でもコーテズのような辺境伯はシルベスでは置かないようですわね」
「ふうん。・・・その侯爵にノーランのことを調べてくれというのは強引か?」
カーラはちょっとだけ口角をあげて笑ったような顔をしたあと、顔を横に振ってダメだと示して見せた。
「そこまで親しいわけではございませんわ、一度お話ししたくらいですもの。お父様だったらそんな程度の貴族に調べごとを頼まれたら、どう思われますの?」
「だよな。忘れてくれ」
「ええ」
─まったく誰に似たのかと思うほど、しっかりした娘だ─
頼りになる娘だが、それ故の心配もあった。隙がなさすぎるのだ。
─カーラをいいと思う男は、カーラの強さや出自、財力に頼りたいような男か、対等でいられる女を好む男だろう。残念ながら貴族に後者はあまりいないからな─
どちらにしてもしっかりしすぎる娘の結婚は、此度の婚約破棄により想像以上に苦難の多いものとなるだろうと、空から見守るはずの妻に祈りを捧げるのだった。
「お父様?」
「ん?ああ、何でもないよ」
「そうだわ、ヴァーミル侯爵様のところで頂いた素敵なお茶があるんですの。これなら殿方も楽しんで頂けますわ!ちょっとお待ちになってくださいね」
カーラはナラを呼んで花茶を用意させた。
甘いけれど爽やかな香りが執務室に広がり、ティーカップになみなみと淹れられた美しいピンクの茶が目を引く。
「ほう、珍しいものだな」
「おあがりになってみてください」
ふーふーと少しだけ冷まして、カップに口をつける。数口飲み終えると満足気な顔で「美味い」と呟いた。
「そうでしょう!砂糖も入れていないのにほのかに甘くて、色も香りも素晴らしいんですの。ご夫人が催される茶会に出してみたら」
「すごく売れそうだな」
「ねえ、そうでしょう?商品化されるようにお勧めして参りましたのよ。私が商会を起こしたら、これも取引させてくださるようお願いするつもりですのよ!」
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