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シルベスでの出会い
第6話
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「どうかご遠慮なく。治安を守れていない領主のせいですから」
美しい青年はノアラン・ヴァーミルと名乗り、謝罪した。
「ヴァーミル様?もしかしてご領主様の」
「はい。私もヴァーミル一族ですので、街の治安を守りきれていないことは責任を感じます」
「そんな!ああいう輩はどれほど手を尽くしていても、必ずいるものですわ。お気になさらないでください」
「ありがとうございます。でもせっかく他国からいらしてくださったので、良い思い出を持ち帰って頂きたいのです」
カーラはノアランから少し離れた背後に護衛のような騎士が3人控えていることに気づいた。
─領主一族、侯爵家だったわね。ご嫡男かしら?男性に3人の護衛騎士が付いているなんて、結構厳重だわね─
考えながら、ノアランの優雅な仕草から目が離せなかった。
「カーラ様」
エイミが小さな声で話しかけてくる。
「すごく素敵な方ですね!あの方とは段違い」
「しっ!」
諌めはしたが。
カーラは今、王命の婚約者がいたにも関わらず、ここシルベスで出逢った令嬢と恋に落ち、結婚してしまったマトウ・ローリスの気持ちが少しだけ理解できた。
勿論カーラはそんなことしないが、そのくらいノアランが素敵すぎた。
歩きながらフードを被り直したノアランが、さきほどのピンの店の近くにありながら高級感のある店に入って行ったので、カーラたちもついていく。
「これはノアラン様!いらっしゃいませ」
「うむ、こちらの御令嬢方に手鏡とそれを入れる巾着、それからクリームをセットにして贈りたい。見繕ってくれ」
「お支度を致しますので、奥の間でお待ちください」
店の主が指をパチンと鳴らすと、使用人が案内してくれた。
「素敵なお店ですわね」
「気にいって頂けましたか」
「はい、とても」
茶が運ばれてきたので、カーラは一口頂くことにする。
「とってもきれいな色ですね、甘くて香り高くて美味しい!」
「花の茶ですよ。シルベスでは一般の家庭でもこの花を育てていて、乾燥させた花びらを茶葉に混ぜると、美しい色や香り、ほんのりと甘みが残るのです」
「女性に喜ばれそうですわね」
ノアランは口元に微笑みをたたえたまま、同意を示すよう小さく頷いて見せた。
「ノアラン様、こちらで如何でしょうか」
茶を飲み終える頃、主が籠に四つの巾着を入れて持ってきてカーラたちに見せると。
繊細な飾り彫りが施された小さな手鏡の縁は艶のある漆塗りとなっていて、パッと見ただけでもかなり上質な品物だ。
「あの、私が盗られたのは、こんな上等な物ではありませんでしたので」
トイルが遠慮がちに伝えても、ノアランは笑っただけ。
「旅の良き思い出に、遠慮なさらずにお持ちください」
カーラは、いや、エイミもトイルもうるさ方のナラでさえも。ノアランに笑いかけられた今日こそが一生の思い出だと、その笑顔を心に刻みつけていた。
美しい青年はノアラン・ヴァーミルと名乗り、謝罪した。
「ヴァーミル様?もしかしてご領主様の」
「はい。私もヴァーミル一族ですので、街の治安を守りきれていないことは責任を感じます」
「そんな!ああいう輩はどれほど手を尽くしていても、必ずいるものですわ。お気になさらないでください」
「ありがとうございます。でもせっかく他国からいらしてくださったので、良い思い出を持ち帰って頂きたいのです」
カーラはノアランから少し離れた背後に護衛のような騎士が3人控えていることに気づいた。
─領主一族、侯爵家だったわね。ご嫡男かしら?男性に3人の護衛騎士が付いているなんて、結構厳重だわね─
考えながら、ノアランの優雅な仕草から目が離せなかった。
「カーラ様」
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「すごく素敵な方ですね!あの方とは段違い」
「しっ!」
諌めはしたが。
カーラは今、王命の婚約者がいたにも関わらず、ここシルベスで出逢った令嬢と恋に落ち、結婚してしまったマトウ・ローリスの気持ちが少しだけ理解できた。
勿論カーラはそんなことしないが、そのくらいノアランが素敵すぎた。
歩きながらフードを被り直したノアランが、さきほどのピンの店の近くにありながら高級感のある店に入って行ったので、カーラたちもついていく。
「これはノアラン様!いらっしゃいませ」
「うむ、こちらの御令嬢方に手鏡とそれを入れる巾着、それからクリームをセットにして贈りたい。見繕ってくれ」
「お支度を致しますので、奥の間でお待ちください」
店の主が指をパチンと鳴らすと、使用人が案内してくれた。
「素敵なお店ですわね」
「気にいって頂けましたか」
「はい、とても」
茶が運ばれてきたので、カーラは一口頂くことにする。
「とってもきれいな色ですね、甘くて香り高くて美味しい!」
「花の茶ですよ。シルベスでは一般の家庭でもこの花を育てていて、乾燥させた花びらを茶葉に混ぜると、美しい色や香り、ほんのりと甘みが残るのです」
「女性に喜ばれそうですわね」
ノアランは口元に微笑みをたたえたまま、同意を示すよう小さく頷いて見せた。
「ノアラン様、こちらで如何でしょうか」
茶を飲み終える頃、主が籠に四つの巾着を入れて持ってきてカーラたちに見せると。
繊細な飾り彫りが施された小さな手鏡の縁は艶のある漆塗りとなっていて、パッと見ただけでもかなり上質な品物だ。
「あの、私が盗られたのは、こんな上等な物ではありませんでしたので」
トイルが遠慮がちに伝えても、ノアランは笑っただけ。
「旅の良き思い出に、遠慮なさらずにお持ちください」
カーラは、いや、エイミもトイルもうるさ方のナラでさえも。ノアランに笑いかけられた今日こそが一生の思い出だと、その笑顔を心に刻みつけていた。
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