42 / 100
42話 ドレイン・トロワー
しおりを挟む
アレン・ジメンクスを調べるのと同時に、ドレインはナミリア・レンラも調べ始めた。
「ふうむ。イールズ商会の嫡男が事故で亡くなって、婚約解消となった際に財産分与を男爵夫人がしたとあるな」
贈与に関わる税金が発生しているので、調べてみると驚愕するほどの財産が譲られたことを知る。
「この金額じゃ、たいていは目の色が変わるよな」
平常通りの生活を送っているとしたらナミリア・レンラは大した女性だと考えながら、さらに税金申告の書類を確認し続ける。
「商売を始めたのか?」
もらった財産とは別にナミリアの収入があることに気づく。
「連絡先はイールズ商会内か。繊維業?」
メモを取って上着のポケットにしまうと、抜けてきた仕事に戻って行った。
調査部の自分のデスクにメモを広げていると、覗き込んだ上司が訊ねて来た。
「何か調べてるのか?」
「あ、はい。ゆ、知人が婚約を考えている相手が、財産を狙われているらしくて」
何故かローズリーを友人と呼ぶのが憚られて、思わず知人と口から溢れる。
「財産狙い?狙っているのはトロワーの知人か」
「いえ、そいつと繋がりがある人間ですね」
「狙われている者が危なそうなら、治安部に繋いでやるといい」
「そうですね。とりあえず下調べはしておいてやろうと思ってるんですが」
「ああ。うちの範疇じゃないが、ちょうど手も空いてるし、国民を守るためなら少しくらいは構わんぞ」
「ありがとうございます!」
繁忙期ではありえないことだろうが、上司のお墨付きを貰って堂々と他の資料も広げ始めると、調査部長のメッへーは苦笑しながらそれを手に取った。
「ナミリア・レンラか」
「知ってるんですか?」
「去年の女王陛下のコンテスト入賞者だ。今、糸や生地を自国で作る工房を起ち上げて奮闘してると聞くぞ」
「・・・随分詳しいですね?」
ドレインは不思議そうな目をメッへーに向けた。
「うちの妻もコンテストの審査員だからな、入賞者のその後についてもよく妻から聞かされてるんだ。狙われてるのはナミリア・レンラなのか?」
「そうなんです」
「それはまずいな」
「まずい?」
「言っただろう。今、東国の独占市場の繊維業をイールズ商会とともに自国生産しようと奮闘してるんだよ。これはすごいことだと、密かに王妃様も注視されている」
「王妃様がですか」
「ああ。軌道に乗れば一大産業だ。国の将来の基幹産業になるかもしれん。ふむ、トロワー!業務命令だ。ナミリア・レンラの周辺を調査し、危険を排除しろ」
ニヤッと笑ったメッへー。
「彼女は妻のお気に入りなんだ、妻は彼女の工房の刺繍糸も愛用してる。頼んだぞ」
公私混同気味な命令だが、お陰で堂々と調査に時間を避けることになったドレイン。
しかしこれにより、ローズリーに逃げ場がなくなったのではないかと、複雑な気持ちに思わず俯いた。
「ふうむ。イールズ商会の嫡男が事故で亡くなって、婚約解消となった際に財産分与を男爵夫人がしたとあるな」
贈与に関わる税金が発生しているので、調べてみると驚愕するほどの財産が譲られたことを知る。
「この金額じゃ、たいていは目の色が変わるよな」
平常通りの生活を送っているとしたらナミリア・レンラは大した女性だと考えながら、さらに税金申告の書類を確認し続ける。
「商売を始めたのか?」
もらった財産とは別にナミリアの収入があることに気づく。
「連絡先はイールズ商会内か。繊維業?」
メモを取って上着のポケットにしまうと、抜けてきた仕事に戻って行った。
調査部の自分のデスクにメモを広げていると、覗き込んだ上司が訊ねて来た。
「何か調べてるのか?」
「あ、はい。ゆ、知人が婚約を考えている相手が、財産を狙われているらしくて」
何故かローズリーを友人と呼ぶのが憚られて、思わず知人と口から溢れる。
「財産狙い?狙っているのはトロワーの知人か」
「いえ、そいつと繋がりがある人間ですね」
「狙われている者が危なそうなら、治安部に繋いでやるといい」
「そうですね。とりあえず下調べはしておいてやろうと思ってるんですが」
「ああ。うちの範疇じゃないが、ちょうど手も空いてるし、国民を守るためなら少しくらいは構わんぞ」
「ありがとうございます!」
繁忙期ではありえないことだろうが、上司のお墨付きを貰って堂々と他の資料も広げ始めると、調査部長のメッへーは苦笑しながらそれを手に取った。
「ナミリア・レンラか」
「知ってるんですか?」
「去年の女王陛下のコンテスト入賞者だ。今、糸や生地を自国で作る工房を起ち上げて奮闘してると聞くぞ」
「・・・随分詳しいですね?」
ドレインは不思議そうな目をメッへーに向けた。
「うちの妻もコンテストの審査員だからな、入賞者のその後についてもよく妻から聞かされてるんだ。狙われてるのはナミリア・レンラなのか?」
「そうなんです」
「それはまずいな」
「まずい?」
「言っただろう。今、東国の独占市場の繊維業をイールズ商会とともに自国生産しようと奮闘してるんだよ。これはすごいことだと、密かに王妃様も注視されている」
「王妃様がですか」
「ああ。軌道に乗れば一大産業だ。国の将来の基幹産業になるかもしれん。ふむ、トロワー!業務命令だ。ナミリア・レンラの周辺を調査し、危険を排除しろ」
ニヤッと笑ったメッへー。
「彼女は妻のお気に入りなんだ、妻は彼女の工房の刺繍糸も愛用してる。頼んだぞ」
公私混同気味な命令だが、お陰で堂々と調査に時間を避けることになったドレイン。
しかしこれにより、ローズリーに逃げ場がなくなったのではないかと、複雑な気持ちに思わず俯いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
81
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる