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33話
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刺繍や編み物の師であるロリーンの新居披露目に招かれたので、一緒にどうかとローズリーを誘うと、ローズリーは喜んで兎のようにぴょんぴょんと飛び跳ねた。
何も言わなかったナミリアだが、内心では初めて見るこどもっぽさに驚愕し、少し引いた。
気づかないローズリーは頬を紅潮させ、ナミリアの手を握って興奮して叫ぶ。
「うれしいよ!ナミリア様が交流を持たれている方たちに、私を紹介してくれるんだね!皆さんに気に入っていただけるようにがんばるよ」
そう言われると悪い気はしない。
「じゃあ私がドレスを贈ってもいいかな」
うかがうように言ったローズリーに、ナミリアはハッとして答える。
「ええ、あ、ごめんなさい。この日はロリーン様から頂いたドレスを着るよう言われておりますの」
ローズリーがドレスをプレゼントすると言うのは皆が当たり前に想像した。
当然自分の色を意識させるものを贈ってくるだろうと、先手を打ってロリーンがナミリアに指定のドレスを渡していたのた。
「そうか。残念だが、次は私に贈らせてほしいな」
そう引き下がったローズリーの目が、じっとりナミリアに絡みついていたことは、そばに控えていたエーラも気づかなかった。
ロリーンの新しい屋敷は王都の外れ。
レンラ子爵家からだとイールズ商会の前を通り過ぎ、さらに三十分ほど馬車を走らせた、まあまあ距離のあるところに構えられている。
「でもあちらの家に比べて、格段に仕事がしやすくなったわ」
伯爵家の離れには生徒を呼べないため、出稽古のみだったが、これからは屋敷に来てもらうこともできる上、糸や生地といった材料を整理収納する専用の部屋を作ることができた。
これまでなら頭に浮かんだ意匠に合わせ、必要な材料を買っていたが、これからは目についたものを片っ端から買って、棚に並べ、それを眺めて思い浮かんだものを作ることができる。
「なんて贅沢なのかしら」
ロリーンはにやにやと満足気に笑って、お披露目パーティーの準備に勤しんでいた。
披露目パーティーの日は晴れ渡り、さらりとした風が心地よい一日となった。
ナミリアはローズリーとともにロリーンの屋敷を訪れていた。
母も父ジョリーズと別の馬車で来ているはずだが、まだ顔を見ていない。
「素敵な屋敷だね」
「ええ、可愛らしくて、中の装飾もとっても素敵なんですのよ」
「そう!私たちがいつか結婚したときも、こんな屋敷に住みたいね」
ナミリアはローズリーから言われた言葉にドッキリし「ええ」と答えてしまう。
「え?ナミリア様いま、ええって言ってくれた?ねえ?」
「い、いえ」
叫びだしそうなローズリーを警戒し、ナミリアは思わず否定して誤魔化したが、ローズリーには聞こえなかったようだ。
足元が弾んでいる。
それも可愛らしくみえるのは、やはり恋の病の始まりだろうかと、ナミリアは苦笑した。
ロリーンとミヒアが並んで見守っていることに気づき、ナミリアは浮かれたローズリーを引いて挨拶に向かう。
「ロリーン先生、本日はお招き頂きありがとうございます」
「よくいらしてくださいました、紹介して頂ける?」
「こちらは友人のワンド子爵ローズリー様でございます」
何も言わなかったナミリアだが、内心では初めて見るこどもっぽさに驚愕し、少し引いた。
気づかないローズリーは頬を紅潮させ、ナミリアの手を握って興奮して叫ぶ。
「うれしいよ!ナミリア様が交流を持たれている方たちに、私を紹介してくれるんだね!皆さんに気に入っていただけるようにがんばるよ」
そう言われると悪い気はしない。
「じゃあ私がドレスを贈ってもいいかな」
うかがうように言ったローズリーに、ナミリアはハッとして答える。
「ええ、あ、ごめんなさい。この日はロリーン様から頂いたドレスを着るよう言われておりますの」
ローズリーがドレスをプレゼントすると言うのは皆が当たり前に想像した。
当然自分の色を意識させるものを贈ってくるだろうと、先手を打ってロリーンがナミリアに指定のドレスを渡していたのた。
「そうか。残念だが、次は私に贈らせてほしいな」
そう引き下がったローズリーの目が、じっとりナミリアに絡みついていたことは、そばに控えていたエーラも気づかなかった。
ロリーンの新しい屋敷は王都の外れ。
レンラ子爵家からだとイールズ商会の前を通り過ぎ、さらに三十分ほど馬車を走らせた、まあまあ距離のあるところに構えられている。
「でもあちらの家に比べて、格段に仕事がしやすくなったわ」
伯爵家の離れには生徒を呼べないため、出稽古のみだったが、これからは屋敷に来てもらうこともできる上、糸や生地といった材料を整理収納する専用の部屋を作ることができた。
これまでなら頭に浮かんだ意匠に合わせ、必要な材料を買っていたが、これからは目についたものを片っ端から買って、棚に並べ、それを眺めて思い浮かんだものを作ることができる。
「なんて贅沢なのかしら」
ロリーンはにやにやと満足気に笑って、お披露目パーティーの準備に勤しんでいた。
披露目パーティーの日は晴れ渡り、さらりとした風が心地よい一日となった。
ナミリアはローズリーとともにロリーンの屋敷を訪れていた。
母も父ジョリーズと別の馬車で来ているはずだが、まだ顔を見ていない。
「素敵な屋敷だね」
「ええ、可愛らしくて、中の装飾もとっても素敵なんですのよ」
「そう!私たちがいつか結婚したときも、こんな屋敷に住みたいね」
ナミリアはローズリーから言われた言葉にドッキリし「ええ」と答えてしまう。
「え?ナミリア様いま、ええって言ってくれた?ねえ?」
「い、いえ」
叫びだしそうなローズリーを警戒し、ナミリアは思わず否定して誤魔化したが、ローズリーには聞こえなかったようだ。
足元が弾んでいる。
それも可愛らしくみえるのは、やはり恋の病の始まりだろうかと、ナミリアは苦笑した。
ロリーンとミヒアが並んで見守っていることに気づき、ナミリアは浮かれたローズリーを引いて挨拶に向かう。
「ロリーン先生、本日はお招き頂きありがとうございます」
「よくいらしてくださいました、紹介して頂ける?」
「こちらは友人のワンド子爵ローズリー様でございます」
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