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20話
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「お聞き及びかと存じますが、私のような田舎者はつまらないと婚約者に捨てられまして、呆然としていたところイールズ男性令息の訃報を知ったのです。
まだ日も浅く、そんなお気持ちには到底なれないと思ったのですが・・・。
やさしい笑みを浮かべられたレンラ子爵令嬢が私の脳裏に蘇って、貴女様の隣りに立てたなら私も幸せになれるのではないかと、気が逸って申込みをしてしまったのです」
申し訳なさそうに眉を寄せて話す姿は、誰もが気にしなくていいと声をかけてやりたくなるような雰囲気をまとう。
会って断れば父も諦めると簡単に考えていたナミリアだが、ローズリーに会って、却って断りにくくなってしまった。
それこそ脳裏に浮かぶのだ。
自分に断られたローズリーが背中を丸めてしょんぼり落ち込む姿が。
ジョリーズは貴族としてはお人好しの部類だが、父が彼に絆されたのもわかる気がした。
「大変申し訳無いのですが、正直なところ、まだ私にはそういったお話は受け入れがたいのです」
丁寧に、ナミリアは注意を払って話し始めた。
「まだ一年も経っておらず、今は結婚とは違うことを考えて過ごしたいと」
「ええ、それは当然だと思います」
ローズリーは大きく頷いた。
「今すぐでなくて良いのです。結婚も考えてもいいと思えるようになってからで」
「でもそれではワンド子爵様のご結婚が遅れてしまいますわ」
「そうですね。しかし一度婚約者に裏切られて以来、他の女性をと言われても、そういう気持ちにはなれなくなってしまったのです。こどもなら養子をもらってもいい。夫婦仲良く暮らしていけると、心から思える方がいいのです」
こどもなら養子でもと言われ、ナミリアは少し気持ちが軽くなる。
ナミリアの心を思いやっていなければ言えないだろうと、胸があたたかくなった。
「こうしたらどうでしょうね、たとえば一年仮婚約を結び、絆を深めていくんです。それで結婚してもいいと思えたら、仮婚約は正式な婚約に置き換えてすぐ結婚する」
「・・・・少し考えさせていだけますか?」
ナミリアはその場で断ることができなかった。
縋る子犬のようなローズリーを、拾い上げてやりたいような。
しかし快諾もしなかった。
素敵な人だと思う。
ディルーストのことからもっと時間が経っていたら、すぐにイエスと言ったかもしれないが、ナミリアにはまだ本当に時間が必要だった。
「それは勿論、じっくりお考え頂いてからで構いません。よろしければ茶会やランチをご一緒する交流は如何でしょう?」
考え込んだナミリアにローズリーが次の手を差し出した。
昼日中のランチや茶会なら、ナミリアの感じる抵抗も少ない。
「そうですね、そのくらいなら」
「ありがとう!うれしいです!今はそれで十分です。じっくりと私を知って頂ければ」
破顔というのはこういう笑顔なのだろうと、ナミリアはローズリーを眩しく見つめた。
まだ日も浅く、そんなお気持ちには到底なれないと思ったのですが・・・。
やさしい笑みを浮かべられたレンラ子爵令嬢が私の脳裏に蘇って、貴女様の隣りに立てたなら私も幸せになれるのではないかと、気が逸って申込みをしてしまったのです」
申し訳なさそうに眉を寄せて話す姿は、誰もが気にしなくていいと声をかけてやりたくなるような雰囲気をまとう。
会って断れば父も諦めると簡単に考えていたナミリアだが、ローズリーに会って、却って断りにくくなってしまった。
それこそ脳裏に浮かぶのだ。
自分に断られたローズリーが背中を丸めてしょんぼり落ち込む姿が。
ジョリーズは貴族としてはお人好しの部類だが、父が彼に絆されたのもわかる気がした。
「大変申し訳無いのですが、正直なところ、まだ私にはそういったお話は受け入れがたいのです」
丁寧に、ナミリアは注意を払って話し始めた。
「まだ一年も経っておらず、今は結婚とは違うことを考えて過ごしたいと」
「ええ、それは当然だと思います」
ローズリーは大きく頷いた。
「今すぐでなくて良いのです。結婚も考えてもいいと思えるようになってからで」
「でもそれではワンド子爵様のご結婚が遅れてしまいますわ」
「そうですね。しかし一度婚約者に裏切られて以来、他の女性をと言われても、そういう気持ちにはなれなくなってしまったのです。こどもなら養子をもらってもいい。夫婦仲良く暮らしていけると、心から思える方がいいのです」
こどもなら養子でもと言われ、ナミリアは少し気持ちが軽くなる。
ナミリアの心を思いやっていなければ言えないだろうと、胸があたたかくなった。
「こうしたらどうでしょうね、たとえば一年仮婚約を結び、絆を深めていくんです。それで結婚してもいいと思えたら、仮婚約は正式な婚約に置き換えてすぐ結婚する」
「・・・・少し考えさせていだけますか?」
ナミリアはその場で断ることができなかった。
縋る子犬のようなローズリーを、拾い上げてやりたいような。
しかし快諾もしなかった。
素敵な人だと思う。
ディルーストのことからもっと時間が経っていたら、すぐにイエスと言ったかもしれないが、ナミリアにはまだ本当に時間が必要だった。
「それは勿論、じっくりお考え頂いてからで構いません。よろしければ茶会やランチをご一緒する交流は如何でしょう?」
考え込んだナミリアにローズリーが次の手を差し出した。
昼日中のランチや茶会なら、ナミリアの感じる抵抗も少ない。
「そうですね、そのくらいなら」
「ありがとう!うれしいです!今はそれで十分です。じっくりと私を知って頂ければ」
破顔というのはこういう笑顔なのだろうと、ナミリアはローズリーを眩しく見つめた。
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