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12話

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「ロリーン先生、結果はわかりましたか?」

 コンテストから数日後。
ロリーンがやってきたのを見て、早速ナミリアが訊ねた。

「ええ。今回の発表は早かったわね。力の差がはっきりしていたのかもしれないわ」
「それで」
「ナミリア様は」

 ニコっと笑ってから。

「ブロンズでした!」
「ブロンズですかあ」

 ナミリアは微妙な顔をした。
うれしいような残念なような。

「あら、そんな顔しないで!すごいことなのよ、初めて出していきなり入賞なんて」

 疑いの目を師匠に向ける。

「・・・そういうものですか?」
「そうよ。みんな入賞作を考えて考えて、審査員たちの好みに合わせたものを作ってくるのよ。でもナミリア様はそんなこと全くしないで、自分が作りたいもので挑戦した結果ですもの。来年王妃様のお気に入りに近いものを作ってみたらもっと上の賞が取れるかもしれないわ」

 その日のロリーンは浮足立ち、まるで自分が入賞したかのように、ああしてみたらこうしてみたらと喋り続けていた。






「ブロンズ・・・」

 確かにすごいことなのだろう。
何年も経験を積んだ人が何度も挑戦している中、まだ真剣に始めて数ヶ月の自分が入賞したのは。


 ─他の作品の出来を見てみたい!─


 急に思いついた。


「ロリーン先生!コンテストに出品された作品って見ることできるのですか?」
「勿論よ。入賞作品だけだけど城の展示室に行けば見られるわ」
「行きたいです!先生連れて行ってくださいませんか」


 食いつくように身を乗り出し、ナミリアが頼みこむ。

「では支度してこれから参りましょうか」

 うれしそうに、ナミリアが笑った。




 エーラを呼び、着替えをして髪をまとめると、レンラ子爵家の馬車に乗り込んで走り出す。
 きゃいきゃいとはしゃぐようなロリーンを横目に、急に立ち上がったナミリアが窓硝子に手をついて、何かを凝視した。

 背中に冷たいものが流れていく。

 街中を抜けるとき、ディルーストそっくりの後ろ姿を見かけたのだ。
窓に張り付いて見ていると、ふり向いた男はディルーストとは似ても似つかない顔をしていた。

「ああ違う・・・。そうよ・・ね」

 しょぼんと肩を落とすナミリアをロリーンが、慌ててその肩を抱き寄せる。

「どうなさったの?危ないからお座りなさいな。まあ!涙をためてかわいそうに」

 そう言ったロリーンだが、震えるナミリアの様子に素早く事情を察していた。
彼女が落ち着くまでその背をやさしく撫で続けながら、ナミリアの心の傷を改めて痛感する。

(元気そうに振る舞われていても、まだ心の奥には深い悲しみを抱えられているのね。彼女が本当に元気になれるまで、いくらでも力を貸したい)

 俯いて嗚咽を堪えるナミリアを、ロリーンは自分のストールで包んでやった。
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