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3話

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 悲しみに暮れたディルーストの葬儀は、ナミリア不在のまま行われた。

 衝撃が大きすぎて、起き上がることすら出来なかったのだ。
最後の機会だからと、テリーエは葬儀に参列することを勧めたが、ナミリアはどうしても起き上がることができなかった。



 ベッドの中、横たわる瞳から止まることのない涙がこぼれ落ちる。
もう三日食事もできずにいるというのに、それでも涙は流れ続けているのだ。

 ナミリアのそばには看護人がついており、ディルーストのあとを追うことがないよう見張られている。
せめてと布団の中で息を止めてみたが、苦しくなって息を吸ってしまうと、酷い罪悪感に襲われた。

(ディルはもっと苦しかったのよ)

 そうしてまたハラハラと涙をこぼし続けるのだ。



 食べていなくとも、腹が空くことも一向になかった。
いや、腹が空いたと思うことすら拒絶しているのだ。

(ディルはもう何も食べられない。何かをおいしいと思うこともできないのだもの)

 それなのに自分が何かを食べたいと思うなんて、お腹が空いたと思うなんて許されないと、自分を追い詰めていった。





「ナミの様子はどうだ?」
「まだ食事も水分もご自身では摂ろうとせず、このままでは弱っていかれるばかりです」
「そこを何とかするのが、そっちの仕事じゃないのか?」
「しかし本人に気力がなければ、どれほど医療を尽くしてもどうにもならないものなのでございます」

 医師は申し訳無さそうに、しかし毅然と言い放つ。

「・・・すまない、わかっているんだが私たちには他に縋るものがないのだ。諦めず手を尽くしてほしい」

 ジョリーズは苦しげに言うと頭を下げた。









「リーエよ。ナミのために、私たちがしてやれることはないのだろうかな」

 暫く考え込んだテリーエが、あっと小さく声を立てた。

「・・・そう言えば少し前に庭で子猫が見つかったと聞いたわ。その子猫の世話をナミにまかせてみてはどうかしら?」
「猫?しかし今は自分の食事すらしないんだぞ」
「子猫は弱いわ。特に母猫とはぐれた子は。ナミが世話しなければすぐに弱ってしまう。あの優しい子が猫を見捨てると思って?
あの子の心が立ち直るには時間がかかる。それはゆっくり見守ることができるけれど、健康を損なってはそれすらもできなくなってしまうのよ。猫の世話をすることで張り合いが生まれ、前向きになってくれるかもしれないわ」
「しかし猫なんて汚いのじゃないか?」
「心配ならちゃんとシャンプーさせてから連れていきますわ」


 こうしてテリーエは、半ば無理矢理ナミリアのために猫のお世話係を勝ち取ったのだった。
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