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2話

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 結婚式まで一月という頃。

 早朝のレンラ子爵家に早馬が飛びこんで来た。血相を変えた使者はイールズ男爵から遣わされていた。

「ナミリアお嬢様っ!大変です」

 慌ただしく扉を叩かれ、ガウンを羽織ったナミリアが顔を出すと、真っ青な顔の執事か両手を握りしめている。

「ラジーどうしたの?」
「あの、旦那様が至急お呼びです。イールズ男爵家から知らせが来まして」
「イールズから?何?何かあったの?」
「私には何も?ただ急ぎお連れするようにと」

 その様子にただ事ではないと感じたナミリアは、慌てて寝衣をワンピースに着替え、軽く髪をまとめてから父の元へと早足でむかった。

 応接の扉の前にラジーが待っている。
ナミリアの顔を見ると、小さく頷き扉を開ける。

「おとうさま、おかあさまも。あらトミー?」

 顔見知りのイールズ男爵家の使用人に気づき、声をかけると、トミーは深く頭を下げた。

「ナミリア、そこへ座りなさい」

 レンラ子爵ジョリーズが低い声で話しを続ける。

「大変なことが起きた。気をしっかり持って聞いてくれ。ディルーストくんが亡くなられたそうだ」

 ナミリアは言われたことが理解できなかった。

「なに仰ってるの?ディルとは一昨日も一緒に過ごしましたけど、元気でしたわ。何かの間違いでしょ」
「・・・私もそう思いたい、間違いならどれほどうれしいか。昨夜イールズ男爵の代理で寄合に出た帰りに事故があったそうなんだよ」

 言葉尻が小さくなっていく。

「馬車が横転して・・・」

 きょとんとしたナミリア。
 聞こえていないわけでも、理解していないわけでもない。ただ真実を受け止めたくなくて、目を見開き立ち尽くしていた。

「・・・・・・・・ぅ・・そ」

 ふっと力が抜け、ナミリアが崩折れていく。
ジョリーズが飛びついて抱きとめると、ソファに力を失くした娘をそっと下ろしてやった。

「あなた・・・」
「部屋へ連れて行ってやろう」

 トミーをそのまま待たせ、上着を脱いで袖をまくったジョリーズが、一度下ろしたナミリアを抱き上げて部屋へ向かう。

「あなたも屋敷に早く戻りたいでしょう。娘はすぐには起きられないかもしれないけれど、夫と私は本日中にお悔やみに伺うと男爵ご夫妻にお伝え下さい。ディルースト様のご冥福を心よりお祈りしますと」
「かしこまりました」

 レンラ子爵夫人テリーエがトミーを帰しているうちに、ジョリーズはナミリアの部屋に医者を手配させ、応接へと戻ってきた。

「イールズの使用人は帰しましたわ」
「ありがとう。・・・大変なことになった」
「ええ。とてもいい青年でしたのに気の毒に」
「本当に残念だ。ナミを幸せにしてくれると思っていた」
「本当に・・・。ナミは大丈夫かしら」
「それが心配だよ。医者を呼んだ。できれば看護人を暫くうちに預けるよう頼むつもりだ」

 テリーエもこくりと同意をみせた。

■□■

新連載です。
最終話まで書き終えていますので、ぜひ最後までよろしくお願いいたします。

完結間近の「一番腹黒いのはだあれ」
新作「呪われ令嬢、猫になる」
4/2更新再開「神の眼を持つ少年です。」
よろしければこちらもお立ち寄りください。
よろしくお願いいたします。
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