52 / 63
第52話
しおりを挟む
ビュワードが侯爵配となるべく執務を学び始めたころ、当然ゴールディアも女侯爵となるべく、がちがちにスケジュールを組み、勉強を開始した。
ビュワードにコーズとルーサーがついたように、ゴールディアにはシュンラとワザンという二人の文官が付いて、それぞれ常に三人一組で領地経営を学びながら、毎日課題を解決していくのだ。
ゴールディアも優秀な方だが、ビュワードは皆が舌を巻くほどの速さでミリタス領について学び、問題に気づいていく。
「ええ?もう研修は終わり?嘘でしょう」
「ええ、ビュワード様は本当に優秀でいらっしゃいますから、あっと言う間に教えることもなくなってしまいました」
ゴールディアとビュワードに領主教育を行っているアクシミリオの補佐官、ウィリーズは満足気に微笑む。
「ふうん、悪かったわね時間がかかって」
「ふふ。そんなことは言っておりません。むしろ本当に素晴らしい方を見出されたとお嬢様を誇りに思っているほどでございます」
今屋敷にいる使用人たちは、皆、初めて連れられてきたビュワードを知っている。
気の毒な姿から立ち直り、才能を開花させ始めたビュワードを見守ってきたことを、そしてビュワードに手を差し伸べたゴールディアを誇らしく思っているのだ。
「ユワ様って本当に人気者よね」
「おや?ビュワード様にヤキモチですか?」
「いーえ。彼がわたくしの婚約者だから誇らしくて鼻高々なだけよ!」
ゴールディアは心からそう思っていた。
しかしそうは言ってもビュワードは優秀過ぎて、ゴールディアとの差は開くばかり。
もう侯爵はビュワードでもいいんじゃないかとまで言われるようになったが、流石にそんなことはできない。
「わたくしももっと頑張らなくてはいけないわ!」
ウィリーズに目配せし、帳簿のページを捲った。
ゴールディアとビュワードがミリタス本邸に戻って一月後。
婚約発表パーティーの準備が開始された。
招待客の選定とそれに合わせた会場選び、
、料理やドリンクの手配などをゴールディアとビュワードそれぞれに分担して決めていく。
予算に余裕があり、まだどこかに金をかけられそうだとゴールディアが手配書を見直していると、ビュワードが席順表を持って現れた。
「ユワ様」
「ディア・・・」
とりあえず見つめあうこと15秒。
「この席順表について訊ねたいことがあるんだ」
「ええ、何かしら?」
「ここ」
指はスミール側の親族席を指している。
「私の・・・」
「お父様は絶対いらしてくださるわ」
「うん・・・」
「オニイサマも勿論お呼びするわ」
「・・・ん」
ビュワードを虐めていた兄、トリードを呼ぶことは、それぞれに思うことがある。
「ユワ様は会いたくないかもしれないけど」
ゴールディアは、うれしくてたまらないという顔で言ったのだ。
「次期ミリタス侯爵配として華々しくお披露目するの、オニイサマの目の前でね。オニイサマはどーんな顔でユワ様の前に現れるかしら?想像するだけで楽しみでたまらないわ!」
ビュワードにコーズとルーサーがついたように、ゴールディアにはシュンラとワザンという二人の文官が付いて、それぞれ常に三人一組で領地経営を学びながら、毎日課題を解決していくのだ。
ゴールディアも優秀な方だが、ビュワードは皆が舌を巻くほどの速さでミリタス領について学び、問題に気づいていく。
「ええ?もう研修は終わり?嘘でしょう」
「ええ、ビュワード様は本当に優秀でいらっしゃいますから、あっと言う間に教えることもなくなってしまいました」
ゴールディアとビュワードに領主教育を行っているアクシミリオの補佐官、ウィリーズは満足気に微笑む。
「ふうん、悪かったわね時間がかかって」
「ふふ。そんなことは言っておりません。むしろ本当に素晴らしい方を見出されたとお嬢様を誇りに思っているほどでございます」
今屋敷にいる使用人たちは、皆、初めて連れられてきたビュワードを知っている。
気の毒な姿から立ち直り、才能を開花させ始めたビュワードを見守ってきたことを、そしてビュワードに手を差し伸べたゴールディアを誇らしく思っているのだ。
「ユワ様って本当に人気者よね」
「おや?ビュワード様にヤキモチですか?」
「いーえ。彼がわたくしの婚約者だから誇らしくて鼻高々なだけよ!」
ゴールディアは心からそう思っていた。
しかしそうは言ってもビュワードは優秀過ぎて、ゴールディアとの差は開くばかり。
もう侯爵はビュワードでもいいんじゃないかとまで言われるようになったが、流石にそんなことはできない。
「わたくしももっと頑張らなくてはいけないわ!」
ウィリーズに目配せし、帳簿のページを捲った。
ゴールディアとビュワードがミリタス本邸に戻って一月後。
婚約発表パーティーの準備が開始された。
招待客の選定とそれに合わせた会場選び、
、料理やドリンクの手配などをゴールディアとビュワードそれぞれに分担して決めていく。
予算に余裕があり、まだどこかに金をかけられそうだとゴールディアが手配書を見直していると、ビュワードが席順表を持って現れた。
「ユワ様」
「ディア・・・」
とりあえず見つめあうこと15秒。
「この席順表について訊ねたいことがあるんだ」
「ええ、何かしら?」
「ここ」
指はスミール側の親族席を指している。
「私の・・・」
「お父様は絶対いらしてくださるわ」
「うん・・・」
「オニイサマも勿論お呼びするわ」
「・・・ん」
ビュワードを虐めていた兄、トリードを呼ぶことは、それぞれに思うことがある。
「ユワ様は会いたくないかもしれないけど」
ゴールディアは、うれしくてたまらないという顔で言ったのだ。
「次期ミリタス侯爵配として華々しくお披露目するの、オニイサマの目の前でね。オニイサマはどーんな顔でユワ様の前に現れるかしら?想像するだけで楽しみでたまらないわ!」
26
お気に入りに追加
561
あなたにおすすめの小説

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!

皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる