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第47話

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 その夜、モイル子爵家に戻ったルーサーは、リブズと母ティナにミリタス家について根掘り葉掘り訊かれて、夜中まで寝かせてもらえなかったが、ゴールディアとビュワードに友だちになろうと言われたことを話すと、両親たちは手を取り合って喜んだ。

「そんなに喜ぶことか?」

 首を傾げたが、両親だけでなく、兄たちも素晴らしい縁だから大切にしろとしつこいくらいに言い聞かせてくる。

「はいはいわかりました」

 ふて腐ったように答えたが、自分のことでこんなにも家族が喜んでくれて、密かに誇らしい気持ちになれた。




 ルーサーは家族とゴールディアの期待に答え、ビュワードと友情を育んでいく。
 あるときはゴールディアの目を掻い潜ってビュワードを我が物にしようとする令嬢たちへの盾となり、またあるときはゴールディアとの仲が思ったほど進展しないことに悩むビュワードの相談係として。

 たった一人友人ができただけだが、ビュワードの学院生活は一気に満たされたものに変わり、あっという間に一月後が卒業となった頃。

「ルーサー様、ちょっと!」

 ゴールディアに呼び止められ、中庭に連れて行かれたルーサーは、驚きの提案を受けることになる。

「私とユワ様がミリタスに帰るとき、ご一緒に如何かしら?うちで召し抱えるから、ユワ様に仕えてくれるとうれしいのだけど。貴方なら私も信頼できるし、ユワ様の弱点を補ってくれるでしょ?」

 物を持ち運びでもするように、あっさりと言うのがゴールディアらしいとルーサーが苦笑していると、話はさらに続けられた。

「それと来てくれるなら。うちの親戚筋の子爵の、素敵なお嬢様を紹介しようと思っているの。一人娘でお婿さんをお探しなのよ、どう?」

 ルーサーの首は、ギーっと音を立ててゴールディアに向いた。
 侯爵家に雇われて、穏やかな性格のビュワードに仕えるのは現時点で最良の進路だろう。
 しかしそれよりルーサーは、婿を探している素敵なお嬢様に惹かれた。

「ぃ、行きたいですっ!」
「はぁい、交渉成立でーす!うふふっ」

 くるりと後ろを向いたゴールディアが、持っていた袋から何冊か本を取り出し、ルーサーに手渡してくる。

「これは我が家の使用人の仕事や心得が書かれているものよ。まだだいぶ時間もあるから読んでおいてね」

 相変わらず手回しの良いことだと、呆れ半分感心半分で受け取り、遠くない未来に雇い主となるはずのゴールディアに恭しく頭を下げた。

 それからのルーサーは、ビュワードに仕えるための勉強に没頭する。
 素晴らしく本気まじ本気まじ優秀だが言いたいことの半分も言えないビュワードには、それを補い、かつ心を許せる側近がいなければ今後の仕事は難しいから。

「ルーサー様、もし良ければだけど、貴方のお兄様一人くらい連れてきてもよろしくてよ。いらっしゃるならそうね、親戚筋の別の婿取りのお嬢様も紹介する」

 ルーサーは帰宅して、すぐ上の兄にゴールディアからの話を相談した。
 モイル子爵の次男コーズは既に辺境伯家で文官として働いていたにも関わらず、行くと即答し、長男ユーランドはこの地で子爵を継かねばならない身を残念がったのだった。
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