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第45話
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ルーサー・モイルを招待した日。
学院にいてもビュワードは珍しくソワソワしていた。
─かわいいん!─
自分の企みが成功しつつあることに、ゴールディアは満足の笑みを浮かべながら、そわそわと過ごすビュワードの美しさを楽しんでいる。
リラ・ニイマスの視線を感じながら。
チラッと見ると目が合う。
まさか見られるとは思っていなかったような顔で、しかしギロリとリラから睨まれる。
─ふふん、そーんな目で見たって、ユワ様は私のだもーん!─
わざとリラに向けてにやぁと笑ってやった。
ゴールディアの意図に気づいたリラが、憎しみを込めた凄まじい顔で圧をかけてくるが、王都で揉まれてきたゴールディアにはちょろいものだ。
ツンとして、無視してやった。
─怒ってる怒ってる!ふふふ─
大概性格悪いなと自分で思いながら、リラを操って楽しんだ。
授業が終わるとビュワードと一緒にルーサーを迎えに行く。
早めの晩餐をご馳走したいとモイル家には許可を貰い、帰りはミリタス侯爵家の馬車で送るつもりだ。
「さあ、参りましょう。お乗りになって」
ルーサーが乗り込んだ馬車は、外装は勿論だが、素晴らしい内装で椅子も座り心地の良いクッションの効いた物。
走り出すと揺れが少なくて、初めての経験にびっくりしていると、ビュワードがくすりと笑って話しかけた。
「わかります、私もそうでしたから。凄いんですよねこの馬車」
「え?この馬車がどうかしまして?」
「ディアはわからないかもしれない。普通の馬車は走ればめちゃくちゃ揺れるし、クッションもかちかちですぐあちこち痛くなるんだ」
丁寧にビュワードが説明したが、そんな馬車に乗ったことのないゴールディアには理解出来なかった。
「ようは私のような下々の者が乗るショボい馬車とは雲泥の、侯爵令嬢でもなければ乗ることが出来ないような素晴らしい高級馬車だということですよ」
考え込むゴールディアに、ルーサーが雑に解説してやると、むしろわかりやすかったようだ。
「もちろんそうよ!最高級ですもの」
自慢するつもりはなさそうだが、どう見てもドヤ顔のゴールディアに、ルーサーは吹き出す。
「あの、ディアは悪気は無いんです、ごめんなさい」
「ユワ様、私謝るようなこと何もしておりませんわよ」
ぷっと、一瞬だけ頬が膨らんですぐ、平静を装うゴールディアは、学院ですましている時とは違い、表情がくるくると変わる。
それを愛おしそうに見るビュワードに、ルーサーはふたりの婚約は政略的なものではないのだと知った。
「おふたりはすごく仲がいいんですね」
冷やかすつもりもなく、淡々と感じたことを口にすると、ゴールディアとビュワードは見事にシンクロして至極幸せそうに微笑んだ。
学院にいてもビュワードは珍しくソワソワしていた。
─かわいいん!─
自分の企みが成功しつつあることに、ゴールディアは満足の笑みを浮かべながら、そわそわと過ごすビュワードの美しさを楽しんでいる。
リラ・ニイマスの視線を感じながら。
チラッと見ると目が合う。
まさか見られるとは思っていなかったような顔で、しかしギロリとリラから睨まれる。
─ふふん、そーんな目で見たって、ユワ様は私のだもーん!─
わざとリラに向けてにやぁと笑ってやった。
ゴールディアの意図に気づいたリラが、憎しみを込めた凄まじい顔で圧をかけてくるが、王都で揉まれてきたゴールディアにはちょろいものだ。
ツンとして、無視してやった。
─怒ってる怒ってる!ふふふ─
大概性格悪いなと自分で思いながら、リラを操って楽しんだ。
授業が終わるとビュワードと一緒にルーサーを迎えに行く。
早めの晩餐をご馳走したいとモイル家には許可を貰い、帰りはミリタス侯爵家の馬車で送るつもりだ。
「さあ、参りましょう。お乗りになって」
ルーサーが乗り込んだ馬車は、外装は勿論だが、素晴らしい内装で椅子も座り心地の良いクッションの効いた物。
走り出すと揺れが少なくて、初めての経験にびっくりしていると、ビュワードがくすりと笑って話しかけた。
「わかります、私もそうでしたから。凄いんですよねこの馬車」
「え?この馬車がどうかしまして?」
「ディアはわからないかもしれない。普通の馬車は走ればめちゃくちゃ揺れるし、クッションもかちかちですぐあちこち痛くなるんだ」
丁寧にビュワードが説明したが、そんな馬車に乗ったことのないゴールディアには理解出来なかった。
「ようは私のような下々の者が乗るショボい馬車とは雲泥の、侯爵令嬢でもなければ乗ることが出来ないような素晴らしい高級馬車だということですよ」
考え込むゴールディアに、ルーサーが雑に解説してやると、むしろわかりやすかったようだ。
「もちろんそうよ!最高級ですもの」
自慢するつもりはなさそうだが、どう見てもドヤ顔のゴールディアに、ルーサーは吹き出す。
「あの、ディアは悪気は無いんです、ごめんなさい」
「ユワ様、私謝るようなこと何もしておりませんわよ」
ぷっと、一瞬だけ頬が膨らんですぐ、平静を装うゴールディアは、学院ですましている時とは違い、表情がくるくると変わる。
それを愛おしそうに見るビュワードに、ルーサーはふたりの婚約は政略的なものではないのだと知った。
「おふたりはすごく仲がいいんですね」
冷やかすつもりもなく、淡々と感じたことを口にすると、ゴールディアとビュワードは見事にシンクロして至極幸せそうに微笑んだ。
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