40 / 63
第40話
しおりを挟む
「皆さん!おはようございます」
ゴールディアのクラスの担任シルヴィア・モートが、一人の男子生徒を伴って現れた。
「まあ!朝ミリタス様が伴われていらした方よ!」
「御親戚かしら」
─いや、そこは恋人とか婚約者かしらって言うところじゃない?─
まわりの令嬢たちの囁きに、ゴールディアは違う違うと言いそうになったが、その前にシルヴィアが声を上げた。
「皆さんの中にもご存知の方がいると思いますが、今日から復学することになったビュワード・スミール令息です」
ハッと息を飲む気配があちこちから窺える。
新しい学長や教師たちがしつこいほどその名を刷り込んだから、噂の彼か!と気づいた者もいれば、以前のビュワードを知っていて、あまりの違いに呆然とした者もいた。
「「嘘でしょうっ!あんなに素敵な方だったの!」」
その声が一人ならず漏れると、ビュワードは少し俯き、ゴールディアはにやりと笑んだ。
「静粛に!スミール令息はミリタス令嬢の隣りにお座りなさい」
シルヴィアは勿論ゴールディアとビュワードが婚約していることを知っている。
万一つまらない事を言ってビュワードに絡む者が現れることも考え、鉄壁の防御と言えるゴールディアを配置したのだ。
「どうしてミリタス様の隣りに?」
「朝もご一緒されていたわよ」
「そういえば今の学長がスミール様の後見人になられたのじゃなかった?ほら、例の事件で」
記憶力の良い生徒がいるようだ。
ゴールディアはクラスメイトたちがどんな反応をするのか気になったが、あまりのかびすましさにシルヴィアが手を叩いた。
「スミール令息、貴方の準備がよろしければ、授業を始めたいのですが、よろしいかしら?」
「はい、お心遣いありがとうございます、大丈夫です」
授業中もチラチラと女生徒がビュワードを盗み見ている。
勿論ゴールディアは気づいているが、ビュワードは冷静を保ちながら授業に集中していた。
そして休み時間に、令嬢たちがそろりそろりとビュワードを囲み始めたのだ。
「あの、スミール令息様お久しぶりにございます、私のこと覚えていらっしゃいますわよね?ニイマス伯爵家のリラですわ」
チラッとゴールディアを見ながら、ビュワードに近寄り挨拶してきたのは、以前ビュワードと同じクラスだったリラ・ニイマスだった。その腕に触れんばかりに距離を縮めていくが。
「・・・・・・・・・申し訳ありません、ちょっと思い出せなくて」
しばらく考えていたが。
正直に答えたビュワードと、顔を歪めたリラ・ニイマスのギャップの激しさに、ゴールディアは吹きそうになった。
「なっ!なんですの、失礼ですわ!クラスメイトを忘れるなんて」
お父様が心配していたのはこういうことなのかと、納得しながらリラの前に入り込み、ビュワードの腕に自分の手のひらを乗せたゴールディアは、高らかに言い放ってやった。
「ニイマス様のご令嬢、ちょっとよろしいかしら?」
ビュワードの腕に腕を絡ませたゴールディアを、リラたちは呆れたように、どこか憎々しげに見た。
「ビュワード様は私のコ・ン・ヤ・ク・シャでございますので、そんなにお近い距離は御遠慮くださるかしらぁ」
ゴールディアのクラスの担任シルヴィア・モートが、一人の男子生徒を伴って現れた。
「まあ!朝ミリタス様が伴われていらした方よ!」
「御親戚かしら」
─いや、そこは恋人とか婚約者かしらって言うところじゃない?─
まわりの令嬢たちの囁きに、ゴールディアは違う違うと言いそうになったが、その前にシルヴィアが声を上げた。
「皆さんの中にもご存知の方がいると思いますが、今日から復学することになったビュワード・スミール令息です」
ハッと息を飲む気配があちこちから窺える。
新しい学長や教師たちがしつこいほどその名を刷り込んだから、噂の彼か!と気づいた者もいれば、以前のビュワードを知っていて、あまりの違いに呆然とした者もいた。
「「嘘でしょうっ!あんなに素敵な方だったの!」」
その声が一人ならず漏れると、ビュワードは少し俯き、ゴールディアはにやりと笑んだ。
「静粛に!スミール令息はミリタス令嬢の隣りにお座りなさい」
シルヴィアは勿論ゴールディアとビュワードが婚約していることを知っている。
万一つまらない事を言ってビュワードに絡む者が現れることも考え、鉄壁の防御と言えるゴールディアを配置したのだ。
「どうしてミリタス様の隣りに?」
「朝もご一緒されていたわよ」
「そういえば今の学長がスミール様の後見人になられたのじゃなかった?ほら、例の事件で」
記憶力の良い生徒がいるようだ。
ゴールディアはクラスメイトたちがどんな反応をするのか気になったが、あまりのかびすましさにシルヴィアが手を叩いた。
「スミール令息、貴方の準備がよろしければ、授業を始めたいのですが、よろしいかしら?」
「はい、お心遣いありがとうございます、大丈夫です」
授業中もチラチラと女生徒がビュワードを盗み見ている。
勿論ゴールディアは気づいているが、ビュワードは冷静を保ちながら授業に集中していた。
そして休み時間に、令嬢たちがそろりそろりとビュワードを囲み始めたのだ。
「あの、スミール令息様お久しぶりにございます、私のこと覚えていらっしゃいますわよね?ニイマス伯爵家のリラですわ」
チラッとゴールディアを見ながら、ビュワードに近寄り挨拶してきたのは、以前ビュワードと同じクラスだったリラ・ニイマスだった。その腕に触れんばかりに距離を縮めていくが。
「・・・・・・・・・申し訳ありません、ちょっと思い出せなくて」
しばらく考えていたが。
正直に答えたビュワードと、顔を歪めたリラ・ニイマスのギャップの激しさに、ゴールディアは吹きそうになった。
「なっ!なんですの、失礼ですわ!クラスメイトを忘れるなんて」
お父様が心配していたのはこういうことなのかと、納得しながらリラの前に入り込み、ビュワードの腕に自分の手のひらを乗せたゴールディアは、高らかに言い放ってやった。
「ニイマス様のご令嬢、ちょっとよろしいかしら?」
ビュワードの腕に腕を絡ませたゴールディアを、リラたちは呆れたように、どこか憎々しげに見た。
「ビュワード様は私のコ・ン・ヤ・ク・シャでございますので、そんなにお近い距離は御遠慮くださるかしらぁ」
28
お気に入りに追加
561
あなたにおすすめの小説

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です>
【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】
今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!


皇太子殿下の御心のままに~悪役は誰なのか~
桜木弥生
恋愛
「この場にいる皆に証人となって欲しい。私、ウルグスタ皇太子、アーサー・ウルグスタは、レスガンティ公爵令嬢、ロベリア・レスガンティに婚約者の座を降りて貰おうと思う」
ウルグスタ皇国の立太子式典の最中、皇太子になったアーサーは婚約者のロベリアへの急な婚約破棄宣言?
◆本編◆
婚約破棄を回避しようとしたけれど物語の強制力に巻き込まれた公爵令嬢ロベリア。
物語の通りに進めようとして画策したヒロインエリー。
そして攻略者達の後日談の三部作です。
◆番外編◆
番外編を随時更新しています。
全てタイトルの人物が主役となっています。
ありがちな設定なので、もしかしたら同じようなお話があるかもしれません。もし似たような作品があったら大変申し訳ありません。
なろう様にも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる