【完結】虐げられた伯爵令息は、悪役令嬢一家に溺愛される

やまぐちこはる

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第38話

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 満面の笑みを浮かべ、ミリタス一家が待つ部屋へ戻ったビュワードを、アクシミリオが手招きし、自分とゴールディアの間に挟んで立たせると、四人で立つその姿は完璧に美しい家族だった。

 仲の良さを見せつけるように、ミリタス一家は代わる代わるビュワードをかまい、鬱陶しくないのかとアダミーが心配するほどだったが、放置子だったビュワードはそれがうれしくて、幸せそうだ。

「お待たせいたしました、では婚約の件よろしくお願い致します」
「快諾に感謝する」

 メルダがゴールディアを肘でつんつんすると、蕩けそうな笑顔で頷いたあと、ビュワードを見つめた。

 そのどこにも、ドレドの入り込む余地などなく、手際よくアクシミリオが用意していた婚約契約書に目を通すと、何の異論もする無くドレドはアクシミリオとサインを交わした。

「これが王宮から承認されれば、正式な婚約者となるぞ!」

 拳を振り上げそうな勢いのアクシミリオが、うれしそうにビュワードの頭を撫でる。

「っ!」

 びっくりしたビュワードは、珍しく口がポカンと開いたままになり、メルダが口を尖らせて文句をつける。

「そんなこども扱いして!アシーさっきちゃん付けするなって私に言ったじゃありませんか!だからユワちゃんをこども扱いしていいのは私だけですわ!さあ、こちらにいらっしゃい!」

 ようは自分がしたかっただけである。

「ん、もうっ!ユワ様はわ・た・し・のっですっ!」
「いやいや、せっかく息子ができるんだ!そりゃディアはめちゃくちゃ可愛いぞ。でも息子も欲しかったんだよ、やーっと私の願いが叶うんだ!頼む、暫くユワを貸してくれぃ」

 ミリタス一家のビュワードに向ける熱い愛と情熱には、ドレドでなくとも立ち向かえる者はそういなかっただろう。

 用済となったドレドが退出しようと静かに挨拶をすると、メルダが呼び止めた。

「スミール伯爵!この素晴らしいお子様を私共に与えてくださることに感謝致します。今後はミリタス侯爵一門がビュワード様を守り、支え、必ず幸せに致しますのでご安心ください」

 嫌みを込めたメルダの言葉に、ミリタスの三人とビュワードも頷いた。
にこにこと手を振り、廊下を行くドレドを部屋から見送る。

 まるで、実家と別れられてうれしくてたまらないと言わんばかりの笑顔に、むしろ深い心の傷を見た気がした侯爵夫妻とゴールディアは、彼を必ず世界で一番幸せにしようと、固く心に誓ったのだった。
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