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第37話
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「元気そうだな」
隣りに立つと顔色もよく、痩けていた頬はふっくらとして、以前とは違い健康そうに見える。
「ミリタス家の皆様に大変よくして頂いておりますので」
視線や言葉にまるで他人のような距離感を感じて、ドレドは俯き加減に息子の後ろをついて行くのが精一杯になった。
ビュワードは肩幅が少し広くなり、僅かな間にがっちりとしてきたように見える。髪は手入れが行き届いてキラキラと艷やかだ。
乞食のようだった、屋敷を出ていったときの姿を思い出すと、距離をあけられても当然だとさらにまた落ち込むのだった。
「ところで、ミリタス侯爵から聞いているだろうか」
「ゴールディア様との婚約のことでしょうか」
「ああ」
嫌なら上位の貴族からだろうが断ってやるつもりだったが、ゴールディアといるビュワードを見る限り、余計な世話だったようだ。
そう思いつつも、念のために口にしてみた。
「もし嫌なら」
「いえっ!未熟な私ですが、アクシミリオ様には喜んでお受けするとお伝えしています。残念ながら未成年の私自身が調印に応じることはできませんので、それくらいはお願いします」
許されるなら自分で婚約契約書に調印したかったほどだが、しかし、未成年の自分には法的に許されていないから、親を名乗るならそのくらいはやれと、そのくらいしかやれる事はないと、ビュワードを意味を込め、ドレドはその通りに受け止めていた。
「しかしおまえまで行ってしまったら、スミール伯爵家はどうなる?」
「さあ、知りません。私には関係ないことですから」
とりつく島もない。
「私はいらないこどもです。長くそう扱ってきたくせに、今更私にスミールのことなど訊かれても困ります」
酷く冷たい声でドレドを拒絶した。
「話はそれだけですか?それでは皆さんのところに戻りましょう。そう、メルダさ、いやお義母様は・・・私がミリタス領に行ってすぐの頃からずっと、息子にしたい家族になりたいと仰ってくださっていたんです。私が悪夢に魘されると、お義母様もそしてお義父様もそばで抱きしめてくださって、お陰で今は悪夢を見ることもあまり無くなりました」
屋敷を眺めながら、ビュワードは淡々と話している。
「よほど本当の親らしいですよね、そう思いませんか?」
もうビュワードが自分のところに戻ることはないのだと、ドレドは思い知った。
自分が愚かだったせいで、ヌーラが遺した大切な息子を永遠に失ったのだ。
「なるべく迅速に、ゴールディア様との婚約を整えてください。できますよねそれくらい?」
先に戻りますと言い残して、ビュワードは踵を返し、屋敷へと戻っていく。
取り残されたドレドは、その背中をただ見つめていた。
隣りに立つと顔色もよく、痩けていた頬はふっくらとして、以前とは違い健康そうに見える。
「ミリタス家の皆様に大変よくして頂いておりますので」
視線や言葉にまるで他人のような距離感を感じて、ドレドは俯き加減に息子の後ろをついて行くのが精一杯になった。
ビュワードは肩幅が少し広くなり、僅かな間にがっちりとしてきたように見える。髪は手入れが行き届いてキラキラと艷やかだ。
乞食のようだった、屋敷を出ていったときの姿を思い出すと、距離をあけられても当然だとさらにまた落ち込むのだった。
「ところで、ミリタス侯爵から聞いているだろうか」
「ゴールディア様との婚約のことでしょうか」
「ああ」
嫌なら上位の貴族からだろうが断ってやるつもりだったが、ゴールディアといるビュワードを見る限り、余計な世話だったようだ。
そう思いつつも、念のために口にしてみた。
「もし嫌なら」
「いえっ!未熟な私ですが、アクシミリオ様には喜んでお受けするとお伝えしています。残念ながら未成年の私自身が調印に応じることはできませんので、それくらいはお願いします」
許されるなら自分で婚約契約書に調印したかったほどだが、しかし、未成年の自分には法的に許されていないから、親を名乗るならそのくらいはやれと、そのくらいしかやれる事はないと、ビュワードを意味を込め、ドレドはその通りに受け止めていた。
「しかしおまえまで行ってしまったら、スミール伯爵家はどうなる?」
「さあ、知りません。私には関係ないことですから」
とりつく島もない。
「私はいらないこどもです。長くそう扱ってきたくせに、今更私にスミールのことなど訊かれても困ります」
酷く冷たい声でドレドを拒絶した。
「話はそれだけですか?それでは皆さんのところに戻りましょう。そう、メルダさ、いやお義母様は・・・私がミリタス領に行ってすぐの頃からずっと、息子にしたい家族になりたいと仰ってくださっていたんです。私が悪夢に魘されると、お義母様もそしてお義父様もそばで抱きしめてくださって、お陰で今は悪夢を見ることもあまり無くなりました」
屋敷を眺めながら、ビュワードは淡々と話している。
「よほど本当の親らしいですよね、そう思いませんか?」
もうビュワードが自分のところに戻ることはないのだと、ドレドは思い知った。
自分が愚かだったせいで、ヌーラが遺した大切な息子を永遠に失ったのだ。
「なるべく迅速に、ゴールディア様との婚約を整えてください。できますよねそれくらい?」
先に戻りますと言い残して、ビュワードは踵を返し、屋敷へと戻っていく。
取り残されたドレドは、その背中をただ見つめていた。
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