【完結】虐げられた伯爵令息は、悪役令嬢一家に溺愛される

やまぐちこはる

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第33話

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 ゴールディアがビュワードのいる客間を訪ねると、ノックをする直前にキィと扉が開き、当のビュワードがひょこりと顔を出した。

「「あ!」」

「「あの、少しお話が」」

 どちらも先程のアクシミリオからの件を話したいと、迷いながら切り出したが見事にシンクロしていた。

 ビュワードが部屋を出てそっと扉を閉める。

「庭に参りませんか」

 ゴールディアの誘いにビュワードも頷き、少し前に出たと思うと腕を差し出した。
僅かな距離だが、エスコートしようと言うのだ。
そのすべての仕草が優雅で流れるようでゴールディアは思わず見惚れていた。
 ミリタス侯爵家で過ごした間にマナーも所作も徹底的に教えられていた。

 見る者すべてが魅了されるほど、今のビュワードは何から何まで美しかった。

「ありがとう」

 腕を通して互いの体温が伝わると、ドキドキしている鼓動が聞こえてしまうのではないかと、心配そうな顔を見合わせる。

「「あ、あの」」

 切り出すタイミングが被りまくり、話が進まない。
ビュワードはとりあえずガゼボまでゴールディを連れて行くことにした。

「あれはカメリア?」
「ええ。こちらに来てからすぐに植えましたの。寒い時期に咲く花があれば、慰められますもの」
「そうですね、今なら私にも良くわかります」

 真っ赤な花びらの中に黄色い花弁が美しい。ビュワードは花を一輪手折ると、ゴールディアの髪に挿した。

「あ、ありがとう」
「いえ、失礼致しました。花があまりに美しかったのでつい・・・」

 無意識に動いてしまい、思わずそう誤魔化したが、本当はあまりにゴールディアが美しかったので、花を贈りたくなったのだ。
恥ずかしそうに俯いたゴールディアを、ビュワードはずっと見ていたかった。

「座りましょう」

 目当てのガゼボに着くと向かい合って座る。

「アクシミリオ様からゴールディア様とのお話を伺いました」
「ええ、私も先ほど聞きました」

「・・・・・・それで」
「はい。それで?」
「ゴールディア様に私など相応しくないと」

 先ほどのメルダの声がゴールディアの脳裏に甦る。

「相応しいとか相応しくないとか関係ないと思いますわ」
「え?」
「私といたいと思ってくださるかが、何より大切なことだと思いますの。ちなみに私は」

 ゴクッと音がしたのは、自分だろうか、ゴールディアだろうかとビュワードが小さく咳払いをしたとき。

「ずっとビュワード様のおそばにいたいと思っておりますけれども、如何でしょうか」

 ゴールディアは耳まで真っ赤になって、勇気を振り絞りビュワードに伝えた。

「あ!あ、ありがとうございます。・・・・わ、私も、ゴールディア様のおそばでお守りできたらと幸せだと思っております」
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